滋賀県立大学「琵琶湖水中考古学研究会」は日本で唯一の存在!?
水中に潜って遺跡を調査するという、日本でおそらく唯一のサークルが滋賀県立大学にあります。それが「琵琶湖水中考古学研究会」です。どんな活動をしているのでしょうか!? 取材してきました。
■水中考古学は日本ではこれからの学問!
滋賀県立大学大学院博士後期課程 「琵琶湖水中考古学研究会」代表の中川 永さん(日本学術振興会 特別研究員DC1)にお話を伺いました。
――水中考古学研究会というのは大変に珍しいと思うのですが……。
中川さん はい。水中考古学に本格的に取り組んでいるのは日本でも珍しい存在です。私の師匠であります林 博通先生が大学で調査を始められ、私がそれを学術サークルとして引き継いだ形です。
*……林 博通名誉教授は2010年度に滋賀県立大学を退任されています。
――水中考古学は海外では盛んなのでしょうか。
中川さん はい。海外では昔から取り組まれています。日本では最近になってやっと脚光を浴びてきましたが、それでもこれからの分野だといえます。日本では琉球大学の池田栄史先生の研究が有名です。他には東京海洋大学、東海大学、そして私たちの滋賀県立大学ですね。琉球大学の池田先生は、元寇船舶が遭難した場所を調査されています。
――日本は四方が海なのに水中考古学がこれからの学問というのは少し不思議な感じがしますね。
中川さん そうですね。さる3月22日に「水中遺跡調査検討委員会」が文化庁主催で開催されました。これが第1回です。他の多くの海洋国に遅れ、ようやく重い腰を上げたという状況です。
琵琶湖にはさまざまな遺構が沈んでいる
――「琵琶湖水中考古学研究会」ではどのような活動をされているのでしょうか? 「琵琶湖」と付いていますのでやはり琵琶湖の調査がメインですか?
中川さん 他の場所に遠征に出掛けたりもしますが、やはり多くは琵琶湖の調査ですね。実際に琵琶湖に潜って、遺跡の位置を特定し、その調査を行います。調査結果を発表するのも活動です。
――サークルの人たちは全員潜るのですか?
中川さん 潜る要員は10名ぐらいですね。みんな免許を取って調査に携わります。
――どんな遺跡があるのですか?
中川さん 一般にはあまり知られていないのですが、琵琶湖には多くの遺構があります。例えば、縄文時代の貝塚や弥生時代の集落、また時代は下りますが、港跡の遺構などもあります。
――琵琶湖にそんなものが沈んでいるんですか?
中川さん はい。他にも豊臣時代のお墓などもあるんですよ。
――ということは琵琶湖の水位は時代によって変化しているということですね?
中川さん 水位の変化の他に、例えば地震で地滑りが起こり、その土地が水没したりといったことも起こります。
――なるほど。しかし水中からそれらの遺構を見つけるのは難しくないのですか?
中川さん 木材などは水中の方が残りやすいという面もあるのです。また、上に新しい建築物を建てたりといったことがありませんから、遺構を見つけやすいという面もあります。
調査&報告の研究活動は活発です!
――1年間でどのくらいの調査を行うのでしょうか?
中川さん 潜るのは6月前半から8月いっぱいですね。今年度は50回ほどの調査を予定しています。その8-9割が水中調査ですね。
――なんだか冒険部みたいで楽しそうですね。
中川さん まあ……楽しいですかね(笑)。新入生で水中調査を行いたい人には、取りあえず潜水の免許を取りに行ってもらいます。でも潜るだけでは駄目で、きちんと報告をしないといけません。2012年には博物館での展示なども行いました。
*……特別陳列「西浜千軒が語る水没村の世界 -天正大地震と長浜-」が長浜城歴史博物館にて行われました(平成24年6月4日-7月17日)。
――これからどんなサークルにしていきたいと思われますか?
中川さん そうですね。水中考古学はとても大事な分野だと思います。まだまだ専門家も少ないのが現状です。「水中考古学といえば滋賀県立大学」、そんなふうにいわれるようになりたいと思います。
■琵琶湖水中考古学研究会
●発足:2011年
●大学内サークル
●メンバー:現在16名(男性8名/女性8名)
⇒滋賀県立大学「琵琶湖水中考古学研究会」のサイト
http://www.shc.usp.ac.jp/sadamori/framepage3.html
(高橋モータース@dcp)
※この記事は2013年06月27日に公開されたものです