やりたくない仕事を人にやらせる「押しつける女」 #イヤな女
オフィス内や仕事の取引で出会ってしまう「なんか苦手な女性」「好きになれない女性」、はっきり言っちゃえば「イヤな女」。彼女たちの「あるある言動」をもとに、なぜこうしたことをするのか、背景にある心理はなにか、ぱぷりこさんに分析・解体してもらいます。
「押しつける女」のあるある言動
「別に用事ないんでしょ? 私、今日どうしても外せない用事があってー本当ごめんねー」
「◯◯さんって、こういう仕事得意そうだよね!」
「私こっちの仕事(作業時間30分)をやるから、そっち(作業時間4時間)をお願い!」
「あ、それお願い! 明日の昼までに必要なんだって!」
「押しつける女」とは、自分に割り振られた仕事を他者に押しつけて、自分はやらずに済ませようとする女性です(仕事をアサインする権限がある上司は除き、同僚や先輩といったレポートライン外の人に限定します)。
彼女たちはよく「お願い」をしてきます。そのお願いはほぼ100%「私の代わりに私の仕事をやって」というもの。
最初のうちは「ごめーん、今日はどうしても抜けられない用事があってー」と、「時間がどうしてもないから助けてほしい」という体裁でやってきます。本来、仕事は割り振られた人間が責任を持って仕上げるものですが、「緊急時には助け合う」のがチームというものです。親族が急病になったので仕事を中断しなければならない、家の庭から石油が噴き出したのですぐ帰らないといけない、といったやむを得ない事情がある場合は、仕事を手伝うことはやぶさかではありません。
ですが、彼女たちは「どうしても時間がなくてー」がやたら多く、下手をすると週1~2ペースで仕事を手伝っている状態になることも。もはや「緊急時には助け合う」ではなく「頻繁に一方的に助ける」状態、ただのチーム内業務委託になっていることはよくあります。
また、「あなたのほうが得意だよね?」「私より作業が早かったよね?」「確か理系学部だったよね?」と、「あなたのほうが得意だから、あなたがやったほうがいい」と言ってくるパターンもあります。「得意な人や生産性が高い人がやればいい」というのは一見もっともそうな理屈ですが、適性を見て仕事をアサインするのは上司の仕事であり、仕事をアサインされた人間が「あなたのほうがやるべきだと思う!」と再アサインする権限はまったくありません。しかし、「あなたのほうが得意だから! ね!」と当たり前のように言われると、「そういう??? もの??? なのかな???」と、なんとなくやってしまう人はそれなりにいるようです。
持ち上げることすらせず、問答無用で「あ、この仕事をお願い」と丸投げしてくる場合も多いです。数名でとりかかる前提の仕事の場合、「私こっちの仕事(作業時間30分)をやるから、そっち(作業時間4時間)をお願い!」と先陣を切って仕事のアサイン権限を牛耳り、どう見ても不公平な仕事の割り振りをすることもお得意です。
このようにいくつかのパターンはあるものの、押しつける女が言っていることはほぼ一貫して「だから私の仕事を代わりにやって」というものです。
代わりにやらせた分、別の仕事を肩代わりしているのかといえば、まるでそんなことはなく、自分の仕事だけを減らして、相手の負担を増やすだけ。押しつけた相手が残業しているのを見ても「彼氏いないって言ってたし、すぐ帰る用事がないなら別にいいんじゃない?」ぐらいの感想で、罪悪感は皆無。
さらに、自分以外の人間に仕事をやらせているにもかかわらず、その事実は上司に伝えず、あくまで「ちょっと手伝ってもらったけど、だいたい私がやりました★」というポーズを取ります。「仕事を受けるのは私、仕事をするのはみんな、仕事の結果が紐づくのは私」という姿は、まさに「オフィスの中抜き強盗」と呼ぶにふさわしい悪どさです。
押しつける女は、なぜこんな言動をする?
なぜ押しつける女は、自分がやるべき仕事を他人に押しつけるのでしょうか?
それは、彼女たちが「自分に割り振られた仕事は、自分がやる必要がないし、とりあえず完了ステータスにもっていけば手段は問わない」と思っているから。そして、そういうマインドでこれまでなんとなくうまくやってこれてしまったから。
押しつける女にとって、仕事は2種類あります。「やりたいからやる仕事」と「やりたくないからやらない仕事」です。
彼女たちがやりたい仕事とは、簡単な仕事や得意な仕事、上司の覚えがめでたい仕事といった「楽な仕事」「派手な仕事」、つまりは「おいしい仕事」です。一方、やりたくない仕事とは、地味な仕事、難しい仕事、縁の下の力持ちのようなサポートの仕事、正確性が求められる仕事などの「面倒くさい仕事」「成果がわかりにくい地味な仕事」=「あまりおいしくない仕事」。
人間には好き嫌い・得意不得意があるので、誰にだってやりたい仕事とやりたくない仕事はあるものですが、自分に割り振られた以上は「やるべき仕事」です。しかし、彼女たちにとって「仕事をする義務」「仕事への責任」は無力なプロレタリアート(労働者階級)の発想であり、考える葦たる人間は自由意志のままに大いなる正午に向かって飛翔すべき―つまり「やりたくないことはやらずに済ませたい」と考えています。
ならば堂々と「やりませーん!」とサボタージュするのかといえば、そうではありません。彼女たちは「やりたくないことはやらずに済ませたい」だけではなく、「楽して自分の評価を上げたい」という欲望も抱いています。
2つの願いを同時に叶える方法がありますよね? そう、「自分がやりたい仕事だけを選んでやり、やりたくない仕事を他人にやらせ、全部を自分がやったことにしておく」です!
押しつける女にとって「自分がアサインされた仕事」は、「自分以外の誰かに再アサインする権限をゲットした仕事」です。「ホワッツ? 仕事って、割り振られた人間が責任を持って締切までに終わらせるものじゃないの?」と良識ある社会人は考えますが、彼女たちの辞書に「責任感」という言葉はありません。「職務責任? ジョブディスクリプション? なにそれ別に私じゃなくても誰かが終わらせればいいんでしょ?」というのが、彼女たちの発想です。
ここまで悪徳地主めいた搾取をしていることに、罪悪感や恥の気持ちはないのでしょうか? 残念ながら、ほとんどありません。なぜなら彼女たちはこのようなことをしてきて、それなりにうまくやれてきてしまっているからです。
彼女たちは社会人になってから突然、押しつける女になったわけではありません。中高生のころは掃除当番で「私ゴミ捨てやるねー!」と一番楽な係をやってさっさと帰り、大学時代のころは「さっき先輩に頼まれたんだけどさー、1年女子が飲み会の幹事担当なんだってー私バイトだからやっといて! 決まったら私に教えてー私から先輩に報告しとくから!」と面倒くさい仕事をほかの子に投げて成果を丸取りするなど、「面倒くさい仕事はやってくれそうな人間に投げておけばどうにかなる」という成功体験を積んできています。
これまでやってきてうまくいったことを、会社でもやっているだけ。なので、「社会人として(そもそも人として)ダメなことをしている」とは思っていないし、むしろ「楽して評価をされている自分は賢い」とすら思っていることもあります。
押しつける女=責任感はないが評価がほしいので、他者を利用する女
「押しつける女」は、「仕事への責任感はないが、評価は高くしてほしいので、自分より弱そうに見える人間を利用する女」です。
押しつける女はこれまで「自分の仕事を他人にやらせて、そこそこうまくいってきた」という成功体験があるため、特に罪悪感なく、息を吸うように「やりたくない仕事」を他人に押しつけます。周囲の人間は「自分の分じゃない仕事をやらされている」「面倒くさい仕事を押しつけられた」「でも評価されない」という不満、仕事の不公平さに気づかず表面的にしか評価しない上司への怒り、残業による疲労やプライベート時間の削減といったダメージを食らいます。
押しつける女が社内や部署内にいたら、どうすればいいのでしょうか?
最も確実な方法は、断ることです。なぜなら、押しつける女が「仕事を押しつける相手」として狙うのは、「責任感が強く仕事を完遂させる人」のうち、「お願いされたことをすべて引き受けてしまう人」「強く言えば逆らえない人」「不満を口に出さない人」、つまり「仕事を頼んだら断らず、上司への報告もしない人」だからです。
仕事を押しつけられがちな人は、彼女たちに「ベリーグッド・カモ」と認識されています。逆に言えば、彼女たちから距離を取りたければ、カモとしての資質を失うこと、すなわち「仕事を引き受けない」「上司に伝える」ことです。
もちろん最初のうちは「理由があるならしょうがない」と引き受けてしまうことはあるでしょう。しかし、何度も続くようならカモ認定されている可能性が高いので、断ることが必要です。「私も自分の仕事があるから」とはっきり断るのがもっとも手っ取り早い方法です。
ただ、仕事を引き受けてしまいがちの人は、はっきりと断ると「イヤな気分にさせてしまうのでは」「嫌われてしまうのでは」と精神的苦痛を覚えてしまいがち。その場合「うーん、今は別の仕事があるから、やれるとしても来週になっちゃうかな」「ちょっと体調が悪いんだよね」「約束があるんだよね」と理由をつければ、心理的負荷が少し軽くなるし、相手も引き下がりやすくなります。
もし、それでも仕事を押しつけてくる猛者だったり、どうしても自分で断る勇気がない場合、「上司に相談する」カードを切りましょう。これまで見てきたとおり、彼女たちは「自分がやったことにしたい」「自分の評価を下げたくない」ため、他人に仕事を押しつけた事実が露見することを極度に嫌います。2人だけのクローズドな空間だからこそ無茶を言えるのなら、クローズドな状態をやめてオープンにしてしまえばいいだけのこと。
「私だけでは判断できないから、上司に相談してもいい?」「口頭だと忘れちゃうから、メールで依頼内容を送ってもらえる?」など、「あなたの行動を伝えますよ」「あなたの行動の証拠を取りますよ」と示唆すれば、だいたいは引き下がります。別の人間がカモとして利用されそうだったり、すでに部署内の被害が甚大な場合は、ずばっと上司に報告してしまってもいいでしょう。
押しつける女ライト級なら「これまでうまくいっていた方法だと怒られることがわかった」と気がつけば行動が変わる可能性があります。本気で「自分が悪いことをしている」と思っておらず、息を吸うように他者を搾取する押しつける女ヘビー級は「ちょっと頼んだだけなのに自分を悪者にした」「上司に気に入られたいからって、大げさに言って告げ口した」など、まわりに悪評を吹聴したり、被害者として振る舞う可能性が高いので、「第三者が見ても仕事を押しつけている」とわかるだけの証拠をきっちり押さえたうえで押さえ込む必要があります。
押しつける女はオフィスにいると迷惑極まりないですが、急所は比較的はっきりしています。自分に合った方法を取れば、負担や不満を軽減できるでしょう。
(文:ぱぷりこ、イラスト:黒猫まな子)
※この記事は2018年03月26日に公開されたものです