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映画でよくあるシーン「クルマで天井を走るならどんな車が必要?:F1カーなら可能性あり」

高級スポーツカーがトンネルの天井を走るCMを動画サイトで見つけた。映画でも見かけるシーンだが、実現できれば渋滞も解消されるに違いない。

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高速で走るクルマは、本当に天井を走れるのだろうか? 重力は地面に向かって働くのだから、天井に貼りついていられるはずもないと思っていたが、レーシングカー並の速度で走り、飛行機の翼を逆に使ってダウンフォースを発生させれば、天井走行も夢ではなさそうだ。

ダウンフォースは偉大なり

飛行機の翼の断面はカマボコのような形で、底面は直線的なのに対し、上面は膨らんでいるのはご存じだろうか。

この構造こそが飛行機を空に飛ばす揚力(ようりょく)の源だ。直線的な下側は距離が短いため空気は短時間で後ろに抜けるのに対し、曲線的に膨らんだ上面は距離が長いため、通過するのに時間がかかり遅れて到着する。

ところが翼は上下とも同じ速さで動くので、時間差は空気が埋め合わすことになり、上面の空気は底面よりも速く移動するようになる。これはベルヌーイの定理と呼ばれ、空気の速度差が翼を浮かそうとする揚力を発生させるのだ。

自動車も翼と同じような構造で、横から見ると底面は平らなのに対し、人間や荷物を載せるために上面が膨らんでいるのが一般的だ。そのため高速で走行すると、翼と同様に上向きの力が発生してしまう。

日本の法定速度の上限である時速100kmぐらいなら、発生する揚力も小さいので心配する必要はないが、高速で走行するレーシングカーは車体が浮かび上がってしまうこともある。

そのためウィングと呼ばれる大きな羽根を取り付け、車体を地面に押し付けるダウンフォースを発生させているのだ。

ダウンフォース(DF)と自重(M)の関係はDF÷Mで表され、数値が大きいほど効果を発揮する。日産自動車の資料によると、半径100mのカーブを曲がるための、ダウンフォース(DF/M)とクルマの限界速度(km/時)の関係は、

・DF/M=0 … 約140km/時

・DF/M=0.2 … 約150km/時

・DF/M=0.4 … 約165km/時

・DF/M=0.6 … 約175km/時

・DF/M=0.8 … 約185km/時

・DF/M=1.0 … 約195km/時

となり、自重と同じダウンフォースが生み出すと、何もない状態よりも40%近く速くカーブを曲がれるようになるのだ。

天井だって速度制限あり?

ダウンフォースが大きくなると、車体が地面に強く押し付けられるので、スリップしにくくなるのは確かなのだが、大きなウィングを取り付けると空気抵抗も増えてしまう。自動車が受ける空気抵抗には、一般的に、

・空気密度(ρ)

・前面投影面積(A)

・空気抵抗係数(CD)

・車速(V)

が関係し、(ρ×CD×A×Vの2乗)÷2から重さ(kg)として求められる。前面投影面積は、クルマを前から見た際の面積を表し、ワンボックスやトラックは比較的大きいため、時速80kmで走るとおよそ200kgもの重さを受けるのに等しい。

ダウンフォースを求めるあまり車体からはみ出るほど大きなウィングをつけると、前面投影面積も増えてしまい、高速になるほどに大きな抵抗を生み出してしまうのだ。

レーシングカーにはどれぐらいのダウンフォースが発生するのか? 本田技研工業の資料によると、ウィングだけに頼らず、車体全体で空気の流れを制御しているF1の場合、時速300kmで走行すると600kgの車重に対して2,000kgものダウンフォースが発生するという。

差し引き1,400kg分の力が発生するので、これなら天井走行も可能だ。

ただし、法定速度・100km/時を順守しなければならない。空気抵抗と同様に、ダウンフォースも速度の2乗に比例するなら、222kg分となってしまうのでバイク並みに軽量化しなければならない。速度が落ちれば押し付けられる力も失ってしまうから、ブレーキ厳禁の無謀運転になってしまう。

まとめ

ここまでして天井を走る意味があるかは別として、F1カーを用意すれば走れる可能性大。
ただし、レーシングカーは買うのに数億円する。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年01月23日に公開されたものです

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