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この夏は大人の工場見学がアツい! キリンのウイスキー蒸溜所に行ったらウイスキー初心者もめちゃくちゃ楽しめた

【特集】やっぱり、夏が好き。

michika

長かったコロナ禍の外出自粛やマスク生活のせいで夏あそびを我慢してきた人も、今年こそ思いっきり夏を満喫できそうな予感です。「やっぱり、夏が好き。」誰もがそんな気持ちになれる夏あそびを紹介する本特集。今回は「大人の工場見学」をご紹介!

工場見学というと子ども向けに感じる人もいるかもしれませんが、実は大人だけしか楽しめない工場見学も各地にたくさん存在します。工場見学は楽しいだけではなく興味ある分野の知識が深まり、さらに外より涼しい……と、良いこと尽くめ。なかでも、お酒の工場見学はその代表! 普段飲んでいる銘柄なら、より好奇心が湧くこと間違いなしです。

今回は、御殿場にあるウイスキー工場「キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所」での工場見学を体験! 今回は特別に普段見学できない場所も見せていただき、大人だからこそ楽しめるお酒の工場見学で、知識欲を満たしてきました。

御殿場を拠点に、ウイスキーづくりを50年継続

キリンディスティラリー株式会社は、静岡県御殿場市にウイスキー工場「キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所」を構え、50年間ウイスキーを造り続けています。

ウイスキーを造るのに最高の環境と水を追い求め、行きついた先にあったのが御殿場市・柴怒田の地。熟成過程には適度な湿気と冷涼な気候が欠かせないウイスキーづくりにとって、この地は年平均気温13℃、1年を通じて幾度となく発生する霧と、ぴったりな条件がそろっているのです。

富士御殿場蒸溜所は、モルトウイスキーとグレーンウイスキーの両方を製造するだけでなく、仕込みからボトリングまで一貫して行っている世界でも稀な蒸溜所。2023年で創業50周年になる富士御殿場蒸溜所を記念し、JR御殿場駅・箱根乙女口のロータリーには、ウイスキー製造に使用してきた大型ポットスチル(蒸留器)が新たなシンボルとして設置され、市をあげてウイスキー産業の魅力を伝えています。

2022年10月まで実際に使われていた大型ポットスチル

まずはシアター鑑賞。大迫力のプロジェクションマッピングに圧巻!

蒸溜所に入って、初めに案内されたのはシアタールーム。ここでは、全長約12メートルの大迫力シアターによるプロジェクションマッピングで、富士御殿場蒸溜所の魅力や造り手の想いを存分に感じられます。

上映中は、プロジェクションマッピングを活用したユニークな演出も! 一杯のウイスキーが私たちに届くまでの過程が、ユーモアにあふれた演出とともに分かりやすく紹介されています。

原料は厳しい基準をクリアにした良質なものだけ

富士御殿場蒸溜所では、麦芽のみを原料とした「モルトウイスキー」と、麦芽以外の穀類を主原料としている「グレーンウイスキー」の2種類を製造しています。

実は、モルトウイスキーとグレーンウイスキーの原酒両方を造ることができる蒸溜所は、世界的にも稀なのだそう。アメリカやカナダなど、世界中から原料を調達し、多様な原酒を造っています。

見学ツアーでは、実際に使用されている原料や、今に至るまで品質を保ち続けることができている理由の一つである“厳しい基準”についても知ることができます。

ウイスキーの品質は「仕込み」から始まる!

ウイスキーは仕込みから始まります。キリンディスティラリーが理想に掲げる「クリーン&エステリー(※1)」なウイスキーを仕込むための仕込釜を使い、富士の伏流水と原料を混ぜ合わせ、麦芽、もしくは穀類の酵素の力で糖化させます。

グレーンウイスキー用の仕込釜

原料の使い分けや、原料による最適な仕込み条件を設定するのはプロにしかできない技術。長年積み上げた技術や知識、経験でそれぞれの原料の香りと味が引き立つよう、仕込みを行っているとのこと。

仕込みの段階からウイスキーの品質が左右されるなんて……! と目から鱗でした。

※1:キリンディスティラリーが目指す「澄んだ味わいの中に広がる果実や花を想わせる香りと味わい」のこと

発酵は香りや味わいを引き立たせる重要なステップ

ウイスキーの香りや味わいを十分に引き立たせるには、発酵も重要なステップ。糖化された麦汁は冷却した後に酵母タンクに送り込まれ、ウイスキー酵母を加え、発酵させます。

モルトウイスキー用の木桶発酵槽

酵母は糖をアルコールに変えるだけでなく、香味成分を生成する役割としても重要。富士御殿場蒸溜所では、従来のステンレス製タンクに加え、木製タンク(木桶発酵槽)を新たに導入し、多彩な味わいを実現しています。

モルトウイスキー用の木桶発酵槽では、酵母だけでなく木の表面に住みついた乳酸菌の力も利用し、発酵させるのだそう。そのため、乳酸菌を殺さないよう、洗剤を使った洗浄を行わないのだとか。こういったプチ裏話を聞けるのも、工場見学の醍醐味ですよね!

そして蒸留。キリンならではの3つの蒸留方法は世界的に希少

一般的なウイスキーづくりの蒸留(※2)は、主に2つの方法によって行われますが、富士御殿場蒸溜所では4つの蒸留方法を採用しています。

モルトウイスキーでは銅製のポットスチルを使用。発酵液を蒸留釜に入れて熱し、蒸気となった成分を冷却器で冷やして、ウイスキーのもととなる蒸留液ができます。

モルトウイスキー用の蒸留器「ポットスチル」

グレーンウイスキーの蒸留には、一般的とされるマルチカラムに加え、ケトラとダブラーという蒸留器も使用しています。個性の異なる蒸留器を3つも稼働させている蒸溜所は、世界的にも非常に稀なのだとか。

グレーンウイスキー用の蒸留器「マルチカラム」

ちなみにケトルとダブラーは、日本では「キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所」にしか存在しません。キリンが世界五大ウイスキーのうち4つ(※3)をカバーしている理由は、まさに蒸留器にあるのです。

※2:発酵させた液体からアルコールを分離し、アルコールを濃縮させること
※3:世界五大ウイスキーのうち、「スコッチウイスキー」「アメリカンウイスキー」「カナディアンウイスキー」「ジャパニーズウイスキー」をカバーしている

樽詰め、熟成へ。長い眠りにつき、目覚めの時を待つ

いよいよ見学ツアーも終盤へ。ウイスキー造りの要となる熟成は、単に蒸留液を樽に詰めて放っておくことではないのだそう。

実際、樽詰めの段階では液体はまだ透明色。琥珀色のウイスキーに仕上げるには、樽の内側を焦がす必要があるのです。

ウイスキーが琥珀色である理由は、樽の材質が含む成分や、樽を焦がすことにより変化した成分が溶け出し、ウイスキーの成分と反応するから。ちなみに、ウイスキー樽の内面を焦がすことを「チャー」と呼びます。

焦がすといっても、焼き方によってバニラ香やスパイシーさの強弱が変わるため、「焼き具合」も重要なポイントです。また、新樽や、古樽とよばれる何回かウイスキーの熟成として使い込んだ樽をあえて使うなど、樽の使い分けによって熟成のさせ方も変えているのだそう。奥深すぎる……!

アルコール度数や樽の種類の組み合わせを決めたら、樽詰めし、熟成庫へ運ばれます。

熟成庫に入ると、一気に目が覚めるような強烈なアルコールの香りが……! 香りだけで、数十分もすれば酔っぱらってしまいそうでした(笑)。

熟成庫は全部で4つあり、1つだけでも数万のウイスキー樽を保管することができるそう。20年、30年先の未来への想いを込めて詰められた蒸留液は、長い眠りにつきながら少しずつ琥珀色に染まるのです。

工場見学後に飲むウイスキーは格別!

お酒の工場見学のクライマックスは、何といっても試飲ですよね。キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所でも、見学ツアー後はウイスキーを試飲できます。

提供画像

試飲ができるのは、「キリン シングルグレーンウイスキー 富士」と「キリンウイスキー 陸」の2種類。富士はストレート、陸はハイボールで楽しめます。

ちなみに、富士御殿場蒸溜所・洋酒生産部の長藤健太さんによると、ウイスキー初心者におすすめなのは「キリンウイスキー 陸」とのこと。飲んでみると、喉をスッキリと流れるような爽やかな風味で、ウイスキー初心者の私でもゴクゴク飲めてしまいました!

試飲の時間では、ウイスキーが完成するまでの一つひとつの工程を目の当たりにしたからこそ味わえる、奥深い風味やまろやかな口当たりを感じることができます。

ウイスキーのプロが教える!美味しいハイボールの作り方

せっかくウイスキーを飲むなら、おいしく飲みたいですよね。富士御殿場蒸溜所・洋酒生産部、部長代理の長藤健太さんに、「キリンウイスキー 陸」を使った、自宅で作れるおいしいハイボールの作り方を教えてもらいました。

<作り方>
(1)グラスに氷を入れ、冷えた「キリンウイスキー 陸」を適量、氷の上から注ぎ入れる
(2)マドラーでグラスに水滴がつくまでかき混ぜる。この時、温度を下げたり、炭酸が逃げたりしないようにする
(3)炭酸水をグラスの内側をつたうように静かに注ぐ
(4)グラスの下部からゆっくりと2回ほどかき混ぜる(混ぜ過ぎない)

長藤健太さんによると、事前に「キリンウイスキー 陸」のボトルを冷凍庫で氷点下まで冷やしておくとおいしく仕上がるとのこと。家庭用冷凍庫(-18℃くらい)であれば、アルコール度数の高いウイスキーは凍らない(※4)ので、常時入れておいてもいいかもしれません。

※4:缶入りハイボールなどは凍結・破裂の危険がありますのでご注意ください

大人の工場見学は、ぜひお酒から!

今回、初めてお酒の工場見学に行ってみましたが、正直こんなにも興味を惹かれるとは思っていませんでした……!

工場見学の醍醐味は「裏側を覗けること」ですが、酒造の裏側はとにかく奥深い。一つひとつの過程に膨大な時間をかけているだけでなく、原料や蒸留方法を微妙に変え、味わいの違いを出しているなんて、追求心がなければできないことだと痛感しました。この夏はハイボールやストレートでウイスキーを楽しみたい!

大人の工場見学は、ぜひお酒から。「キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所」では、一人500円(20歳以上の方 ※19歳以下無料)で見学ツアーに参加できます。ワンコインでウイスキーづくりの裏側を覗けて、試飲までできるなんてお得すぎる! ぜひ、休日のお出かけ先に選んでみてくださいね。

※本記事に掲載した内容は通常ツアーの内容とは異なります。

(取材・文:michika)

※この記事は2023年08月08日に公開されたものです

michika

1995年生まれ、フリーライター・編集。ファッション誌の編集やweb制作を経て、現在はライフスタイルや恋愛、ビューティ、スピリチュアルなど女性向けの記事をメインに活動中。最近はトラベルライターとして旅行に関する執筆も。激辛好きで、占いもできます。

Instagram:@michikamori
Twitter:@negitoroebikura

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