「トイレ」は英語の「トイレット(toilet)」が省略されたもの。今では当たり前に呼ばれていますが、カタカナ語が無かった時代にはさまざまな表現が存在していたのです。
この記事では豆知識として知っておきたい、トイレの昔の言い方とその由来、そして現在も使われている別の言い方を紹介していきます。
■トイレの昔の言い方とは?
トイレの言い換えには、「便所」など、さまざまな種類の表現が存在します。ここではその中でも昔使われていた言い方と、それぞれの理由を見ていきましょう。
◇(1)厠(かわや)
今でも時代劇などでよく耳にする「厠」。和風居酒屋でもこう表記したトイレをよく見掛けるため、比較的なじみのある表現といえるでしょう。
「古事記」ではすでにトイレのことを「厠」と表現し、水が流れる川に板を掛けて、その上で用を足していた様子が記されているのです。^「川の上にある小屋」、つまり「川屋」が転じて、「厠」と呼ばれた^といわれています。
◇(2)ご不浄(ごふじょう)
^排せつ物が不浄なもの、穢れ(けがれ)であるものという昔からの考えによって、トイレを「不浄」や「不浄場」^とも言います。
「ご不浄」は、女性を中心に^丁寧語の「ご」を文頭につけて^呼ばれていたものです。
◇(3)憚(はばかり)
そもそも「憚る」という言葉は、何かに差し障りがある、遠慮するといった意味を持った言葉。
トイレは人に対して面と向かって言いづらい場所であることから^「人目を憚る場所」として「憚(はばかり)」と呼ぶこともありました。^
◇(4)後架(こうか)
^「後架」は禅寺にある、洗面所のことを意味する表現^として知られています。
僧堂から橋のように通路を架け渡した先に、^洗面所がありその横にトイレがあった^といわれ、この構造からトイレを意味する言葉として使われていました。
◇(5)閑所(かんじょ)
^「閑所」は人気が少なく、静かなところを意味する表現。^これが古くから、トイレの暗喩として使用されていました。
鎌倉時代にはすでに存在した言葉とされています。また武田信玄が閑所を作った記録が残っているなど、広く使われていたことが分かりますね。
◇(6)雪隠(せっちん)
^「雪隠」もトイレの別称^で、由来は諸説あります。例えば、^中国の「霊隠寺(りんにんじ)」にて熱心にトイレ掃除に取り組んでいた「雪竇(せっちょう)」という僧^からきているという説があります。
他にも、^禅宗の「西序(せいじょ)」の立場の人が使うトイレとして「西浄(せいちん)」があり、これが転じて「雪隠(せっちん)」になった^ともいわれています。なお「西序」は、法要の際に仏殿の西側に並ぶ者のことです。
◇(7)東司(とうす)
^「東司」は今でも禅宗で使われているトイレの呼び名。^「雪隠」の章で解説した「西浄」とは対になっており、^法要の際に仏殿の東側に並ぶ「東序(とうじょ)」が用いるのが「東浄(とうちん)」「東司」^です。
京都の東福寺には、現存する日本最古のトイレとして、国の重要文化財に指定されている東司が存在します。
■現在も使われるトイレの別の言い方
トイレは今でも別の表現に言い換えることがあります。直接言いづらい時には、相手に合わせた言葉遣いを心掛けてみましょう。
◇(1)お手洗い
^「手洗い」はいわずもがな、手を洗うことですが、トイレを指すことも^ありますね。これを丁寧に言ったのが「お手洗い」です。
男女問わず使いやすい上、トイレよりも直接的ではないため、幅広いシーンで使われる言い換え言葉でしょう。
◇(2)化粧室
^「化粧室」は化粧や身づくろいをする部屋という意味^があります。実際にトイレの洗面台で女性がメイクを直すことから、^トイレに行くことを「化粧室に行く」と表現することも多い^ですよね。遠回しで上品な印象があります。
ちなみに前述のように「トイレ」は英語の「toilet」からきていますが、これはフランス語で化粧や身だしなみを意味する「toilette」が由来の言葉です。
◇(3)WC(ダブリューシー)
^トイレの表記で一般的な「WC」とは、「water closet(ウォータークローゼット)」の略称。^
ちなみに古い言葉であり、英語圏では現在はあまり使われていないそう。アメリカでは「bathroom」や「restroom」、イギリスでは「toilet」などを用いるといいでしょう。
■トイレにはさまざまな呼び名が存在する
昔使われていたトイレの呼び名には、禅僧が由来の言葉が多くあることを紹介してきました。
他にも、当時川の上に板を置いたところで用を足していたことから「厠」など、その時代のトイレの形を元に呼ばれた名もあるのは、面白い発見ではないでしょうか。
現代でもトイレの呼び名はさまざまあるため、シーンに合わせて呼び名を変えてみてくださいね。
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