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2022年02月21日 16:26 更新

【医師監修】着床出血の量が多いと危険?間違えやすい原因と見分け方

妊活していて「着床出血が来た!」と喜んだけれど、量が多い気もする……。実は生理? それとも別の原因かも? そんなお悩みに応えるために、ここでは着床出血の特徴や時期、その他にも考えられる出血原因、注意しておきたい出血についての対処方法を解説します。

生理予定日前の出血……これって着床出血?

子宮、タンポン、ナプキン、月経カップなどの生理にまつわるもの
Lazy dummy

待ち望んでいた着床出血が出た!と思ったけれど、それにしては出血量が多かったり、鮮血が続いて不安に感じている女性がいるかもしれません。

そもそも着床出血とはどんなもので、その症状や時期にはどんな特徴があるのでしょうか?

着床の時に起こる生理的な出血

まず、着床出血が起こるために欠かせない「着床」について説明しましょう。

卵子が受精すると受精卵となり、細胞分裂が始まります。それと同時に、卵管から子宮に移動し始めます。

子宮にたどり着いた受精卵は細胞数が数百個以上になった「胚盤胞」という状態になっており、受精後6~7日目ごろに子宮内膜にくっついて、中に潜り込み根を張ります。 子宮に完全に潜り込むのが、受精後12日ごろのことです[*1]。 こうして「着床」が完了します。

胚盤胞が着床して子宮内膜に潜り込む際、少量の血が出て体の外に排出されることがあります。これが「着床出血」の原因です。

なお、着床出血は着床すれば必ず起こるというものではなく、実は出血なしに妊娠が進むことのほうが多いです。着床出血が起こる人は妊娠した人の約8~25%と言われています[*2]。特に出産経験があると、着床出血は起こりやすいと言われています。

着床出血の症状と起こる時期

着床出血は、生理や不正出血と似ているところもあれば、違う点もあります。
主な特徴は一般的に次の通りと言われています[*3](ただし、個人差が大きく一概には言えないことには注意してください)。

量と痛みなどの症状

出血量はごく少量で、痛みはあまりなく、あっても下腹部の違和感程度の軽い症状と言われています。吐き気や乳房の張り、腰痛、頭痛などの症状を伴うこともあります。 ただし、こうした症状は通常の生理前に起こる月経前症候群(PMS)でもよくみられます。

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着床の痛みについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

着床出血の色

着床出血の色は様々です。
生理のような鮮血のこともあれば、おりものに混じってピンク色になることもあります。出血して時間が経ってから体外に出たものは、酸化して茶色になることもあります。

着床出血の時期

着床出血は、生理の予定日かその少し前ごろに起こります。
また、出血が続く期間は生理より短く、数時間~3日間程度のことが多いとされています[*3] 。
そのため中には着床出血と気づかず、生理が軽く終わったと感じる人もいるかもしれません。

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着床出血の時期について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
▶︎着床出血はいつ来る? 性行為後の時期の目安

人によっては着床出血の量が多めなことも

着床出血は少量であることが多いですが、人によっては生理並みの出血が見られることもあるようです。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

ただし、生理予定日前の出血が全て着床出血とは限らず、中には急いで受診する必要がある疾患が原因となって出血している場合もあります。

着床出血と間違えるその他の原因

着床出血と間違えやすい出血の原因には、生理以外ではどのようなものがあるのでしょうか?
主な原因を紹介します。

流産

流産とは、妊娠22週未満で胎児が早く外に出てきてしまったり、子宮内で亡くなってしまい、妊娠が中断することです。

亡くなった胎児や胎芽が子宮の中にとどまった状態の「稽留流産」は、出血はないか、または少量だけあります。
詳しくはこちら ▶︎稽留流産とは

流産が進行中の状態を指す「進行流産」では、大量の出血が見られるとともに、強い下腹部の痛みが起こります。子宮の内容物がすべて排出されると出血や痛みは落ち着きますが、一部子宮内に残ったままになっていると出血や痛みは続きます。
詳しくはこちら ▶︎流産の症状

切迫流産

切迫流産は流産が起こりそうな状況のことで、流産とは違って妊娠が続く可能性があります。
切迫流産になると、少量~中等度の出血があります。 また、下腹部に軽い痛みや張り、腰痛を感じることもあります。

絨毛膜下血腫

お腹の中で赤ちゃんを包んでいる絨毛膜と脱落膜の間にできることのある血腫(血のかたまり)が、絨毛膜下血腫です。

この血腫ができると、性器から出血することがあります。なお、妊娠初期にこの血腫ができていても、たいていの場合、妊娠が進むと自然に吸収されてなくなっていきます。

子宮外妊娠(異所性妊娠)

異所性妊娠の図

子宮外妊娠(異所性妊娠)とは受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまった状態で、すべての妊娠の1~2%に見られるとされています。なお、異所性妊娠の約98%は卵管に着床していると言われています[*1]。

卵管に着床すると、妊娠3ヶ月ごろまでに流産か卵管の破裂が起こります 。

卵管で流産になると、少量で赤く暗い色の出血が続くか、とぎれとぎれに出ることが多いようです。下腹部の痛みもとぎれとぎれに起こります。卵管が破裂を起こすと、大量に出血します。この場合は下腹部が強く痛み、出血性ショックを起こして命にかかわることもあります。

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異所性妊娠について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

胞状奇胎

胞状奇胎は、胎盤の一部である絨毛に体液がたまって丸く膨れた小さな水ぶくれがたくさんできる病気です。

胞状奇胎の原因は大きく2つに分けられ、核のない卵子に1つか2つの精子が受精すると、すべての絨毛に異常が起こる「全胞状奇胎」が、健康な卵子に2つの精子が受精すると、絨毛の一部が水ぶくれとなる「部分胞状奇胎」が起こります。

胞状奇胎になった人の約90%では、妊娠初期から少量~中くらいの出血が続くと言われています。また、30~40%の人ではひどいつわりも伴います[*4]。出血やつわりは、特に全胞状奇胎の人に多く見られるとされています。

子宮頸管ポリ―プ

子宮頸管ポリープは、子宮頸管の一部が増殖してできた、いぼのような盛り上がりです。
普通、症状はほとんどありませんが、血の混じったおりもの、ねばっこいおりものなどが続いたり、セックスすると出血することもあります。

たいていの場合、放置しても問題はありませんが、子宮頸管ポリ―プの0.2~0.7%は悪性と言われているので[*2]、見つかった場合はポリープの一部を取って検査することになります。

子宮腟部びらん

子宮腟部びらんとは、子宮の腟に一番近い部分である子宮腟部の皮膚や粘膜が一部分なくなり、ただれたようになった状態です。

性的に成熟すると、女性ホルモンのエストロゲンの影響で子宮腟部びらんを起こしやすくなります。無症状の人もいますが、少量の血や血の混じったおりものが出たり、おりものが増えることもあります。 子宮腟部びらんも必ずしも病的なものではなく、検査して悪性ではないことがわかれば治療の必要もないことがほとんどです。

子宮頸がん

子宮頸がんは子宮頸部にできる悪性腫瘍です。

子宮頸がんが進行すると、性交渉のたびに出血したり、茶色や膿のようなおりものがたくさん出たり、水っぽいか粘り気のあるおりものが出るようになります。さらに進行すると下腹部や腰の痛み、血便や血尿も起こります。

悪化すると子宮の摘出が必要となったり、命を落とすこともあります。20歳以上の女性は2年に1度、子宮頸がん検診を受けることが推奨されているので、定期的に受けるようにしましょう。 また、おかしいなと思ったら早めに受診することが大切です。

着床出血と生理の5つの見分け方

出血の原因がわからず悩む女性のイメージ

着床出血と間違えやすい出血の原因について紹介しましたが、それでは着床出血と生理はどうやって見分ければいいのでしょうか? おおよその目安を説明します。

1. 出血する期間の違い

出血が始まる時期

すでにお話しした通り、生理が始まる時期と着床出血が始まる時期はほぼ同じくらいです。

出血が続く期間

正常な生理の継続期間は3~7日です。 一方、着床出血はそれより短めで数時間~続いても3日間程度で終わると言われることが多いです[*2]。

ただし、普段から生理の期間が短い人は、着床出血と生理の期間が同じくらいになることもあります。また、上記で解説した着床出血の期間はあくまでも目安なため、中には着床出血が長めに続く人がいる可能性もあります。

2. 出血する量の違い

生理期間中の経血の量は100gくらいの人が多いとされていますが、人によって50~250gくらいの幅があると言われています [*2]。 一方、着床出血の量は少なめのことが多いと言われています。

いつも使っている多い日用のナプキンを使わずに済み、薄いナプキンやおりもの専用シートだけで済んだら、もしかしたら着床出血である可能性もあります。

3. 痛みの違い

生理が始まると生理痛が起こる人は少なくありません。下腹痛だけでなく頭痛や吐き気などに悩まされる人もいることでしょう。

着床出血にはあまり痛みはないか、あっても通常の生理時の下腹部痛より軽く、下腹部に違和感を覚える程度とされています[*3]。

4. 出血そのものの状態の違い

生理で出る経血には、血液だけでなく子宮と腟の分泌物や子宮内膜が含まれています。そのため、生理は赤暗い色をしていて、血の塊が混じっていることもあります。

着床出血はすでにお伝えしたように少量で、生理よりもさらっとしていることが多いようです。色は鮮血のこともありますが、少量の血液がおりものと混じるためにピンク色に見えたり、出血から時間が経って出た場合は茶色をしていることもあります。

そのため、出血の色にはあまり違いがないかもしれませんが、血の塊があれば生理の可能性が高い と考えていいでしょう。

5. 体温の違い

基礎体温表

女性ホルモンが正常に分泌されている場合、生理前までは体温が高め(高温期)ですが、生理が来ると体温は下がります(低温期)。

一方、着床出血が出た場合は妊娠しているため、体温が下がることなく高温期が続きます。
基礎体温を毎日測定し、通常、生理周期に合わせて高温期と低温期に分かれる人では、基礎体温を確認していれば、生理か着床出血か見分けやすくなります。

まとめ

産婦人科を受診する女性のイメージ

着床出血はいつもの生理が始まる頃に起こることがある、少量の出血です。着床出血については体験談などで目にしたことのある人も多いと思いますが、実は妊娠しても着床出血はないことのほうが多いです。着床出血は生理に比べて、血液の量は少なく、生理痛のような痛みはないかあっても軽いと言われることが多いようです。ただし、着床出血も生理ももともと個人差が大きく、症状からこれらを区別することは困難です。また、着床出血には生理のほかにも取り違えやすいものがあり、流産から子宮頸がんなどさまざまです。その中でも、異所性妊娠には特に注意が必要。卵管破裂を起こすと命にかかわる事態となることもあります。これを防ぐ対策として、妊娠の可能性がある女性は、着床出血の有無にかかわらず適切な時期に妊娠検査薬を使用し、陽性と判定されたらあまりほうっておかずに病院を受診することが大切です。

(文:大崎典子/監修:窪 麻由美先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気が見えるvol.10産科, p.20, 96, メディックメディア, 2018.
[*2]NEWエッセンシャル 産科学・婦人科学 第3版, 医歯薬出版
[*3]American Pregnancy Association:What is Implantation Bleeding?
[*4]病気が見えるvol.9婦人科・乳腺外来, メディックメディア

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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