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「あしからず」の意味と失礼にならない使い方

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「あしからず」を使う際の注意点

前段で紹介した内容からも分かる通り、「あしからず」は、自分から失礼なことや悪いことをしたわけではなく、あくまで相手の意向に添えず申し訳ないという気持ちで使います。

「あしからず」が使えない場面

例えば、次のような場面では使えません。

・約束していた日時の変更を自分から願い出る時
・待ち合わせの時間に遅れそうな時
・得意先への納品が間に合わない時
・納品する製品の品質に問題がある時

いずれも、自分側に問題がある場合なので、「悪く思わないでください」という意味の「あしからず」を使うには身勝手過ぎます。

失礼なことや悪いことをしてしまった場合には、相手が誰であっても「あしからず」は使わない方がいいでしょう。

目上の人に対しては使わない方が無難

国語的に、目上の人に全く使えないわけではありませんが、実はこの点が微妙で、簡単に線引きできないところです。

「悪く思わないでください」と一言で伝えられる言葉は珍しいので、使えるなら使いたいところです。

しかし、うがった見方をすれば、「悪く思わないでください」とあらかじめけん制しているのですから、「それを言うことで相手ががっかりしたり、感じが悪いと思ったりするかもしれない」と予測しているわけです。

「あしからず」という言葉をなんとなく失礼なニュアンスに感じる人がいるのも、この辺りに原因があります。

線引きが難しい場合は、お誘いや申し出を受けて、「悪く思わないでください」と言える相手はどんな人かを考えてみましょう。

人によって多少違いがあるでしょうが、後輩、部下、同僚、気心の知れた友人、といったところでしょう。目上の人でいえば、かなりフランクに話せる相手に限られるはずです。

また、ビジネスの基本は相手の意向に添うことだと考えれば、社内でのやりとりならともかく、社外の相手に対して返事をする場面では、慎重であるに越したことはありません。

少なくとも、普段から配慮を要する相手や、付き合いが浅くて気心の知れない目上の人などに対しては、「あしからず」以外の言葉を選ぶ方が無難だといえます。

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