日焼け止めのSPF・PAの意味とは? 意外と知らない「正しい選び方」
いまの季節、日焼け止めは必需品。そんな日焼け止めを選ぶ基準となるのが「SPF」と「PA」です。製品に「SPF50」や「PA++++」など記載されていますが、これっていったい何なのでしょうか? 今回は、内科・皮膚科などの診療を行うホームドクターの畑 英行先生に「日焼け止めのSPF・PAの意味」を解説してもらいましょう。
日焼け止めの「SPF」と「PA」の意味
日焼け止めには、「SPF」「PA」の表記がありますよね。いったいこの表記は何を意味しているのか、畑先生に聞いてみました。
「SPF」とは?
SPFとは、サン・プロテクション・ファクター(Sun Protection Factor)の略で「紫外線防御指数」ともいい、シミ・そばかす・皮膚がんの原因となる紫外線B波(UVB)をカットする力を示しています。
SPFのあとに続く数値は、「この日焼け止めを塗った場合、何も塗っていない素肌と比べて何倍の紫外線に耐えられるか」を表しています。SPF値は日焼け止めの持続時間と思われがちですが、比較しているのは時間ではなくて、その時間に耐えられる紫外線量なのです。
たとえば、何も塗っていない素肌とSPF30の日焼け止めを塗った肌に、同時に紫外線を浴びせたとしましょう。何も塗っていない素肌が日焼けしはじめた(赤くなりはじめた)段階の紫外線量を基準として、SPF30の日焼け止めを塗った肌は、基準の30倍の紫外線量を浴びてからやっと同様の日焼けがはじまります。
紫外線量は天候や照射時間によって変わってくるので、SPF値が高い日焼け止めのほうが持続時間も長い、と解釈されてしまっているのかもしれません。
★最近よく見る「SPF50+」ってどういう意味?
「50+」とは、SPFの最高数値で、50よりも有意に高いことを指します。簡単に「50以上のもの」と考えていいでしょう。SPF10~50のものよりも50+のほうが、より強い日差しから守ってくれる効果が期待できます。
「SPF値が高い日焼け止めを塗っておけば大丈夫!」と思いがちですが、実際には外部環境や日焼け止めの劣化、スポーツをして汗をかくなどの外的要因があるので、2~3時間で塗り直すのが理想的です。また、SPF値が高いほど肌への負担も大きいため、安易にSPF最高値の日焼け止めを使えばいいというわけでもありません。
「PA」とは?
PAとは、プロテクション・グレイド・オブ・UVA(Protection Grade of UV-A)の略で、「UVA防止効果指数」とも呼ばれます。日焼け以外にも、シワやたるみの原因にもなる紫外線A波(UVA)の防止効果を示すものです。
PAはSPFと同じく「素肌と比べて何倍の紫外線に耐えられるか」を測定して決めているのですが、SPFは肌が赤くなるまでの紫外線量であるのに対し、PAは「黒斑が確認されるまでの紫外線量」を比較しています。
そして数値ではなく、プラスの数で強さが表記されています。基準は以下を参照してください。
・「PA+」……UVA防止効果がある
・「PA++」……UVA防止効果がかなりある
・「PA+++」……UVA防止効果が非常にある
・「PA++++」……UVA防止効果が極めて高い
◎「SPF」と「PA」のちがい・まとめ
SPF・PAのちがいをざっくりとまとめると、SPFは赤くなる日焼け防止、PAは黒くなる日焼けと老化防止に効果のある数値といえます。しかし、どちらの数値も高ければ高いほど肌への負担が大きくなるので、日焼け止め選びはとても重要です。
日焼け止めの正しい選び方
SPF値・PA値に応じた「日焼け止めの正しい選び方」
日焼け止めは、シチュエーションに応じて使いわけることが大切。たとえば、以下のような目安で選んでみるのがおすすめです。
・日常生活(通勤・近所への買い物や散歩など)
⇒SPF20/PA++
・屋外での軽いスポーツやレジャー活動、営業の外回り
⇒SPF30/PA+++
・長時間日光に当たるとき、炎天下でのスポーツ(ゴルフ、野球、海水浴など)
⇒SPF50+/PA++++
また、SPFとPAのどちらを重要視するかは、以下の基準で決めるといいでしょう。
SPFを重視
・日焼けすると肌が赤くなりやすい人
・長時間外での作業やスポーツなどをする人
このような人は、肌に赤みを与える紫外線B波(UVB)を防ぐSPFを重視しましょう。
PAを重視
・家の中でも紫外線対策をしたい人
・シミやしわが気になる人
・登山など標高の高いところに行く人
・くもりの日の紫外線対策をしたい人
このような人は、肌の奥まで届きやすい紫外線A波(UVA)を防ぐPAを重視しましょう。
ただし、強い日焼け止めには、肌への負担が大きい「紫外線吸収剤」という成分が含まれていることが多いです。肌が弱い人は「紫外線吸収剤不使用」「ノンケミカル」などの表記がある日焼け止めを選ぶことで、少しでも肌の負担を減らしていくことができます。シチュエーションと自分の肌質に合った日焼け止めを選びましょう。
製品タイプ別「日焼け止めの正しい選び方」
いまはクリームタイプやミルクタイプ、スプレータイプなど、さまざまな日焼け止めが発売されています。日焼け止めのタイプ別に、特徴をまとめてみました。
クリームタイプ
一番ベーシックなのがこのタイプ。保湿力が高く乾燥肌の人に向いています。また防水性も高く、ウォータープルーフタイプが豊富なので、絶対に焼きたくない方や海・レジャー用に使いたい方におすすめです。
しっかり塗れて落ちにくく、化粧下地として使えるものも多くありますが、落ちにくいということは落としにくいということ。また油分が多いため、肌荒れ・ニキビの原因になることも。クリームタイプを使ったあとは、クレンジング剤などでしっかり落とし、洗顔後のスキンケアもきちんと行いましょう。
ミルク(乳液)タイプ
こちらのタイプもメジャーで、伸びがよく肌になじみやすい特徴があります。ノンケミカルのものも多く、肌にやさしいので、敏感肌・乾燥肌の方におすすめです。
ローションタイプ
一番肌にやさしいのがこのタイプ。化粧水のようなテクスチャーで扱いやすいという特徴があり、敏感肌の方でも気軽に使えます。
ジェルタイプ
こちらは塗布後の肌がさらっとしているため、日焼け止めのべたつきが気になる方におすすめです。透明で伸びもよく、全身使いに向いています。
スプレータイプ
スプレータイプは簡単に塗布できるので、全身用に使えます。ただし持続力が弱く汗や水に弱いものもあるので、液体では塗りにくい髪や頭皮、背中などに使うのがおすすめです。
パウダータイプ
メイクの上からぽんぽんと乗せるだけの、パウダータイプも出ています。肌にやさしく、敏感肌やベタベタした日焼け止めが苦手な方におすすめ。落ちやすいためこまめな塗り直しが必要ですが、メイク直しとして使用するには非常に優秀です。
シートタイプ
シートタイプは、持ち歩きに便利です。外でもさっと塗り直すことができるので、お出かけ用に使うといいでしょう。
スティックタイプ
こちらは、アウトドア専用日焼け止めとして使うのが最適です。スティックタイプなので液漏れの心配もなく、持ち運びにも便利。虫よけ効果のある製品もあります。ベタベタした使用感もなく、非常に使いやすいタイプでしょう。
まとめ
いままでなんとなく「SPF・PA値が高ければ日焼けしないはず」という基準だけで、日焼け止めを選んでいた人も多いでしょう。しかし、それで肌に負担をかけてしまうと肌トラブルの原因にもなりかねません。自分の肌質や使用するシチュエーション・部位別に、日焼け止めを正しく選んでくださいね。
(文:畑 英行、構成:マイナビウーマン編集部)
※画像はイメージです
※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.06.21)
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