本番前に言い訳をしたくなる心理「セルフ・ハンディキャッピング」
学生時代、テストの前に「私全然勉強していないから、ヤバい!」と言い出す子は、居ませんでしたか? 「私もだよ」と安心していたら、全然勉強していなかったはずの子の方が、良い点を取っていたりして? 本番前に「言い訳」を用意する方は多いもの。
【堂々と宣言する? 「定時あがり」を成功させる女子の言い訳】
どのような心理状態なのでしょうか。
セルフ・ハンディキャッピング
自分の能力が試される場所で、本番前にわざわざ本調子ではないことを公言する。これをセルフ・ハンディキャッピングと言います。自分で自分にハンディキャップを与えることで、「本当は調子が良いのに、ウソの情報を与える」ケースもあれば、「ハンディキャップのために、あえて努力不足の状況にする」ケースもあります。
周囲から見ると「なぜわざわざそんなことを」と思ってしまうことも珍しくないでしょう。しかし、もし失敗したときには「やっぱり……」と言い訳でき、成功したときには「本調子ではなかったのに、成功した!」と、自分の評価をより高める効果が期待できるのです。
たった一言で、自分の立場を良くできる、魔法の言葉として、つい使ってしまう方も多いのではないでしょうか。
新薬での実験
セルフ・ハンディキャッピングについて、ある興味深い心理実験が行われました。それは、集めた学生を二つのグループに分けて、知的作業と共に、薬を飲んでもらうというものです。
一方のグループには簡単な問題を、そしてもう一方のグループには難しい問題を与えました。学生たちが、半分ほど解き進めたところで、「両方とも良くできています」という言葉と共に、2種類の薬を提示しました。それは「知的作用を促進させる薬」と「知的作用を抑制させる薬」です。
結果、難しい問題に取り組んでいたグループの学生は、より多く「知的作用を抑制させる薬」を選んで服用したのです。
これは、前半を解き終えた段階で、難しい問題を与えられた学生が「後半でも良い評価を得ることは難しい」と判断したためです。「問題を解けないのは、自分の能力のせいではなく、あの薬のせいなんだ」と予防線を張ったのだと考えられます。
自分を守りたい
セルフ・ハンディキャッピングは、自我防衛機制の一つです。つまりは、自分のプライドを守るために、あらかじめ「言い訳」を用意しておくということ。失敗しても成功しても、自分にとってオトクな状況が生まれます。本番前以外にも、異性の前で「私モテないから……」と言ってみたり、難しいことを頼まれたときに「私バカなんです……」と言ったりするのも、まさにセルフ・ハンディキャッピング。
生活のあらゆるシーン、自己防衛のために使いがちです。
使いすぎは禁物!
失敗・成功、どちらに転んでもオトクだと感じがちなセルフ・ハンディキャッピングですが、使いすぎには注意が必要です。実は、言い訳をする人と、しない人、良い成績を残しやすいのは、言い訳をしない人なのです。セルフ・ハンディキャッピングにより、あらかじめ自分の「守り」を手に入れてしまうと、本来の能力が発揮できないのですね。
本当に頑張らなければならない場面では、自分を追い込む必要もあると言えそうです。
自分を守るためのセルフ・ハンディキャッピングですが、ときにはそれが、自分の足かせとなってしまうことも……。言い訳を口にせず、過程も結果もすべて受け入れる覚悟をすることで、新たな能力を発揮できるのかもしれませんよ。