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「#夢月メイク」を新ジャンルに。ヘアメイクアーティスト夢月さんの場合 #コスメ垢の履歴書

#コスメアカの履歴書

ひらりさ

コスメを偏愛する「コスメオタク」が増えている。中でもTwitterの「コスメ垢」は、よりディープな情報発信の場として話題。この連載では、ライターひらりささんがいま気になるTwitterコスメ垢にインタビュー。彼女たちのおすすめアイテムや美容愛、さらには人生までをも覗き見ます。

同人サークル「劇団雌猫」所属の美容オタクライターひらりささんが、いま気になるTwitterコスメ垢の実態を探る連載「コスメ垢の履歴書」

今回は、ハッシュタグ「#夢月メイク」で話題の、ヘアメイクアーティスト・夢月さん(@_dreaMoon__)にインタビューしました。

女子アイドルへの愛から、ヘアメイクの道へ

――ヘアメイクアーティストとして活躍し、初のメイク本『今日の顔、なんかいいかも!“かわいくなる”をあきらめない夢月メイク』を刊行したばかりの夢月さん。SNSはいつはじめたのでしょうか?

Twitterは2016年6月、Instagramが2018年8月ですね。専門学校で勉強しているときに開設しました。

――すでに「#夢月メイク」を確立している夢月さん。ずっとヘアメイクの仕事をしたくて現在の道に?

それが違うんですよ。最初は「女子アイドルの衣装が作りたい!」と思って、服飾学校を選んだんです。デザイナー・東佳苗さんのハンドメイドニットブランド「縷縷夢兎(るるむう)」に憧れていて、ニット科に入りました。

ただ……学んでいるうちに、私は、自分が今かわいいと思っているブランドと同じようなものを作るのではなくて、縷縷夢兎(るるむう)を着た女の子に合うヘアメイクをやりたいんじゃないかと考えるようになったんですね。

それで、基礎的な技術を学んだところで服飾学校から美容学校へ転向しました。

――そうした進路変更はありつつも、「女子アイドルが好き!」というところがずっと根本にあるんですね。

そうなんです。現場に通うようなタイプではなかったんですが、ずっとアイドルが好きで、「この衣装かわいいな」「このヘアメイクかわいいな」と眺めていました。

SNSアカウントでは、誰でも実践しやすいメイクテクニックの紹介を心がけています。「指原莉乃さんがツイートしていたグラデーションリップ、こんなプチプラコスメでもできるよ」とか。コツコツ情報発信していたら、拡散されるツイートも出てきて、フォロワーが増えました。

そこから女性向け動画メディアの「C CHANNEL」でヘアメイクのお仕事をいただけるようになり、モデルやアイドルの方と知り合ううちにお仕事が増えてきて……という感じですね。

ヘアメイクの現場。コスメがたくさん!

——着実に夢をかなえている! ヘアメイクさんって、有名な人の弟子について下積みをして独立するイメージがあったので、それも意外です。

私も「どういうキャリアを歩むべきかな」と、進路に悩んでいた時期はあるんです。でも尊敬するメイクアップアーティストであり、学校でもとてもお世話になっていた松井里加さんに相談したら「やれるところまでやってみたらいいんじゃない?」と背中を押してくださって。

おかげさまで「実は前からTwitterを見ていて、夢月さんにヘアメイクを頼みたかったんです」と、アイドルの方が指名してお仕事をくださるようになったので、まずはひとりでやってみようと頑張ってます。

先日は雑誌の『S Cawaii!』で、ずっとファンだった元AKBの小嶋真子さんのヘアメイクを担当することもできました!

現場のメイクは「相手との共同作業」

――夢月さんご自身とコスメとの関わりは、いつ頃からなんでしょうか。

中学の頃から『Popteen』や『ViVi』などのファッション誌を読んでいたので、自分もメイクしてみたいなあとは思っていましたね。でも、あまり都会の出身ではなく、「中学生からメイクなんて……」という土地柄で育ったので、しばらくは我慢していました。

初めてコスメを買えたのは高校入学のとき。キャンメイクで一式揃えました。

――キャンメイク、ティーンの味方ですね。

BBクリームに、マシュマロフィニッシュパウダーに、マスカラに、ビューラーに……。本当に全部キャンメイクで買いましたね。小さい頃から絵を描くのが好きだったからか、始めたらすぐに楽しくなっていきました。

そういえば文章を書くのも得意だったから、それはTwitterに活きているかも。他の教科は全然だったんですけど(笑)。

――夢月さんの色彩センスがオリジナルで素敵だな、と思っていたので、「絵が好きだった」と聞いて納得しました。

アイテムを紹介するときも「自分らしい色味」というのは最初から意識していましたね。結果、「#夢月メイク」といえるメイクが確立してきたなと思います。

――普段は、月にどれくらいコスメを買いますか?

仕事で使うものはいろいろ揃えているんですけど、自分のコスメは、実はそんなに買わないんです。プチプラはよくチェックしていますね。最近のヒットは、THE PUBLIC ORGANICのリップ。全色ゲットしました!

ただ、そもそも小さいカバンが好きなので、ポーチを持ち歩かないこともあるんです。いつも持ってるのは、リップ1本と、innisfreeのノーセバムパウダーくらいですね。innisfreeはコンセプトがしっかりされているし、一つひとつのアイテムが洗練されているので、とても好きです。

左から
・シュウウエムラ ルージュ アンリミテッド
・innisfree ノーセバムパウダー

——本当にコンパクト!

1日現場にいるようなときは、もう少し細々したものが増えます。自分にもモデルさんにも使える日焼け止めとか、ウェットティッシュとか、スプレーとか。どっちにしても、平日はベースメイク、マスカラ、簡単なリップだけのことが多いです。

あ、休日はいろんなメイクをしてます。服に合わせたり、トレンドに合わせたり。

——現場でのメイクで心がけていることはありますか?

そうですね。相手の「自分ルール」を何かひとつは取り入れてあげたいと考えています。

——自分ルール?

ノーズシャドウは自分で入れたいとか、涙袋の影を描きたいとか、下唇の影を消してほしいとか、アイラインはここまで下げたいとか……。

自分でメイクをするときに持っている細かいこだわりをヘアメイクさんには言えず反映できないままになってしまい、結局仕上がりが盛れてなくて落ち込む、ということが結構あるみたいなんですね。

——なるほど!

なので、私はできるだけ、本人の意見を聞きながらメイクするようにしています。専属でやらせてもらっている、アイドルグループ「ZOC」の戦慄かなのちゃんのヘアメイクは、もはや共同作業です。「こことこことここは私がやるから、こことここはかなのちゃんお願いします」みたいな。

——素敵な関係ですね。戦慄かなのちゃん、デビュー時からどんどんかわいくなっていってるなあと思っていました。

「見られる」と、女の子って本当にかわいくなるんだと思います。

メイクで人生変わった、どころじゃない

——書籍『今日の顔、なんかいいかも!“かわいくなる”をあきらめない夢月メイク』のタイトルにも“かわいくなる”という言葉が入っています。

担当編集さんと一緒にタイトルを決めるために、大事だと思うワードを列挙していったのですが、その中で残ったものですね。この本を読んだすべての方に、もっと自分のことを好きになってもらいたいなと思って、入れました。

アイドルのみなさんと接していて思うのですが、100人が見たら100人がかわいいと思う子であっても、どこかしらにコンプレックスがあるんですよ。自分のことを自分でかわいいと認めるのって、なかなか難しいんですよね。

だから、四六時中は厳しいけど、メイクした瞬間くらいは「いいかも!」と思えるお手伝いをしたい。

——そういえば夢月さんは、一般の方へのメイクレッスンもやっていますよね。

はい。不定期に少人数向けでやってます。最初、めちゃくちゃ緊張している人もたまにいるんです。でもしゃべりながらメイクをしていくと緊張がほぐれていって、「かわいくなってる!」「この顔で好きな人とデートしたい!」なんて言ってくれるようになるんです。

——すごく素敵です! 今後の目標はありますか?

まだまだヘアメイクアーティストとしての仕事を始めたばかりですけど、「イガリメイク」「河北メイク」のように、「#夢月メイク」を“ジャンル”にしていけたらいいなと思っています。

コスメで人生変わったどころじゃなくて、コスメがもう私の人生。死ぬまで一緒だし、これが一生の軸だと思うので、頑張りたいです。

コスメ垢「夢月」さんの履歴書

INFORMATION

『“かわいくなる”をあきらめない夢月メイク』

今一番バズるヘアメイクアップアーティスト夢月、初のメイクブック。ビギナーにもわかりやすい、「圧倒的に盛れる理由」を解説! どこよりも詳しい基本メイクから、気分によって使い分けたいタイプ別メイクまで、これ1冊を読めば確実にメイクがうまくなる!

『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』劇団雌猫

劇団雌猫の大人気同人誌『悪友DX 美意識』のグレードアップバージョン。化粧、ダイエット、エステ、整形、ロリータ、パーソナルカラー診断、育乳……。さまざまなジャンルのおしゃれに心を奪われた女性たちが、ファッション・コスメへの思い入れや、自身の美意識をつまびらかに綴り、それぞれが「おしゃれする理由」を解き明かす匿名エッセイ集。

(取材・文:ひらりさ、編集:高橋千里/マイナビウーマン編集部)

※写真のコスメはすべて本人私物です

※この記事は2019年12月01日に公開されたものです

ひらりさ

1989年生まれ、東京都出身。ライター・編集者。女性・お金・BLなどに関わるインタビュー記事やコラムを手掛けるほか、オタク女性4人によるサークル「劇団雌猫」のメンバーとしても活動。主な編著書に『浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)など。

ブログ:It all depends on the liver.
Twitter:@sarirahira

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