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壮大な人類移住計画~地球を飛び出して宇宙に住もう~

地球を飛び出して他の天体に住む…なんていうのはSFの世界だと思っている人が多いでしょう。

【宇宙空間はいったい何度?「-270℃」】

しかし、この計画については、科学者たちが何年も前から検討し、実験までしているのです。

そこで、今回は人類の宇宙移住計画について、これまでにどんなことを考え試してきたのか、少しご紹介したいと思います。

狙うはどこの星?

地球以外の場所へ移住するにあたって、まず議論となるのはどの天体を目指すかということです。

これまでに検討された候補としては、太陽系の他の惑星や衛星・小惑星、さらには地球軌道上にスペースコロニーを作るというものまでありました。

その中でも人気が高いのは、もっとも身近な天体である月と、地球のお隣の惑星・火星です。

月の魅力は何と言っても、一番近いこと。地球からはおよそ38万kmの距離ですが、実際に人類が到達した実績があるというのは大きいです。

そして月よりも人気があるのが火星です。火星は月よりも大きく、その表面積は地球の陸地とほぼ同等サイズです。また、大量の水が眠っていると考えられている点も魅力的です。

解決すべき資源の問題

移住する場所を決めたとしても、クリアすべき課題はたくさんあります。

人類や他の動植物が生きていくためには、空気(酸素)や水、食べ物、太陽エネルギー、適度な温度などいろいろなものが必要になります。
水があれば、そこから水素と酸素を作り出すことができますし、太陽エネルギーがあれば植物(野菜)を育てることもできますね。さらに、植物があって食べ物が確保されれば、動物たちが生きていくことも可能になるでしょう。

地球には、これらの条件がすべて整っていて、巨大で複雑な生態系を作り出しているため、豊かな惑星が維持できているのです。

それでは、火星や月はどうなのでしょう?

火星にはおそらく水がたくさんありますので、そこから酸素を作り出すことが可能です。また、大気中の二酸化炭素もうまく活用できると考えられています。一方、月には酸素以外の資源が乏しく、そこが課題となっています。

加えて、火星や月は夜の時間が地球に比べて長いため、太陽エネルギーをうまく確保することも大きな問題となります。

なお、火星は太陽からも遠く、非常に寒いですが、二酸化炭素による温室効果を利用すれば、その点はクリアできるかもしれません。

宇宙移住に向けたその他の課題

資源の問題以外にも、クリアしなければならない課題はまだまだあります。

たくさんの人々をどのようにして月や火星に送り込むのか。現代の宇宙船では、一度に運べる人数が限られるため、より多くの人を安く輸送できる手段を検討する必要があります。

また、宇宙には人体に有害な放射線も飛び交っています。地球の場合には、地磁気や大気がその直接的な被害を防いでくれていますが、他の天体の場合はどうするのか…それも避けて通れない課題です。

地球で行われた実験 ~バイオスフィア2~

かつて地球上でも、自然環境から隔離し、完全に閉鎖された人工の生態系で生活ができるかという実験を行ったことがあります。

1990年代にアメリカのアリゾナ州で行われた「バイオスフィア2」がその代表例ですが、このときは砂漠の中に巨大なガラス張りの空間を作り、その中で8名が自給自足の生活を行うことを目的としていました。当初は100年間続けるという計画でスタートしたものの、結果的には酸素不足や食糧不足に陥ったほか、精神的な不安にもつながり、わずか2年で中止となってしまいました。

地球の複雑な生態系を人工的に作り出すことが、いかに難しいかが証明されたわけです。

まとめ

今回は壮大な宇宙移住プロジェクトについてご紹介しました。

現代の科学技術を持ってすれば、他の天体に移住することも夢ではない時代になってきていますが、その実現には多くの課題が残されており、時間・費用・労力も要します。そう考えると、この費用や労力を、私たちが住んでいる地球に向けることで、今の自然環境や生態系を維持させる方がはるかに簡単で大切なことなのかもしれませんね。

(文/TERA)

●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年01月23日に公開されたものです

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