物欲がない人の心理とは? メリット・デメリットと対処法
物欲がない人には、どんな心理が考えられるのでしょうか? もしも疲労感があったり、無気力になってしまったりしている場合は危険なサインかも。この記事では、物欲がない時の心理状態とメリット・デメリット、解決方法を心理カウンセラーの小日向るり子さんに解説してもらいました。
少し前に「断捨離」という言葉がブームとなりましたが、最近では必要最低限のものしか持たない「ミニマリスト」という言葉もでてきましたね。
しかし、断捨離やミニマリストは物欲がない状態や人を指すのではなく、単純に物をひたすら捨てることや「不要なものを捨てて心身ともに健康的で満ち足りた気分になる状態」を意味します。
つまり、単純に「物欲がない」という心理とは少し異なります。
今回は断捨離でもミニマリストでもなく「お金がないわけではないのに物欲がない」という心理そのものを分析してみたいと思います。
物欲がない人の心理
まずは、物欲がない人の心理を紹介します。
(1)満足している
これまでの生活の中で物欲が十分に満たされたので、もうこれ以上物質はいらないという状態です。
多くの資産を築いた方が自治体や団体に寄付をしたり、自身が私的に集めた芸術品を展示する美術館を建てたりしたりするのがこの心理状態に該当します。
そこまで資産を持たなくても、ボランティア活動など物質ではないものに価値や生きがいを見出す場合もあります。
(2)諦めている
素敵だな、と思うものを見ても「どうせ自分には似合わない」「自分にはこんな高価なものを身につける資格がない」と思ってしまう心理です。
このタイプの方は日常生活における自責感情が強く、また自己肯定感情も低い傾向にあります。
恋愛や人間関係でも「どうせ自分なんて……」と行動する前に諦めてしまうことが往々にしてあります。
(3)無気力
たとえば、洋服や靴を購入するために外に出かけたとしても、自分に似合うものを選ばなくてはなりません。ネットショッピングだとしても、たくさんの画像の中から選択をする必要があります。
人間は脳が疲れると「選択する」ということが億劫になります。
そのため、選択する場面を考えただけで無意識に「買わなくていい」と判断をします。
それを意識下では「物欲がなくなった」と認識してしまうのです。
つまり、本来は物欲がなくなったのではないのです。これはいい精神状態とはいえません。
特に物欲だけではなく、以前は楽しいと思えたことが楽しく感じられなくなったなど、ほかのことにも無気力になっている場合は要注意です。
(4)物に価値を感じない
物質的な満足よりも精神的な満足を求めている状態ですが、これは1で挙げた「満足」とは異なります。
1の満足とは、自分の人生における「物質」と「精神」の満足度のバランスがとれている状態です。
一方で、この場合は精神世界の充足を過度に求めすぎている結果、物質に価値を感じなくなっているという状態。
たとえば大切な人を失った際など、喪失体験によって「あの人がいればほかに何もいらない」といった感情になるなど、一時的に物質よりも精神的な満足を求める状態になることは自然な感情です。
しかし、その感情が何年も続いて日常生活が困難になったり、借金をしたり、他人に迷惑をかけてまでも精神世界にのめり込むようでは問題です。
物欲がないことのメリット・デメリット
物欲がないことには、メリットとデメリット両方の側面があります。
物欲がないメリット
物欲がないと、物を買うことにお金を使わなくなるので、ムダ遣いが減って貯金ができるというメリットがあるでしょう。
また、物を買うことに使っていたお金を、体験など自分にとってより価値を感じることに使えるというメリットも。
物欲がない人の心理で紹介した【1】の状態である場合、このようなメリットを得られるかもしれません。
物欲がないデメリット
物欲がないことによって、本当に必要だった物を買い逃してしまうかもしれません。後から手に入れられる物であれば問題ありませんが、そうでない場合は後悔につながる可能性も。
ただしこれは、物欲が強く衝動買いをしてしまう人にも逆のことが当てはまるといえます。
もう1点、物欲がないのは、心身のバランスが乱れている可能性も考えられます。その状態である場合は、次で紹介する対処法を実践してみてください。
物欲がない。よくない精神状態の時の対処法
(1)口癖を見直す
口癖といっても実際に言葉に出す口癖だけではなく、考え方の癖も見直してみましょう。
「どうせ無理」「やっても意味ない」「私なんて……」といったネガティブな口癖はありませんか?
心あたりのある方は、そうした口癖に対して自分に禁止令を出しましょう。
考えそうになったら行動するように心がけましょう。
行動第一主義にすると、思考はあとから修正されていきます。
(2)不要なものは捨てる
物欲がなくなったのは、不要なものが身の回りにあふれていて、ごちゃごちゃしているだけという場合があります。
いくら多くの物質に囲まれているという状態であっても、それが自分にとって愛着がわかないものであれば、精神的な満足にはつながりません。
それどころか逆効果になることもあります。
私の臨床経験でも、コンビニと100均に行くことをやめただけで物欲が復活したという方がいました。
惰性で買っているものを思い切って処分すると、本当にほしいものや大切にしたいことが見えてきます。
(3)休息をとる
これは、【物欲がない心理】の3で挙げたケースに当てはまる方にやっていただきたいことです。
特に、物欲の減退だけでなく、これまで楽しいと思っていたことが楽しいと思えない、休日は疲れ果てて何もする気が起きないという全般的な意欲の減退もある場合は、身体と心が疲れているということ。
「物欲がなくなった」で済ませずに、医療機関やカウンセリングなど適切な機関の受診も考慮してみましょう。
(4)普段行かない場所に行ってみる
人間には必ず「飽く」という心理があります。
どんなに好きなものでもずっと食べ続けていると飽きるように、場所や人間関係も同じ状態でいると飽きてきます。
飽きるとどうなるかというと、欲がなくなってきます。
その刺激が欲望を発生させるのです。物欲にこだわらず「新しい場所に行ってみる」ことを試みてください。
「物欲がない自分」で心は満ち足りているか、自分に問いかけて
物が満ち足りた現代の日本では、ともすれば物欲を持つことは卑しく、精神的な充足のほうが尊いのだという概念が強くなっています。
しかし、買い物への精神的な依存状態を除けば「欲しい」と願ったものが手に入った際にもたらされる満足感と幸福感は決して否定されるものではありません。
なぜなら、その体験が次の行動(主に労働)へのエネルギーになるからです。
むしろ、上限がない精神世界や愛情の充足はキリがないため、疲弊してまでも求め続けるというリスクを抱えているともいえます。
物欲も含めた自分の欲望を定期的にチェックすることは、幸せな生き方を模索することのひとつです。
最近物欲がないと感じている方は、ぜひ今回の文章を参考にしていただき「物欲がない自分で心が満たされているか」をチェックしてみてください。
(小日向るり子)

あなたは物欲があるタイプ? 診断でチェックしてみましょう。
※画像はイメージです
※この記事は2019年05月29日に公開されたものです