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「幸多からんことを」の意味とは? 使い方・例文を解説

にほんご倶楽部

入社式や結婚式などのスピーチで耳にする「幸多からんことを」という言葉。その意味や使い方を理解していますか? 今回は「幸多からんことを」の使い方や言い換え表現について、例文付きで解説します。

「幸多からんことを」というフレーズは、結婚式などのおめでたい席や卒業式・入学式、入社式などの門出に際して使われます。

この記事では、「幸多からんことを」の使い方について、例文を交えながら説明します。言い換え表現や注意点に関しても解説するため、ぜひチェックしてみてください。

「幸多からんことを」の意味とは

「幸多からんことを」は「幸せが多いであろうことを」、つまり「幸せがたくさんありますように」という意味の言葉です。

「多からん」の「ん」は、「知りません」のような否定の意味だと思いがちですが、そうではありません。

「多からん」の「ん」は推量の意味であり、推量の助動詞「む」の転で、「多かろう」というニュアンスになります。

「幸多からんことを」の使い方と例文

かしこまった席のスピーチなどではよく使われる「幸多からんことを」ですが、日常会話で使われることはほとんどない表現です。

実際のところどのようなシーンで使われるものなのか、どのような意味合いで使われるのか、きちんと理解している人は意外と少ないかもしれません。例文を見ながら改めて確認していきましょう。

入社式で使う場合

ビジネスにおいて「幸多からんことを」を使う場面といえば、入社式ではないでしょうか。

入社式は新入社員にとって、本格的に働き始める人生の大きな節目。入社式では、社会人として新たな一歩を踏み出す新入社員に対して、社長や先輩社員などからお祝いの言葉として「幸多からんことを」を含めた挨拶が贈られます。

例文

・新入社員の皆さん、入社おめでとうございます。皆さんと一緒に働けることを、社員一同楽しみにしていました。これからの社会人生活に幸多からんことを願い、お祝いの言葉といたします。

卒業式で使う場合

「幸多からんことを」は、卒業する生徒たちの未来の幸せを願う、お祝いや門出の言葉としても使われます。

例文

・皆さん、ご卒業おめでとうございます。本校での学びを糧に、夢に向かって一歩ずつ進んでいかれることを願っています。皆さんの輝かしい未来に幸多からんことを。

上記の例文のように、「幸多からんことを」は、文末に熟語がない状態で使われることもあります。「幸多からんことを」の後には「祈る」や「願う」などの動詞が省略されていると考えましょう。

結婚式や出産祝いのシーンで使う場合

「幸多からんことを」は結婚式や子どもが生まれたなどの慶事のシーンでも、お祝いの言葉として使われます。

先輩や同僚などの結婚式に出席した際に、聞いたことがある人もいるかもしれません。おめでたいことがあった人を心からお祝いし、幸せを願うのにぴったりの言葉です。

例文

・ご結婚おめでとうございます。お二人の新たな門出に幸多からんことを願っています。

・このたびはお子さんのご誕生おめでとうございます。○○ちゃんとお父さん、お母さんのこれからの人生に幸多からんことを遠くからお祈りしています。

「幸多からんことを」を使う時の注意点やポイント

「幸多からんことを」は相手の幸せを願う言葉ですが、普段あまり使う言葉ではないため、使い方を自然と身につけるのは難しいでしょう。

ここでは、「幸多からんことを」にまつわる注意点やポイントを確認していきます。

目上の人に対しては使わない

「幸多からんことを」という言葉は敬語ではないため、目上の人に対しては使用しない方が無難です。

目上の人に対しては「幸多からんことをお祈り申し上げます」「幸多からんことを願っております」と敬語表現を加えて使うのがベターです。

返事をする場合は「ありがとうございます」とお礼を伝える

あなたが「幸多からんことを」とお祝いの言葉をかけてもらったら、どのように返答したらよいでしょうか。

人が自分の幸せを願ってくれるのですから、ありがたいことです。そのため、まずはストレートに「ありがとうございます」「感謝いたします」とお礼を伝えましょう。

メールや手紙などの文面では「感謝申し上げます」とより丁寧な表現を使うこともできます。

「幸多からんことを」の類語・言い換え表現

「幸多からんことを」という言葉は、いくつかの言葉で言い換えられます。意味はほとんど同じですが、表現のバリエーションとして知っておくと役立つでしょう。

「幸あらんことを」「幸あれと」

「幸多からんことを」は、「幸あらんことを」や「幸あれ」で言い換えることができます。どちらも、「幸せがあることを(願っている)」という意味になります。

ただし、「幸多からんことを」と同じで、「幸あらんことを」「幸あれと」のどちらも敬語ではありません。結婚式などのお祝いの席で目上の人が「お二人に幸あれ!」と挨拶することはあっても、目上の人に「幸あらんことを」「幸あれ」をそのまま使うのは不適切です。

「幸あらんことを祈っています」「幸あれと願っています」のように、「ます」をはじめ、丁寧語などの敬語表現をつけた形で使うようにしましょう。

「幸多き」

「幸多き」は「幸せの多い」という意味です。「幸多き人生」「幸多き一年」「幸多き未来」などのように、名詞を修飾する形で使用します。

こちらも、「幸多き」自体に敬語は含まれていません。目上の人に使用する時は、丁寧語などの敬語を組み合わせる必要があります。「幸多き人生を祈っています」や「幸多き一年になりますよう願っています」とすると、丁寧に祝福の意を示せるでしょう。

「幸多からんことを」は相手の幸せを願うお祝いの言葉

「幸多からんことを」は、卒業式や入社式、結婚式など、人生の節目となるおめでたい場面で、相手の幸せを願って使われる言葉です。

ただし、このフレーズ自体は敬語ではないため、目上の人に使う場合には「幸多からんことを祈念いたします」など敬語表現を加えるようにしましょう。

言われるのはもちろんうれしいですが、人の門出をお祝いするのもまたよいものです。あなたが「幸多からんことを」を使う日は、意外と早くやってくるかもしれません。その日のために、使い方をマスターしておきましょう。

(にほんご倶楽部)

※画像はイメージです

※この記事は2023年05月11日に公開されたものです

にほんご倶楽部 (敬語・ビジネス用語専門編集プロダクション)

いつも使っているけれど間違った認識も多い「敬語」や「ビジネス用語」。人にはなかなか聞けない常識から応用編まで、日本語に関する情報を発信。

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