アトピーのかゆみの原因とは? 専門医が教えるかゆみ対策8つ
ストレスや悩みの原因となる、アトピーの症状。なかでも特に辛いのが、我慢できない「かゆみ」ですよね。そんな、かゆみの症状が出る原因とは? 今回は北青山Dクリニックの皮膚科専門医である福永麻紀先生に、アトピーのかゆみを抑える対策を教えてもらいました。
<目次>
アトピー性皮膚炎ってどんな病気?
そもそもアトピー性皮膚炎とは、どんな病気なの? まずは、アトピーの具体的な症状やかゆみが発生しやすい部位について聞きました。
アトピーの具体的な症状とは?
アトピー性皮膚炎は、全身のさまざまな部分に「かゆみ」が出るのが特徴です。アトピーの方の皮膚は皮脂が少ないため、表層にある角質の水分を保つ力が弱く、乾燥肌になりがち。そのためバリア機能も低下し、外部からの刺激に弱いため、かゆくなってしまうのです。かくことで湿疹ができ、それを繰り返してしまうことがアトピーの特徴です。
かゆみが発生しやすい部位とは?
年齢によっても変わりますが、たとえば小学生くらいなら肘の内側や膝の裏側、首などの擦れやすい部分にかゆみが発生しやすくなります。それが大人になって再発する場合は、顔や首、背中、胸など手の届きやすい部分に出る方が多いですね。顔の場合は、髪の毛や日光による刺激を受けやすいことが要因のひとつ。首や上半身は、衣類による刺激です。人によっては、シャツの襟や、背中のタグ、ブラジャーなど、ちょっとした衣類の摩擦や刺激によって、かゆみが起こる場合もあるのです。
アトピーのかゆみの原因とは?
では、具体的にアトピーのかゆみの原因として、どんなことが考えられるのでしょうか? こちらも先生の見解を聞いていきましょう。
アトピーのかゆみを悪化させるNG行動・環境とは?
(1)ストレス
かくことそのものがNGですが、ストレスが原因でつい無意識にかいてしまう場合があります。何かに集中しているときは平気でも、ふと集中が途切れたときには要注意。
(2)刺激のある衣類
固いジーンズや、ぴったりとしたスキニーパンツ、おしゃれなレース素材のブラジャーなど、凹凸のある繊維や衣類の刺激でかぶれやすい人もいます。
(3)間違ったスキンケア
お風呂で石けんを毎日使い、ナイロンタオルでこすり洗いをするのはNG。また、乾燥肌を放置し、正しい保湿をしていない場合は悪化しがちです。
(4)埃っぽい環境
家の中のチリや埃も原因のひとつ。布団のダニやエアコンのカビ、ペットの毛、花粉などに弱い体質の人もいます。
アトピーのかゆみが増すタイミングとは?
主に体が温まることで血管が広がり、交感神経が刺激されて炎症やかゆみが起こりやすくなります。人によってさまざまですが、かゆみが増すタイミングの一例を見てみましょう。
・皮膚炎そのものがひどくなったとき
・皮膚に細菌感染が起こりジュクジュクしたとき
・風邪を引いた、熱があるなど、体調が悪いとき
・お風呂に入るときに服を脱いだ刺激によって
・熱いシャワーを浴びたあとやお風呂上がり
・運動後に汗をかいたとき
・日焼けによる刺激があるとき
・布団に入って体が温まったとき
・辛いものを食べたり、コーヒーやお酒などを飲んだりしたとき
・大きな環境の変化や、ストレスの多いとき
・ふと集中力が途切れたとき
・治療を急にやめてしまったとき
専門医が教える! アトピーのかゆみを抑える対策
かゆくてかゆくて我慢できないときは、どんな対処が有効なの? 最後にアトピーのかゆみを抑える対策について、解説をしてもらいました。
アトピーに有効なかゆみ止めの薬とは?
飲み薬に関しては、抗ヒスタミン剤を使用します。「ヒスタミン」と呼ばれるかゆみを引き起こす体内物質を抑えるお薬で、これがメインの処方ですね。まれに重症な方は、免疫抑制剤やステロイドの内服を処方することもあります。
一方、塗り薬は保湿剤のほか、症状に応じてステロイドや、免疫抑制剤のタクロリムス軟膏という塗り薬もあります。ステロイドも部位や症状の強さによって使い分けますし、使用期間もさまざま。なかには「ステロイドは怖くてダメ」という思い込みを持つ方もいらっしゃいますが、治療の選択肢を狭める元になってしまうので、きちんと皮膚科医の指導のもと、正しい理解とこまめなチェックを受けましょう。自己判断で市販薬に頼ってしまうこともトラブルの元です。
薬以外でアトピーのかゆみを抑える方法
(1)肌に刺激のある衣類を避ける
ゴワゴワとした繊維のセーターなど、刺激のある衣類を避けましょう。ブラジャーもレース素材ではなく、つるんとした凹凸の少ない素材がベスト。ネックレスなどの装飾品も避けたほうが無難です。
(2)髪をすっきりまとめる
アトピーの人は髪の毛の刺激も大敵。なるべく束ねて、顔や首にかからないようにしましょう。
(3)体をゴシゴシ洗いすぎない
ナイロンタオルによるこすり洗いは、お肌のバリア機能を低下させて乾燥を助長します。石けんも毎日使わなくてOK。“洗いすぎないこと”が大切です。
(4)保湿をする
きちんと保湿をすることで皮膚のバリア機能を補うことができ、かゆみを感じにくくなります。症状がよくなると軽視しがちですが、アトピーの方はつねに保湿を心がけましょう。症状の軽い場合は、市販の敏感肌用の保湿剤や、ワセリンでもOK。ただし、必ずパッチテストを行ってください。心配な方は皮膚科のものが安心です。顔も体も含め保湿剤を処方してくれますし、普段用に使えるのでオススメです。
(5)肌を冷やす
夜中にかゆみで眠れない場合は、保冷剤や氷をビニール袋に入れて肌を冷やすと効果的です。ただし、冷えピタシートなどを直接肌に貼るのは刺激になるのでNG。お風呂の最後に冷たいシャワーを浴びるのも手です。
(6)虫刺されに気をつける
虫刺されがきっかけで、かいていくうちにその周辺まで悪化することがあります。もともと乾燥した肌なので、皮膚炎が起きやすい状態。夏場は虫刺されに十分気をつけて、かゆみを助長しないようにしましょう。
(7)清潔な住環境を保つ
絨毯はチリや埃が舞いやすいため、なるべくフローリングの家に住むのがポイント。大掃除で悪化する人もいるため、普段から掃除をして、清潔な環境を保ちましょう。寝具も丸洗いできるものがオススメです。
(8)ストレスを溜めない
ストレスはアトピーの大敵。趣味に集中したり、リフレッシュしたりする時間を作りましょう。スポーツが好きな人は汗が刺激になるからと我慢するのではなく、運動後にシャワーで汗を流して冷やすなど、自分の肌と向き合って対処法を工夫していくほうが得策です。
まとめ
アトピーは症状がよくなったり悪くなったりを繰り返すもの。完全に治すことよりも「落ち着いた状態を保つこと」が治療の目標だそうです。状態がよくならないことをストレスに感じることなく、正しいスキンケアや対処法を知って、うまく付き合っていくことが大切ですね。
(取材協力:福永麻紀、文:水野久美)
※画像はイメージです
※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.05.24)
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