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「辞める」と「止める」はどう違う? 意味・使い方・例文・類語を解説

にほんご倶楽部

同じ読み方でも意味が異なる「辞める」と「止める」。その意味や使い方の違いを把握していますか? 今回は「辞める」「辞める」の意味の違いや使い方、例文、それぞれの類語について解説します。

ビジネスメールや文書・手紙を作成する時に、ふと「辞める」と「止める」で使い分けに迷ったことはないでしょうか。どちらも読み方が同じで、つい混同してしまいがちです。

ここでは、「辞める」と「止める」の違いを明らかにした上で、それぞれの使い方や類語を紹介していきます。いずれも社会人として覚えておくと役立つはずです。

「辞める」と「止める」の違いとは

「辞める」と「止める」は、どちらも「やめる」と読む同音異義語です。

「今あることから離れる」という意味合いは同じですが、内容やニュアンスが異なります。混同されがちな2つの言葉ですが、実際のところどのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、「辞める」と「止める」それぞれの意味に注目した上で、改めて言葉の違いをチェックしていきます。

「辞める」の意味は「職・地位を降りる」

「辞める」の意味は、以下の通りです。

やめる【辞める】
[動マ下一][文]や・む[マ下二]《「止(や)める」と同語源》職や地位から離れる。退く。「会社を―・める」「教師を―・める」
(小学館『デジタル大辞泉』)

「辞める」とは、今置かれている職や役職、地位を退くことを意味します。

「会社を辞める」というビジネスシーンではよく見られるフレーズに使われるのも、「辞める」の漢字です。そのほか、「辞職」や「辞退」といった言葉をイメージするとより分かりやすいでしょう。

「止める」の意味は「動作・行為を中止する」

次に、「止める」の意味を見ていきましょう。

やめる【止める】
[動マ下一][文]や・む[マ下二]
1.続けてきた状態・動作・行為をとめる。終える。「付き合いを―・める」「酒を―・める」
2.予定していたことをしないことにする。中止する。「旅行を―・める」
3. 病気や癖などをなおす。
「いみじう病み苦しがる…願立てなどして―・め奉りてけり」〈落窪・二〉
(小学館『デジタル大辞泉』)

「止める」には、「終える・中止する・なおす」といった3つの意味があります。

使い方や内容に応じて、1のように「今まで続いていたことを終わりにする」という意味や、2のように「これから起こることを取りやめにする」といった意味も表現できる言葉です。

3に関してはなじみが薄いかもしれませんが、「癖や病気などをなおす」といった意味も示せます。

上述だけでも数多くの意味があると分かりますが、「止める」は「やめる」以外に、「とめる」や「とどめる」とも読める言葉です。

読み方ごとにまた意味は異なり、「とめる」と読む時は「固定する」や「やめさせる・途絶えさせる」、また「とどめる」と読む時には「その場にさしとめる」といった意味を持ちます。

このように、「止める」にはたくさんの意味があるため、一通り覚えておくとビジネスシーンでも役立つでしょう。

「辞める」と「止める」の違いは「職」か「そのほか」

「辞める」と「止める」の違いを大きくまとめると、「会社や役職」などのポジションをやめることを指すのが「辞める」「そのほか」のことを表すのが「止める」ということです。

先述の通り、「止める」は「中止する」や「終える」など、多くの意味を持っています。読み方を変えると、「固定する」や「さしとめる」など、何かを物理的にとめることも示せる汎用性の高い言葉です。

意味の違いや使いどころに迷った時は、いわば「辞める=ポジションを離れる」と印象付けておくと、メールや文章で表現する時もミスを減らせるでしょう。

「已める」や「罷める」との違い

「辞める」や「止める」と同様に、「やめる」と読む同音異義語として、「已める」と「罷める」があります。

「已める」の意味

まず、「已める」には「終わりにする」という意味があります。「止める(やめる)」とほぼ同じ意味を持ち、今まで続いていたことに終止符を打つ表現として用いる言葉です。

「已む」という古語が元になっているといわれていることもあり、「已むを得ず」や「已む無く」といったフレーズでの使用にとどめておく方が賢明といえるでしょう。

「罷める」の意味

また、「罷める」は「辞める」と同様の意味を持つ言葉です。職・地位を退くことを意味するとともに、「退く」の謙譲語である「罷退」にもこの漢字が使われます。

「罷退」とは、位の高い人やその人の元からさがる意味を持っていますが、なじみの薄い漢字であるうえ、やや仰々しい印象を与えるため、上司や取引先に使うのは避けた方がいいかもしれません。

「辞める」をビジネスで使う時の使い方・例文

「辞める」は、主に職や地位を退く意味として用いるため、ビジネスシーンでは「自分もしくは誰かが会社・役職を離れる時」に使うのが一般的です。

ただし、「辞める」は敬語表現ではないため、上司など、目上の人が辞めることを表現する時には、工夫が求められます。

それでは、「辞める」の使い方を、例文を交えて見ていきましょう。

例文

「辞める」を、自分に当てはめる時は、そのままの表現で構いません。

ただし、目上の人に伝える時は、丁寧語の「ます」や「ました」などを使って丁寧に伝えましょう。相手からの許しを得ている場合は、「辞めさせていただきます」としても構いません。

また、上司や目上の人を指す時は「お辞めになられる」や「お辞めになる」といった、より丁寧な言葉遣いをするとスマートです。

・私は今期をもって、役員を辞めることになりました。

・先日お伝えした通り、今年いっぱいで教師を辞めさせていただきます。

・部長は来年、会社をお辞めになられる。

「止める」をビジネスで使う時の使い方・例文

さまざまなシーンに活用できる「止める」ですが、こちらも敬語表現が入っていません。上司や目上の人の行為を指す時は、「お止めになる」などの丁寧な表現に直すのが好ましいでしょう。

それでは次に、「止める」を使った例文をチェックしてみましょう。

例文

「終える・中止する・なおす」といった幅広い意味を持つ「止める」は、ビジネスシーンにおいても多岐にわたって使用できます。例えば、進めてきた企画を中断する時や、出張や会議の予定を中止する時などです。

さらに「とどめる」と読ませる時には、お客様の帰りを差し止めておくといった使い方もできます。一通りの使い方を習得しておきましょう。

・先方の意向で、来月の会議は止めることになりました。

・○○さんは健康のために、タバコをお止めになったそうですね。

・事情を説明して、帰ろうとしているお客さまを止めておきます。

「辞める」の類語

「辞める」の他にも、職や地位を退くという意味の言葉はいくつかあります。

ここではまず、「辞める」の類語を紹介しますので、シーンに応じて使い分けてみてください。

「辞職」

「辞める」と同じく「辞」が入った「辞職」とは、今までの職を自らの意思で退くことです。

自らの意思あるいは会社都合で職を離れる時は「退職」を使います。また、職ではなく、役職をやめる時は「辞任」が適しています。

「引退」

「引退」とは、「辞任」と同等、地位や役職から離れることを意味する言葉です。主に、スポーツ選手や部活でスポーツをする人たちが、一線を退く表現として使われます。

その一方、社内での地位を退くというビジネスシーンにも使われるため、覚えておきましょう。

「退陣」

「退陣」は字のごとく、軍隊を退かせることを意味する言葉ですが、「辞職」と同じ意味合いも持っています。

特に、重要なポジションから退く表現として用いられるため、社長や首相などが地位を離れる時は、「辞職」ではなく「退陣」を使うのも手でしょう。

「止める」の類語

たくさんの意味を持つ「止める」には、類語も数多くあります。

ここでは、「やめる」と読む場合の意味に焦点を絞り、「止める」の類語を見てみましょう。

「打ち切る」

「打ち切る」とは、今まで続いていたことを中止するという意味です。

名詞にすると「打ち切り」になり、「番組が打ち切りになった」などのフレーズは耳にしたことがあるのではないでしょうか。また、「強く切る」といった物理的な意味も持ち合わせています。

「断つ」

「断つ」というと、布などを切断するイメージがあるかもしれませんが、今まで続いていた物事をやめる・終わらせるという意味も持っています。

物事や行為だけでなく、関係性を終わらせるといった意味として使えるのも特徴です。

「終える」

「止める」を、最もシンプルに言い換えたのが「終える」ともいえます。字の通り、今まで続いてきたことを終わらせる・終わるといった意味を持つ言葉です。

「資料を読み終える」や「任された仕事をやり終える」などに使えて、ビジネス上でも活躍するでしょう。

「辞める」は「職・地位を退く」、「止める」は「中止・終える」

「辞める」と「止める」の違いは、「辞める」の意味さえ覚えておけば判断しやすいといえます。

職や地位を退く意味を持つのが「辞める」で、それ以外の物事を中止する時には「止める」を用いると覚えておきましょう。

また、「辞める」「止める」ともに、類語がいくつもあります。メールや文書・手紙などで表現に迷った時の候補にできるよう、こちらも併せて活用してみてください。

(にほんご倶楽部)

※画像はイメージです

※この記事は2023年08月25日に公開されたものです

にほんご倶楽部 (敬語・ビジネス用語専門編集プロダクション)

いつも使っているけれど間違った認識も多い「敬語」や「ビジネス用語」。人にはなかなか聞けない常識から応用編まで、日本語に関する情報を発信。

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