もしもプラスチックを作るなら何が大変?「従来よりも3~5倍のコスト増」
トルコの女子高生が、バナナの皮からバイオ・プラスチックを作り出した。石油を使わず食品廃棄物も減る画期的な技術だ。
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バイオ・プラスチックは他の素材からも作れるのだろうか?バイオマスやグリーンプラなど複雑に分類されているが、デンプンとセルロースがあれば何とかなりそうだ。
バイオだけどエコじゃない?
プラスチックは可塑(かそ)性、つまり形を変えやすい物質の意味で、定義があいまいなため合成樹脂の総称と考えることにする。身近なものでは雨どいや水道管に使われる塩ビ、清涼飲料水でおなじみのPET(ポリ・エチレン・テレフタレート)、袋やバケツの材料となるポリエチレンなどがプラスチックに分類される。
ポリ○○の名前が多いのも特徴で、これは複数の分子が鎖や網状に結合したポリマー(重合体)を意味し、そのおかげで軽くて丈夫な製品が作れるのだ。
バイオ・プラスチックも基本構造は同じで、出発点となる原料が石油かバイオマスかの違いに過ぎない。バイオマスは生物由来の有機性資源を意味し、大別して3つに分類される。
・廃棄物系バイオマス … 生ゴミや廃材、家畜排せつ物
・未利用バイオマス 林地残材、稲わら、海草
・資源作物 … さとうきび、とうもろこし、大豆
プラスチック、生物由来の両面から違和感があるかも知れないが、天然ゴムもこのグループに分類される。分かりにくい製品はバイオマスマークが付与されているかで判断するのが良いだろう。
混同しやすいのが生分解性プラスチックで、こちらは「自然界の微生物によって分解」されればOKなので、生物由来の原料でなくても構わない。石油由来の脂肪族ポリエステルや芳香族ポリエステルもあるので、バイオ・プラスチックとはまったく別のカテゴリーなのだ。
目印はグリーンプラマークで、この表示があれば原料を気にすることなく埋めても大丈夫、と覚えればわかりやすいだろう。
整理すると、バイオ・プラスチックには生物由来で埋めて処分できる素材、のイメージが強いが、これはバイオマスマークとグリーンプラマークの両方を取得したものに限られる。つまり、バイオと名付けられたものでも、埋めて処分できないものは多数存在するのだ。
かなり高価なエコロジー
バイオ・プラスチック作りのポイントは重合で、素材をどのようにポリマー化するかによって天然物系、化学合成系、微生物産出系に分かれ、作られるプラスチックの種類が異なる。おもなプラスチックを、製造方法と原料で分類すると、
・ポリ乳酸 … 化学合成系 … でんぷん
・酢酸セルロース … 天然物系 … セルロース(木材や綿)
・PBS(ポリ・ブチレン・サクシネート) … 化学合成系 … でんぷん/セルロース
・PHA(ポリ・ヒドロキシ・アルカノエート) … 微生物産出系 … 植物性バイオマス
・でんぷん樹脂 … 天然物系 … でんぷん
となり、でんぷんとセルロースがあれば作れそうだ。
でんぷんは光合成で作られ、セルロースは細胞壁の構成要素だから、ほとんどの植物がどちらも持っていることになる。つまりバイオ・プラスチックを作ろうと思えば、材料に困ることはないのだ。現在主流の原料であるトウモロコシは、デンプン/セルロースとも豊富に含んでいるからで、効率を考えなければ別の材料でも構わない。
バナナの皮が話題になったのは、捨ててしまう素材の有効利用に大きな意味があるからだ。
なぜバイオ・プラスチックは普及しないのか? 原因はコストの一言に尽き、原価は従来のプラスチックに対し3~5倍、生分解性は6倍強とのデータもある。さらには強度、加工性、耐久性も劣るため、利用者も生産者もメリットが少ない。
特に生分解性は分解速度が重視されるため、耐用年数に大きな課題が残る。安価な塩ビの水道管でさえ50年以上が見込まれているほどだから、バイオ・プラスチックに置き換えるためには耐久性を向上させなければならない。
高い耐久性が求められない使い捨てコンタクトや緩衝材には適しているものの、今度はコストが高くつくので痛しかゆしである。
残念ながらバナナの皮が、転ぶ以上の実用性を見つけるには、まだまだ時間がかかりそうだ。
まとめ
生分解性プラスチックで自動車が作れたら、処分の手間も費用も省けてラッキーと思ったが、実用化は相当先になるだろう。
ある日突然、愛車が半分朽ち果てていた、なんてことがないように、耐久テストは念入りにおこなっていただきたい。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年02月08日に公開されたものです