お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

数学が得意ではない方が幸せ! WINSデビューレポート

#にわか競馬女子

いくえちゃん

「競馬場=おじさんの遊び場」ってイメージはもう古い? この連載では、競馬をにわかにかじり始めたライターいくえちゃんが、初心者女子でも競馬観戦を楽しむポイントを教えます!

みなさん、こんにちは。にわか競馬女子のいくえちゃんです。

ここでたらふく蘊蓄を述べてきた私ですが、すべて机上の空論で、1人で馬券も買えない、いわゆる知ったかぶりの頭でっかちでした。そこで今回は、競馬場にでかけなくても競馬が気軽に楽しめるWINS(ウインズ)を実際に体験。馬券の買い方をはじめ、WINSについてレポートします。

ちなみに、実際に馬券を購入するということは、もう「おとなの遊び」に足を踏み入れるわけで、理性が大切です。そこで最初から「今回の軍資金、つまり馬券を買うための金額は3,000円」と決めました。それ以上はつぎ込むまいと。

実は私、ハマるタイプ。事前に決めておかないと、お財布を見たら諭吉先生をはじめ、一葉ちゃん、英世くんといった面々が、だれもいなくなる可能性もあるのです。ちょっと少ないのではと思われる方もおいででしょうが、そこには自分の収入との相談です。

デビュー戦はWINS汐留

突然ですが、東京に「イタリア街」というのがあるのはご存知でしょうか。しかも、お父さんの街、新橋の端といいますか、日テレやソフトバンクがあるビジネス街、汐留の端といいますか、まあそんなところにあります。路面は石畳、消防署だってなんだかオシャレ。テレビで見たことありそうな風景が並びます。そして、そこにWINS汐留はあります。

手指の消毒を済ませ、「初めまして!」と元気よく中へ。まずはここでどう過ごすのか、入口左にある総合案内で聞かねば……。オシャレな石畳を歩きながら、優雅な時間を想像して、気分はかなり盛り上がってきました。

案内には女性が2人。初めての私にも「なんでも質問してくださいね」と満面の笑顔で対応してくれます。「なにを質問していいのかさえも分かりません」と、口を尖らせている私にも丁寧です。「あのー指定席に座りたいのですが」と優しく説明する女性の話を割って質問すると、「申し訳ありません、すでに満席です」との回答。

1階のフロアにいるのは、WINSの人と私だけと人は少ないのに、550席近くあるエクセル席(有料指定席)が満席なんて、と驚く私に、「今、コロナ禍で、半分しか入れていないのですよ」と返してくれました。そして「指定席は14時までの販売です」とも。いつものように朝10時に起床、ゆっくり朝食を食べて、軽く掃除なんかして、とのんびり休日を楽しんでいる場合ではなかったと深く反省をしました。

案内の方からいただいたマークシート数枚と冊子を手に、馬券が買える3階に足を踏み入れると、そこにはマークシートの記入に勤しむ、かなりディープそうなおじさま20名ほどと、案内のおじさまが10名ほどおいでになりました。

ここも案外、人が少ないのですが、そもそも出遅れてしまっているのは私の方です。どうしたらいいのか、途方に暮れている私。制服姿の案内のおじさまに「教えてください」と声をかけると、私が手にしていた「RACING PROGRAM(出馬表)」を「ちょっといいかな」と広げ、冊子の見方、マークシートの書き方など、ささやかな笑顔で、分かりやすく教えてくれます。それにしてもマークシートなんて、大学受験以来だ!

競馬新聞を熟読しながらマークシートに記入しているおじさま方に混じり、「RACING PROGRAM」で、初めての予想を立てる私は、新聞の情報もWebの情報も見ない、と決めていました。そうです、私の予想の情報源は、前回のコラム執筆の際に自分で作成したイケメンリストです。

まずは正統派イケメン「丸山元気騎手」に1票。このコラムの第2回で自分が執筆した馬券の種類の表を確認しつつ、「あれ、これ見やすいわ」と小さな声で独りごちて、複勝と100円にマーク。あとは若手の「菅原明良騎手」、ここはイタリア街なので「ミルコ・デムーロ騎手」へ1票ずつ。まあ、そんな感じで、その日投票できる3レースを3枠、全て100円複勝で、合計で900円分を購入。ただ、現在WINSでは指定席以外でレースを見ることができません。そのため、そのまま帰宅です。

リベンジ戦、WINS後楽園

WINS汐留のあっけないデビュー戦を反省し、翌日出直すことにしました。ところが翌日は競馬では一番価値があるとされるG1レース、フェブラリーステークスの開催日。Webなどの情報によると、朝8時に始まる指定席購入整理券を配布する行列に並んでいないと、指定席をゲットできない可能性が高いといいます。

コロナ禍のせいで、毎日8時起床のお寝坊生活を送る私には、早朝の起床は大きな試練。しかし、リベンジ戦は必ず指定席を確保する必要がありました。そこで6時に起床、6時30分には出発することとしました。ただし、向かうはWINS後楽園。なにぶん、WINS汐留はどこの駅からも遠くて。背に腹はかえられません。

8時前にWINS後楽園に着くと、やはりたくさんのおじさまたちがお並びになっておいでです。ここで初めて、WINSにおいでになる方々の傾向を理解、女子が稀有な存在であることを実感しました。なにぶん、早朝からお集まりの方々が私を2度見します。列に並ぶ、ほぼグレーヘアなおじさま方は、WINS後楽園の殺風景な室内に溶け込んでおいでで、原色のコートをきている私は目立つのでしょう。

1,500円を支払い、たばこ部屋から遠く、遠慮気味に後ろの席を選択すると、手首にピンクの「ウインズ後楽園」と書かれたテープを巻かれます。出口には案内係のおじさまが親切にも「9時20分になったら入れますからね、今買った席は、今日はあなたの貸切です」と声をかけてくださいます。まあ、液晶テレビがついた、デスクひとつだけだけど、とりあえず、そこは私のスペースです。

マックで朝食して、エクセルシートルームに向かい、まずは昨日の勝敗を確認。またも案内係のおじさまに払戻機の使い方を教えていただき、「なんだ、ここに入れるだけか」となぜか毒を吐きながら、差し込み口に馬券を入れると、戻ってきたのは170円。全ての払い戻しを終えたところ、900円が280円にかわりました。ゆるーく当てにいったのに、当たったのはこれだけだけか。イケメン予想はダメなのか、と自信をなくしてしまうのでした。

WINS後楽園、エクセルシートは案外静か

WINS汐留で帰りに買った馬の絵柄のガマ口に、軍資金の残り2,100円を入れ、いざ出陣です。前日同様、「RACING PROGRAM」と自作のイケメンリストを参考にしながら、レースを予想します。「今日はシーズンの勝利数が最も多い、イケメン川田将雅騎手を中心に」と心に決めました。

5レース、7レース、9レースに投入した金額は全部で1,100円。予想したとおり、川田将雅騎手ががんばってくれました。「ナイス! 川田将雅騎手」と、ハイタッチしたくなりますが、川田将雅騎手はモニターの中です。

WINS後楽園では、東京だけでなく、阪神、小倉のそれぞれの競馬場の様子もモニターで見ることができます。そのため、モニターでは3カ所のレースが順番に映し出されていて、ずっとレースが流れている感じです。朝の早い時間は静かだった室内も、レースの数が重なるごとに、ため息やつい無意識に出る「あー」という声で盛り上がってきます。

また、馬券の発券機で並んでいると、奇声を発するおじさまがいたり、マークシートの記載漏れをすると、機械の横から「これで修正してください」の声とともに鉛筆が出てきたりして、想像を超える出来事に出くわします。

でも、その場にいる競馬ファンのおじさま方は、まったく動揺せずにお過ごしです。それどころか、多くの競馬ファンのおじさまの机の上には、受験生ばりにマーカーがひかれた競馬新聞が広げられていて、図書館のような雰囲気も感じられます。しかもシートの座り心地は図書館どころか、自宅の仕事用椅子よりもずっとよく、できれば、毎日、ここで仕事したいくらいです。

そして、はじめに予想した3つのレースを確認した後は、いよいよ東京11レース「第39回フェブラリーステークス」予想に入ります。なにぶんG1ということで、購入した馬券の額は特別に合計で1,000円。「川田将雅騎手」を含め、昨日がんばりを予想できなかった「ミルコ・デムーロ騎手」や「菅原明良騎手」、また、ベテラン勢「武豊騎手」、「福永祐一騎手」にも希望をつなげます。

レース直前、騎手を乗せた馬の様子がモニター画面に映し出されるのですが、これがデビューしたばかりの私の心を揺さぶります。とても元気なやつ、軽快なリズムを刻んで気持ちよさそうに歩くやつ、下を向いて歩いているやつ、「えー、走るの? まじか」なんて思っていないよね、「今日は走り抜けたい」とか思っているかな、と勝手に馬気持ちを読んでしまうと、「大丈夫か、私が投票した馬よ!」と叫びたくなります。

「ほろ苦デビュー」だった

レースが終わり、モニターの向こうでは福永祐一騎手が手を振っています。なんだか訳がわからないままに終わったレースですが、福永祐一騎手が1位。めでたく当てることができ、なんだかホッとしました。私も勝ったのです。

払戻機の混雑を避け、少し時間を置いてから、当日投票した馬券が当たっているのか、1枚ずつ確認するのが面倒だったので、とりあえず全てを払戻機に投入します。当たっていれば、その馬券は払戻機に回収され、当たっていなければ手元に戻ってくるので、全部入れても問題なしです。

すると、なぜか投入した馬券の多くは払戻機から私の手元に返されます。「今日は川田将雅騎手ががんばっていたはずなのに」とか「福永騎手、当てたのに」とか、頭をよぎりました。2,100円は結局、720円にかわりました。つまり前日からのものと合わせると、3,000円は1,000円にかわったことになり、マイナスということになります。

ただ冷静に考えれば、3,000円が1,000円って、宝くじくらいのリターン率ですから、意外と割がいい気もします。まあ、1/3でも戻ってきただけいいかと思うと気が楽になります。

1日であまりにたくさんの新しい経験をしたせいか、珍しく館内で迷子になった私を、案内係のおじさまが出口まで案内してくれました。その優しさに感激してしまい、「今日はWINSデビュー戦だったんです、3,000円が1,000円になりました」と自慢したところ、「3,000円が1,000円?」と聞き返した上で、おじさまが私にかけた言葉は「それは、ほろ苦デビューでしたね」。「え? それってやっぱり、ほろ苦だったの?」

冷静になって計算する必要はないかもしれない

よく考えれば、川田将雅騎手は1人しかおらず、川田将雅騎手がどんなにがんばっても1〜3位を独占することはあり得ません。つまり、川田将雅騎手に投票したといっても、それはあくまで1,100円のうちの300円。あとの800円は川田将雅騎手以外の、私のお気に入り騎手たちに投票しているのであって、その騎手たちが3位以内に入ってくれなければ、大きなリターンは望めないのです。

フェブラリーステークスについても同じで、1,000円のうち、福永祐一騎手に投票したのは100円分。残りの900円は他の騎手たちに投票している訳ですから、900円分は、2位にも3位にもならなかった騎手に投票していたことになります。

幸いあまり数学が得意ではないので、深く考えないようにすることにしますが、やっぱり「ほろ苦デビュー」。高校時代の、みごとに外しまくった英語のマークシートのテストを思い出し、これもある意味、私の才能かと思うのでした。

(文:いくえちゃん、イラスト:ユリコフ・カワヒロ)

※この記事は2022年02月28日に公開されたものです

いくえちゃん

ラグビーとサッカーが大好き。自分はイタリア人だと思っている。並外れたコミュニケーション力と積極性が魅力であり、欠点。

この著者の記事一覧 

SHARE