トイレの昔の言い方とは? 現代でも使われる別名や上品な言い方も紹介
トイレの昔の言い方には、「厠」など現代でも聞き覚えのあるものから、「閑所」などさまざまなものがあります。本記事ではトイレの多様な呼び方となぜそう呼ばれていたのか、そして今でもよく使われる別称を解説します。
「トイレ」は英語の「トイレット(toilet)」が省略されたもの。今では当たり前に呼ばれていますが、カタカナ語が無かった時代にはさまざまな表現が存在していたのです。
この記事では豆知識として知っておきたい、トイレの昔の言い方とその由来、そして現在も使われている別の言い方を紹介していきます。
トイレの昔の言い方とは?
トイレの言い換えには、「便所」など、さまざまな種類の表現が存在します。ここではその中でも昔使われていた言い方と、それぞれの理由を見ていきましょう。
(1)厠(かわや)
今でも時代劇などでよく耳にする「厠」。和風居酒屋でもこう表記したトイレをよく見掛けるため、比較的なじみのある表現といえるでしょう。
「古事記」ではすでにトイレのことを「厠」と表現し、水が流れる川に板を掛けて、その上で用を足していた様子が記されているのです。「川の上にある小屋」、つまり「川屋」が転じて、「厠」と呼ばれたといわれています。
(2)ご不浄(ごふじょう)
排せつ物が不浄なもの、穢れ(けがれ)であるものという昔からの考えによって、トイレを「不浄」や「不浄場」とも言います。
「ご不浄」は、女性を中心に丁寧語の「ご」を文頭につけて呼ばれていたものです。
(3)憚(はばかり)
そもそも「憚る」という言葉は、何かに差し障りがある、遠慮するといった意味を持った言葉。
トイレは人に対して面と向かって言いづらい場所であることから「人目を憚る場所」として「憚(はばかり)」と呼ぶこともありました。
(4)後架(こうか)
「後架」は禅寺にある、洗面所のことを意味する表現として知られています。
僧堂から橋のように通路を架け渡した先に、洗面所がありその横にトイレがあったといわれ、この構造からトイレを意味する言葉として使われていました。
(5)閑所(かんじょ)
「閑所」は人気が少なく、静かなところを意味する表現。これが古くから、トイレの暗喩として使用されていました。
鎌倉時代にはすでに存在した言葉とされています。また武田信玄が閑所を作った記録が残っているなど、広く使われていたことが分かりますね。
(6)雪隠(せっちん)
「雪隠」もトイレの別称で、由来は諸説あります。例えば、中国の「霊隠寺(りんにんじ)」にて熱心にトイレ掃除に取り組んでいた「雪竇(せっちょう)」という僧からきているという説があります。
他にも、禅宗の「西序(せいじょ)」の立場の人が使うトイレとして「西浄(せいちん)」があり、これが転じて「雪隠(せっちん)」になったともいわれています。なお「西序」は、法要の際に仏殿の西側に並ぶ者のことです。
(7)東司(とうす)
「東司」は今でも禅宗で使われているトイレの呼び名。「雪隠」の章で解説した「西浄」とは対になっており、法要の際に仏殿の東側に並ぶ「東序(とうじょ)」が用いるのが「東浄(とうちん)」「東司」です。
京都の東福寺には、現存する日本最古のトイレとして、国の重要文化財に指定されている東司が存在します。