くうねるところにすむところ研究室 #10 寝ころがり日誌
暮らしにまつわるあれやこれやの実験を日夜、繰り返す。食べること、つくること、本を読むこと。全部が繋がって、染み込んで、続いていく毎日が健やかで楽しくなっていってくれたらと願っています。よりよく生きていきたいへなちょこ研究員、チェルシー舞花の連載。
こんにちは、チェルシーです。
草はらの中から失礼します。
休みの1日に、なにも用事が見当たらないなーと思ったら、公園に寝ころがりにいくのをおすすめしたい。
最近、私はこの時間がとても待ち遠しい。することといえば、アイス食べたり、本読んだりするくらい。なんてことはないものの。
好みの木陰を見つけたら、少しの本と、寝ころがれるくらいのシート、飲み物を置いて。ちょっとだまされたと思って、やってみてほしい寝ころがり。裸足を推奨します。
風の通りがよくて、さわさわと抜ける風と木漏れ日を浴びながら、息を吸って、吐いてと深呼吸。すると、あらがいようのない強い眠気に襲われて、到着してものの30分もみたないうちに、大体ガクッと寝てしまう。
寝て、起きたら
寝起きでぼんやりした頭であたりを見まわすと、近くにある緑にピントがゆるゆるとあって、不思議とキラキラして見える。
どこからともなく、和太鼓の練習が聞こえてきたなーと思ったら、行き交う犬の小さなバトルとともに、近くのグラウンドで草野球もはじまった。ああ、なんだかここは、すこぶる平和。
人間の脳みそっていうのは、ボーッとしているときが、いちばん新しいことがひらめくようにできているらしい。なんにも考えないようにしていればしているほど、頭の働きが活発になるというあまのじゃく。「デフォルト・モード・ネットワーク」というらしい。
これを知ってから、心してボーッとする時間を作るようにしている。空いている時間は無駄にしちゃだめだって気持ちは、ひとまず置いて、ぼんやりをいちばん大切にする。
木漏れ日
ゆらめく木漏れ日を見ていて、はたと思い出すことがある。
大学で最初の授業が、自分でピンホールカメラを作って撮影するというものだった(映像学部の写真コースに通っていたので、日夜暗室でフィルムからプリントするという大学時代)。
「ピンホールカメラの原理と木漏れ日は、一緒なんだよ」
緑道を散歩しながら、そう教えてくれた教授。小学校のときに、凸レンズを通した像が、逆さまになる実験をしたのを覚えてる人もいるかもしれない。
葉っぱと葉っぱの間の小さい隙間が天然のレンズとなって、太陽の形を反転させて地面に投影しているのが、木漏れ日の正体。
だから、皆既日食のときに差し込む光が三日月の場合、影も三日月の形になるそう。
「このまるは、太陽のまるなんだなー」と、なんとなく、ゆらゆらとゆれる木漏れ日を見るたびに思い出す。
公園の帰り道に、30年続いているという、ツバなしニット帽をかぶった店主の喫茶店に寄り道。これが、私の気に入っている散歩コース。
家に帰ると、ポカポカとした陽気が体の中にため込まれた感じがして、「あーまた1週間がんばろう」と思える。冒頭では、何も用事が見当たらない日に……なんて言ったけど、実はとても贅沢な時間。ぜひ自分だけのお気に入りの散歩道を探してみてほしい。
(写真・文:チェルシー舞花)
☆「くうねるところにすむところ研究室」は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました!
※この記事は2018年06月27日に公開されたものです