仕事のやる気が出ない! 原因とやる気スイッチの押し方
仕事のやる気が出ない理由とは? 心理カウンセラーの笹氣健治さんがその原因を分析。やる気を出す方法や、モチベーション維持のコツを解説します。
仕事をやらなきゃいけないのに、やる気が出ない。取りかかろうとしても、体が重く、億劫に感じる。「面倒くさいな~」「やりたくないな~」という気分になる……。
そういった状態でやる仕事は苦痛でしかありませんし、効率も悪くなり、ストレスもたまります。このように、仕事に対して「やる気が出ない」と感じたことがある人は多いはず。
どうすれば「仕事のやる気スイッチ」を押すことができるのでしょうか? 今回は「やる気が出ないときの対処法」について、心理カウンセラーの視点から説明していきます。
85.4%が「やる気が出ない」と感じた経験あり
やる気には波があります。
誰にだって、やる気満々で仕事に取り組めるときもあれば、面倒な気持ちや気だるさが先行して、仕事に取りかかれなくなってしまう瞬間もあるでしょう。
Q.仕事のやる気が出ないと感じたことはありますか?
ある(85.4%)
ない(14.6%)
※有効回答数390件
アンケート結果では、85%もの人が「やる気が出ないと感じたことがある」と答えています。つまり、今あなたが抱いているのは当然の感情だということです。
やる気が出ないのは「しっかりやろう」とするから
仕事に対してのやる気が出ないと感じたことがある人は、「仕事をしっかりやろう」という責任感が強い傾向にあります。あるいは、「いい成果を出したい」と常に一生懸命がんばっている人でしょう。
そういった前向きな気持ちがある人ほど、ふとしたきっかけで突然やる気が起きなくなってしまうことがあるのです。
もともとやる気がある人が、何かのきっかけでやる気を失っているのであれば、その原因に合った対策を実行していくことで必ずやる気は復活します。
その原因と対策について、これから一緒に確認していきましょう。
やる気が起きない原因とは?
先ほど、やる気が出ないのは「仕事をがんばりたい」「成果を出したい」という気持ちの裏返しであると説明しました。しかし、ひと口に「やる気が出ない」といっても、今あなたがやろうとしている仕事の種類や取り巻く状況によってさまざまなケースがあるもの。
まずは「やる気が出ない原因」にはどんなものがあるのか、典型的なケースを分析していきたいと思います。
あなたにも当てはまる原因はないでしょうか? これらに心覚えがあるならば、それは「やる気が出なくても仕方ない状況」かもしれません。
原因1「仕事の種類」
ひとつ目は「仕事の種類」が原因となり、やる気がそがれているケースです。やる気を落とす仕事の種類の例をいくつか見ていきましょう。
手間がかかる仕事
はじめに考えられるのが、大量の資料整理や棚卸をする、膨大なアンケート集計をする、といった多くの時間や労力を要する仕事をやらなければならない場合。
その仕事量を前にすると「これは大変だな」「かなり面倒」と思ってしまい、すぐにとりかかろうという気持ちになれないことがあります。つまり手間がかかる仕事を前にすると、どうしてもやる気が出なくなってしまうことがあるのです。
頭を使う仕事
企画書を作成する、データ分析をしてレポートにまとめる、といった頭を使う仕事のときも、やる気の喪失が起こりがち。
そういう種類の仕事を日常的にこなしている人であれば特になんの抵抗もなく取りかかることができるかもしれません。しかし、やり慣れていない人の場合は億劫になって、なかなかやる気が出なくなるときがあります。
苦手な仕事
プレゼンが苦手な人が準備をしなければならなくなった、苦手な性格の同僚と協力して仕事をしなければならなくなった、このようなケースの場合も往々にしてやる気が出なくなります。
できれば避けたい、可能であれば免除してもらいたい、といった気持ちがやる気を減退させるのです。
原因2「自分を取り巻く状況」
2つ目はあなたを取り巻く環境が原因のケース。
仕事内容そのものではなく、今の心身の状態や仕事に対するモチベーションが理由でがんばれないこともあるのです。
心身が疲れている
・連日の残業続きで疲労がたまっている
・仕事や私生活においてストレスの多い環境下にある
・連休に遠出した
・遊びすぎて疲れた
といったように心身に疲労がたまっているときは、なかなかやる気が出ません。
この状態はいわばスマホの充電切れのようなもの。あなたのエネルギーが少なくなっているのです。だから、やる気が出なくても仕方がないのです。
理不尽な仕事
「この仕事、担当じゃないのに、なぜ私がやらなきゃいけないの?」
「いつも調子のいいことを言って雑務を押しつけてくる上司。私は残業してまでやっているのに、自分はさっさと帰るなんて信じられない!」
「暇な人がいるのに、なんで私ばっかり仕事がまわってくるの?」
こんな感情は誰しもが一度は抱いたことがあるかもしれません。このように人は理不尽を覚えたときも、やる気がなくなってしまいます。
終わらない仕事
人手が足りないにもかかわらず、仕事がいっぱいある。やってもやっても終わらず、次から次へと仕事が発生する。
このような忙しい環境で働いているとき、はじめのうちはがんばって仕事に取り組むことができても、次第に「なんのためにこんなにがんばっているのだろう」と虚しくなってくるもの。
やがてその虚しさが「もうこれ以上はムリだ」という自暴自棄に変わり、やる気が出なくなる事態が生じます。
成果の実感が得られない仕事
がんばって仕上げた仕事なのに「やっぱり必要なくなった」とあっさり言われてしまった。ベルトコンベアで流れ作業をしているかのような仕事(右からきたものを左に流すだけの単純作業のような仕事)をやり続けている。
このようなことが繰り返される状況下にあると、自分がその仕事をやっている意味がわからなくなり、仕事そのものにやる気が持てなくなります。
自分ががんばった分に相当する精神的報酬が得られないと、人はやる気が出なくなるのです。
以上のような状況(原因)が単独で生じる場合がある一方、複数同時に生じる場合や、連続して生じる場合はとても厄介。慢性的にやる気がなかなか出ない、という状態に陥ってしまう可能性があるからです。
仕事のやる気が出ないときの対策とは?
やる気のなさに困っていたとしても、冷静に考えれば、やる気が出なくても“仕事を終わらすこと”ができればいいわけです。
したがって、賢いのは「やる気を出す」ことにこだわらず、とにかく仕事に取りかかって終わらせることをめざすやり方。これが得策だと考えることもできます。
とはいえやる気が出ないときは、頭の中がモヤモヤしていて、重くなっている感覚が不快なはず。そんな気持ちの解消法は、あれこれ考えるのをやめ、頭の中をスッキリさせること。これによって行動開始へのハードルも低くなります。
最後に「やる気が出ないことへのモヤモヤ解消法」を5つご紹介します。
(1)思考を強制終了させる
やる気が出ないときには、「面倒」「やりたくないな」「でも、やらなきゃ」といった思考が頭の中をぐるぐる渦巻いているものです。
そのような思考を強制終了させて、とにかく目の前の仕事に取り組みましょう。
たとえば、自分がいろいろ考えてしまっていることに気づいたら、顔の前で拍手するように「パン!」と叩きながら「ストップ!」と大きめに声を出してみてください。頬を両手でパチンと叩いてもいいでしょう。
思考が一瞬止まったら、すかさずやるべき仕事に取りかかります。さっきまで考えていたことがフッと消えるので、目の前の作業をスタートしやすくなるはずです。
(2)仕事開始時間を決めてアラームをセット
「やらなきゃ、でも、やる気が出ない」と悶々としているときは、その仕事に取りかかりはじめる時間をあらかじめ決めておくことがおすすめです。
たとえば、面倒なその仕事を30分後にはじめようと決めて、その時間にスマホのアラームをセットします。アラームが鳴ったら、ほかの作業をしていたとしても一旦中断し、すぐにその仕事に取りかかりましょう。
面倒だと思う仕事、苦手な仕事など、後まわしにしている仕事ほど効果があります。
ためらいを感じてなかなか取りかかれない仕事は、自分自身に考える時間を与えず、とにかく行動を起こせばいいのです。
(3)今日中に絶対やることをひとつ決める
やる気が出ないときは、思い切って自分に課しているノルマを下げましょう。
たとえば、今日10個の仕事をしなければならないという場合、そう思っていることが自分自身へのプレッシャーとなって、余計にやる気が出なくなります。
「今日はとにかく1個だけでいいからやろう」と割り切ることで、少し肩の荷が下り、行動しやすくなることも。
1日では終わらないような大量の仕事、手間がかかる仕事の場合は、仕事を細分化することからはじめましょう。そして「今日はとにかく10分の1だけやろう」「はじめの部分だけやろう」といったように決めてしまえば、なんとか着手することができるはずです。
さらにおすすめしたいのが、その日にやることを決めたら「今日は〇〇をやる」と紙に書き出すことです。自分自身に宣言することで、より行動に繋がりやすくなるでしょう。これを毎日繰り返し、少しずつ前進していけば、そのうち必ず仕事は終わります。
(4)締め切りを決める
「これはいつまでにやる」と締め切りを決める。そして、それを誰かと約束する。背水の陣を敷くことで、自分自身を追い込むという荒ワザもあります。
上司に「この仕事は明日中には終わらせて、資料を提出します」と宣言したり、顧客や取引先に「今週中に見積書を提出します」と約束したりすることで、どうしてもその期日までに終わらせないといけない環境を作りましょう。
そのために、自ら締め切りを設定してしまうのです。
仕事を終えるまでのストレスは大きくなりますが、終えたあとの気持ちはものすごく楽になります。
(5)机の上を整理する
アレもやらなきゃ、コレもやらなきゃと、仕事がたまっているときにもやる気が出なくなります。
そういうときは、机の上がやりかけの仕事で山積みになっていることが多いもの。そこで、まずは散らかった机の上を整理してスッキリさせましょう。それだけで自然にやる気が出てくることもあります。
その際に注意したいのは「整理する作業」に時間をかけないことです。
たとえば、ほかの仕事の資料と混ざらないように大きめの封筒にごそっと入れて、それを自分の引き出しやキャビネットの中に収めたり、段ボール箱を用意して一時的に収納し、自分の視界から消したりするだけでOK。
そして、机の上には今から取りかかるものだけを広げましょう。すると意外に集中できて、仕事がはかどるようになります。
「やる気」を維持する3つのコツ
やる気はどうしてもアップダウンするもの。とはいえ、なるべくなら常にやる気が高い状態を維持したい。最後に、日ごろから意識しておくといい「やる気を維持するコツ」をお伝えします。
(1)コンディションを整える
体のコンディションが低調になると、やる気も下がりやすくなります。つまり、常に自分自身の体調を整える意識が重要になります。
そのためには、自分自身の生活パターンを振り返って整理してみること。
過去にコンディションが悪くなったのは何をしたときか、思いつくことをリストアップしてみてください。たとえば、食べすぎた、深酒した、寝不足、といったことが当てはまるかもしれません。それらをなるべく避けるようにするだけでも、コンディションは維持しやすくなります。
「毎日の中でできる運動」を心がけて
よいコンディションを維持するには、適度な運動を日常生活に取り入れることも役立ちます。
かといって、毎日ジムに通う必要はありません。出勤時間に余裕があれば、ひと駅分の距離を15分から30分程度歩いてみる。エレベーターを使わずに階段を上る。
こうした「毎日の中で必ずできる運動」を習慣化するといいでしょう。
また、体を酷使し続けることはマイナスです。働きすぎて疲労が蓄積したときは、しっかり休養をとることを心がけましょう。
休日は寝すぎないこと
さらに、休日の過ごし方にも気をつけるとより効果が上がります。
待ちに待った休日だからと寝過ぎないこと。休日であっても、朝は仕事の日と同じ時間に起きるようにしないとコンディションが崩れやすくなります。
どうしても寝たりないときは、あとで昼寝をして調整しましょう。
(2)完璧主義をやめる
「いい仕事をしたい」「きちんと仕事をしたい」といった意識が強いのはいいことなのですが、いつの間にかそれがエスカレートして「より完璧に仕事をしたい」とこだわりを持つようになってしまうことがあります。
すると、仕事をはじめようとしたときに「ちゃんとできるだろうか?」と不安や恐れが生じ、すぐに取りかかれなくなってしまうのです。
いわゆる「完璧主義」の状態に陥ってしまうと、かえってやる気が出なくなってしまう場合があるのです。自分に課すハードルを少し下げて、「ちょっといい加減だな」と思うくらいのラフさを持つといいでしょう。
「いい加減で大丈夫なの?」と思う人もいそうですが、結論をいうと、全然大丈夫。
というのも、完ぺき主義の人はちょっといい加減に考えても、しっかりやるべき部分を押さえた仕事ができるから。少しゆるく考えるくらいがちょうどいいのです。
完璧主義脱却のコツは「越したことはない思考」
完ぺき主義をゆるめるコツは「○○でなければならない」を「○○できるに越したことはない」と言い換えること。
「いい仕事をしたい」を「いい仕事ができるに越したことはない」、「きちんと仕事をしたい」を「きちんと仕事ができるに越したことはない」といったように言い換えると、少し気持ちが軽くなるはず。行動がぐっと起こしやすくなります。
(3)自分の仕事によって誰が喜ぶかを考える
「この仕事をなぜ私がやらなきゃいけないの?」「私ばかり忙しくて不公平だ!」といった理不尽な仕事や、やってもやっても終わらない仕事、がんばっても報われた感じがしない仕事……。残念ながら、世の中にはたくさん存在します。
そういった仕事に悩まされている人は、ぜひ考えてみてほしいことがあります。
「自分の仕事によって喜ぶ人は誰か?」と。
仕事を依頼してきた社内の人や取引先の担当者が真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、そのもっと先にいる人のことを思い浮かべてください。
たとえば、あなたの会社の商品を購入する人やサービスを受ける人のことも、あなたは間接的に喜ばせているのです。その商品やサービスによって便利さや快適さを享受して喜んでいる人が必ずいるはず。それはとても素晴らしいことです。
自分が世の中の誰かの喜びに貢献していることをモチベーションに繋げましょう。
転職は解決策になるの?
やる気には波があると言いましたが、やる気が出ないときは、そうなるきっかけや原因が何かしらあるもの。「なぜ今、自分はやる気が出なくなっているのか?」を考え、対策を実践していけばいずれ必ずやる気は回復します。
考えた結果の「転職」もひとつの手
しかし、人と人に相性があるように、人と仕事、人と会社にも相性があります。
ちょっと嫌なことがあっただけですぐやめてしまうことはおすすめできませんが、考えた末の結論であれば、転職だって当然ありでしょう。
残念ながら、その会社や仕事は自分には合わなかっただけです。
今の仕事にやる気が感じられないとき、ここまで説明してきたことを自分に照らし合わせてじっくり考え、振り返ってみてください。それでもどうしてもやりがいを感じられないのであれば、自分に合う会社や仕事を求めて転職することはまったく問題ありません。
がんばるペースを落とせば「答え」が見えてくる
ただし、焦りは禁物。
まずは今までがんばりすぎていたペースを少し落として、自分の仕事のやり方や内容を再確認する機会にしましょう。
仕事観や人生観と正直に向き合ったとき、「見えてきた答え」があなたの進むべき道となるはずです。
(笹氣健治)
※画像はイメージです
※マイナビウーマン調べ
調査日時:2018年2月28日~3月3日
調査人数:390人(22~34歳の未婚女性)