【第4話】好きの感情が刃になる。好きな人にブッさす鬼畜すぎるトドメ
恋愛・婚活コラムニストのやまとなでし子さんが、月9ドラマ『君が心をくれたから』(フジテレビ系)を毎週考察&展開予想するコラムです。主人公・逢原雨が、愛する男性のために自分の“心”を差し出す宿命を背負うことから始まる、“過酷な奇跡”が引き起こすファンタジーラブストーリー。“奇跡”と引き替えに雨が奪われる“心”とは……? 2人の未来は果たして……?
※このコラムは『君が心をくれたから』4話までのネタバレを含んでいます。
雨が身を引くことは、太陽が夢を1つ失う
自分が五感を失うことで、大好きな太陽(山田裕貴)の夢や人生の邪魔をしたくない、と身を引くことを決意した雨(永野芽郁)。
自分の夢をかなえられない分まで、太陽には「立派な花火師になる」という母との約束と、「花火でたくさんの人を幸せにしたい」という夢をかなえてほしいと思ったのでしょう。
太陽の人生の負担にならないために、自分への恋心を諦めてともらおうと、徹底的に嫌われることを決意します。でも雨は気づいていません。
雨が太陽との関係を終わらせるということは、太陽のもう一つの夢がかなえられなくなるのです。花火を見る雨の横顔を見て抱いた、「雨を自分の花火で笑顔にしたい」という夢。
その足で、すぐさま花火師の弟子入りをしたほど、太陽にとってとても大切な夢です。
雨の決断は太陽の夢を一つ失うことになるなど、もちろん雨は知るよしもありません。
雨の鬼畜ムーブ発動
雨は太陽に嫌われるために、鬼畜ムーブを発動します。太陽に誘われたハウステンボスデートに、内緒で司(白洲迅)を誘い、騙し討ちで3人でのデートにする、というもの。これでだけでもショックなのに、さらにダメ押しの「司さんが好きだから応援して」という、太陽への一言。
こんなん好きな人にされたら、もうメンタルズタボロ。「観覧車に乗ろう」という太陽の誘いははっきり断り、「(司とのツーショット)写真撮ってくれる?」「司と船に乗るから、お前岸でぼっちで待ってろ(意訳)」とか、普通の人なら「それほどの行動力あるなら、応援いらんだろ! 太陽のデート断って最初から司と二人で行けや」と、怒りすら湧いてもおかしくない場面。
しかし太陽は素直でまっすぐで優しい子。そんな邪悪な心は微塵も湧きません。寒い中、忠犬ハチ公のように岸で二人を待つのです。泣けます。愛おしさにホカロンを差し入れしてあげたい。
全てを知る司は雨のためを思い、「仕事が入ったから!」と猛ダッシュで消え、太陽と雨を二人きりにさせるのでした。ナイスラン!
両思いなのにすれ違い続けてきた二人
両思いなのに、なぜかボタンを掛け違え続け、ずっとすれ違ってきた二人。卒業の日も、互いに告白しようとしていたのに、いろんなことがすれ違い、そのまま二人は離れることに。
観覧車もその一つ。本当は二人とも乗りたかったのに、太陽が素直になれず、乗れないまま二人の青春は終わっていました。
その後悔を払拭するため、太陽は雨に二人の思い出であるマーガレットの花束をプレゼントし、「しつこいかもしれないけど、やっぱり一緒に乗ってほしい」と伝えます。
雨は乗らないつもりで、マーガレットの花占いに答えを委ねるのですが、思惑が外れて乗ることに。
好きの感情が刃となる、鬼畜すぎるトドメ
やっとかなった、二人で乗る観覧車。
しかしそこで、雨は太陽にとどめを刺しに行きます。「司さんと付き合うことになった」と、うそをつくのです。この時わざわざ太陽に目をつぶらせたのは、目を見てうそをつくことが辛かったからでしょうか……。
「司のどこが好きなのか」と問う太陽に、司を好きな理由として挙げていった条件は本当は全て太陽に向けられたもの。
特別扱いしてくれるところ。たくさん褒めて、励ましてくれるところ。恥ずかしいことでも素直に言ってくれるところ。お姫様になれたみたいでうれしかった。生まれ変わっても彼に会いたい。
そして最後に絞り出すように言葉にした掠れるほどの「大好き」。
本当は全て太陽へ向けられている言葉のはずなのに、それが全て刃となって太陽本人にブッ刺さり、メンタルを切り刻んでくるとか、なんという拷問なのでしょうか。
手をつなぐこと、観覧車に乗ること、好きな人の最愛の人になること。青春時代にすれ違ってかなわなかった思いが、再会によってどんどんとかなっているのに、その結果がこんなにも悲しく、残酷だなんて……。
「うらやましいな。俺だったらよかったのにって。悔しいけどそう思っちゃうよ」という太陽の言葉がもどかしすぎて。全部、太陽なんだよ。
奇跡で体は生かしても、心を殺してしまった雨
せっかくの奇跡で太陽の肉体を生かしたのに、これでは雨の手で太陽の心を殺してしまったようなもの。奇跡を選んだことで太陽が生き延びた世界線と、太陽が亡くなっていた世界線……果たしてどちらが本当に幸せだったのか。と考えてしまいました。
そして、雨は太陽のためを思い、嫌われることを選択しましたが、それは最良の選択なのでしょうか。わざわざ最低なことをしてまで太陽に嫌われるということは、今まで過ごしたたくさんの思い出や時間にも泥を塗る可能性だってあります。
大切な思い出たちをわざわざ壊す必要はなく、太陽に気持ちが無いことをはっきり伝えて目の前から消えるだけではダメなのでしょうか。
未練を残さないための優しさだとしても、人として最低なことをして、「自分が好きだったのはこんなに酷い人だったんだ」とまで思わせることは、逆に不要な傷までつけてしまいます。
花火師の夢と雨。どちらが太陽にとって大切なのか。どちらの方が失いたくないのか。花火師が「雨のために」かなえたい夢だったのだとしたら、真実を知って雨に寄り添う方が太陽にとって幸せな可能性だってあります。
圧倒的スリの才覚を見せた雨
そしてタイムリミットが訪れ、失われた雨の嗅覚。
最後に嗅いだのは、あの日と同じ、太陽のアウターから香る花火の香り。思い出のマーガレットの香りを嗅ぐことはもうかないません。
太陽に別れを告げた雨は、高校生のあの日、もらいそびれた第二ボタンを勝手にゲットしていました。あのアウターのボタンいつ掠め取ったんですか? 桃鉄のスリの銀次もびっくりの手腕。
しっかりついてたボタンなので、かなりの怪力で引きちぎるか、刃物を使わないとサッと取ることは不可能。何が起きたのか分からなすぎて何度も繰り返して見てしまいました。
しかもアウターの第二ボタン。ないと着用にかなり支障がでるポジションです。
圧倒的スリの才覚を見せた雨ですが、帰宅すると祖母(余貴美子)が倒れていました。
五感を失うことを相談しようとした矢先、唯一頼れる祖母が倒れてしまってはそれどころではありません。そして、ここでは奇跡は起きないという日下(斎藤工)の非情な一言。奇跡が起きる条件マニュアルの開示を要求したいところですが、余命宣告された状況を考えるともう長くはないのでしょう。
雨や祖母の気持ちや、これからのことを考えると同情と心配と苦しさで、見ているだけで胸がいっぱいになってしまいます。
しかしそれでも残酷に時は進み、次は触覚を失うという予告。毎話、涙なしには見られないこのドラマ。次回は何が起きてしまうのでしょうか。
(やまとなでし子)
※この記事は2024年02月05日に公開されたものです