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くうねるところにすむところ研究室 #08 たすかる料理

暮らしにまつわるあれやこれやの実験を日夜、繰り返す。食べること、つくること、本を読むこと。全部が繋がって、染み込んで、続いていく毎日が健やかで楽しくなっていってくれたらと願っています。よりよく生きていきたいへなちょこ研究員、チェルシー舞花の連載。

こんにちは、チェルシーです。

代々木上原のごはん屋さん、按田餃子に「包命酒(ほうめいしゅ)」というのがあります。

説明にはただのひとことだけ「すごくたすかる酒」とあり、どうやらとても、たすかるらしい。何が、どうやってとは書いてないので、ドキドキしながら頼んでみることに。

その正体は、スパイスを漬け込んだ“自家製薬膳酒”。爪楊枝に刺さった黒にんにくと一緒におちょこで出てきて、にんにくをかじりつつ、ちょこちょこ飲む。なんだか体におまじないをかけているみたいで、とても楽しかったのです。

たすかる料理

その按田餃子の按田さんの本『たすかる料理』リトルモア)を読んでみた。

「私は自分のやる気が一番信用ならないのです。ニンニクのみじん切りをはじめたと思ったら、次に壁にペンキが塗りたくなっている頓珍漢です。……略……今までできなかったことが、急にできるようになるなんてそうそうにない。自炊なんてしなかった頃の生活のペースを変えないで、自炊ができる作戦があるならいいと思いませんか? 私にとってはそれがチチャロンでした」

わかる……わかりすぎる、と膝を叩いて喜びました。

おいしいものを食べたい気持ちはわりといつもあるけれど、いつだって料理に対してのやる気100%というわけにはいかず、本当に気まぐれ。だから私にとってのごはんは、心底やる気のない私への「おたすけ便」のようなもの。水餃子とかスープとか、一度つくると何度でも楽しめる料理のほうがしっくりくるとわかってきた。

そんな人にぴったりなごはんの組み立て方が、目をみはるというか。料理がひとつの献立ではなく、自由自在に調理の流れを変えられるんだなとわかって、この本はご飯を作る私の大切な心のよりどころになりました。

そういうわけで、豚バラ肉を塊で1.5kg買ってきて、縦に三等分。ひとつは上にちょろっと出てくるチチャロンにしたり、残りは保存が利くように塩豚にして、あれこれ食べています。これが本当に性にあっていたらしく、便利なので、ここに書いておこうと思います。

チチャロンの話

南米ペルーに仕事で行っていた按田さん。本には書いてあったのは、「チチャロン・デ・チャンチョ」という、家でも市場でも食べられている、皮つきの豚バラ肉を柔らかくなるまで火を通した料理のこと。なんてかわいい名前のひびき! 「チチャロン」って言いたいがために、作るところも少しある。

グラグラに煮て、やわらかくなったら、豚肉から出る油で表面をカリッと揚げつつ、焼きつける。これがもー、とてもおいしい。表面はカリッと香ばしくして。

最初のうちは薄切りにして、粗塩をかけて。つまみにしたり、おやつにしたり。豆と煮込んだりしてもおいしいらしい。ちょいちょいつまんでいるうちに、一瞬で食べ終わってしまった。いつだっておいしくできるし、片手間に作れて、あまりに楽なので、本当にたすかっている。

塩豚の食べ方無限大

残りふたつは、2~3%くらいの塩をふって、塩豚に。

厚くスライスして焼いたものに、大根おろしとポン酢をかけたり。

塩豚を、かなりの粗挽きくらい適当にみじん切り。そのとき、冷蔵庫にある野菜と一緒に水餃子のタネにしてみる。今回は塩豚とニラと厚揚げが餃子の具。(水餃子の作り方はこちら)

餃子の具であまったものは、オイスターソースとナンプラーで甘辛く焼いて、マントウにレタスと一緒にはさんだらおいしかった。別の日にもう一度作り、そのときはパクチーをたっぷりと。

塩豚の塩は、500gに対して、だいたい大さじ1くらいの塩。そう覚えておくとやりやすい。長く保存するので塩加減を強めにしているけれど、1kg に対して、大さじ1でもいいし。チチャロンが食べたいので、豚バラ肉を買うことが多いけれど、塩豚をスープにしたりするときは、豚肩ロースの塊肉のほうが好きだったりする。

何回か作ったら、好みの部位や塩加減がわかると思うので、いろいろ試してみてほしい。

燻製

さて。残りの大きな塊はスープとベーコンに。スープよりもベーコンのほうが格段にすぐできたので、ここに書いておきます。

燻製するために、専用の燻製器とか、お手軽にダンボールで作ったりとか方法はいろいろありますが、実は特に特別な道具は必要もなくて、中華鍋(なければ普通のフライパンでも○)と、100均で丸い網を買ってくれば、家でも簡単に燻製が楽しめる。そして、煙を閉じ込めるための蓋は、大きなボウルで大丈夫。燻製するチップを、今回はクルミにしてみました。

案外気軽にできるもんだな、と思った次第です。こうなってくると、チーズとかいろいろ燻製してみたくなる。これまたおいしい、祖師谷大蔵にある「ごはん屋ヒバリ」の料理教室で、燻製の方法を教えてもらいました。

作り方は簡単。チップを中華鍋の下にひとつかみ。そんなに多くなくて、大丈夫。網を敷いて、豚バラの脂身を上にして置きます。

強火にかけて、煙が出はじめるのが1分くらい。ボウルで蓋をして2分。火を止めて、5分放置。たったこれだけで、肉はすっかりスモークされ、薫香がうつりました。

120度のオーブンで30分焼いたら、ベーコンのできあがり◯。今回は肉を200gにしたので、400gを越えるときは焼き時間を60分にのばしたり。

肉汁がたくさん出てくると火を通しすぎのサインなので、様子をみながら。まわりにはうっすらと茶色く焼けて、中はピンクに薄く色づくくらい。これにて朝ごはんのパンと、卵、ベーコンがより一層おいしくなります。

たすかる料理、いろいろ書いてみました。何かひとつでもおたすけになれば、うれしい。
くうねるところにすむところ研究室、今日はここまで。

(写真・文:チェルシー舞花)

※この記事は2018年06月06日に公開されたものです

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