【ワーママデビュー!1】20代半ばで出産&ワ―ママデビュー! 育休中の社内外のつながりが、新たな視点を作ってくれた
働く女性の多くはいづれ結婚して出産もしたいのですが、ワーママとしての働き方やワークライフバランスのとり方がわからないなど、不安も多いのが現状です。2015年3月にGoogleは、女性の仕事復帰を応援するプロジェクト「Women Will #HappyBackToWork」を立ち上げ、多くの賛同企業とともにさまざまなアイデアを実践してきました。この連載では、そのサポートを受けたワーママたちの話を紹介します。
PROFILE:肥後静香(ひご しずか)●2011年4月にヤフー株式会社に新卒入社。現在は、メディア・マーケティングソリューションズグループに所属。2014年8月1日から2015年4月15日まで、産休・育休を取得。
社内の育休復帰率は9割以上! 先輩の働き方が参考になった
IT関連の企業というと、男性的なイメージがある。ワーママの職場としてはハードルが高いのかと思いきや、ヤフーの育児休業からの復職率は約94.3%。2010年に厚労省が調査した平均値を上回る。社員の3人に1人が、子育て中だという。
六本木本社で「Yahoo!検索」の企画開発に携わる肥後静香さんも、ワーママデビューを果たしたばかり。2011年4月に入社し、2012年秋に結婚。2013年冬に妊娠がわかり、2014年8月から約8カ月間、産休・育休を取得した。入社5年目にあたる2015年4月から職場に復帰している。
「出産休暇・育児休暇後は当然、職場に復帰するものと思っていました。当時、私が所属していた部署は200人近い大所帯で、いたるところに先輩パパママがいて。先輩たちの働き方を間近に見ていたので復帰後の姿もイメージしやすかったんです。なので転職したり、専業主婦になったりという選択肢は想像もしてなかったし、夫もそうでした。妊娠がわかったときから、復職について考えはじめました」
産前休暇前も、サポート制度を積極的に利用
肥後さんは、出産休暇・育児休暇に入る前も、さまざまな制度に助けられたと、当時を振り返る。例えば、「マタニティ休暇」。妊娠がわかってから産前休暇までの間に5日間休暇が取得できるという制度だ。
「有給休暇とは別に、5日間休めるのは、心の支えになりました。5日間というと少ないイメージがあるかもしれません。でも、有給を使いきってもまだマタニティ休暇分があるという安心感が、ありがたくて」
社外で業務ができる「どこでもオフィス」という制度にも、たびたび助けられたという。
「通勤に片道1時間弱かかるんですが、『どこでもオフィス』を使えば、自宅でも仕事ができます。通勤時の体への負担が減る上、往復の約2時間分を仕事にあてられます。抱えている業務の内容や時間などを考えながら、その都度ベストな選択ができるんです」
「Yahoo!ウーマンプロジェクト」「パパママサポーター制度」を通じ、出産後のイメージを
2013年に、女性従業員有志による「Yahoo!ウーマンプロジェクト」が発足。プロジェクトが立ち上がるとすぐ、肥後さんはメンバーに名乗り出た。
「私が結婚した後すぐに発足したプロジェクトでした。結婚して新たなライフステージが始まると考えていたタイミングだったこともあって、『もう入るしかない!』と飛び込みました」
同プロジェクトの目的は、働く女性たちのキャリアアップ啓発や支援。女性社員に向けてワークショップや外部講師を招いたセミナーなどを行う。
「社員向けキャリアワークショップでは、さまざまな部署や職種の方とキャリアに対する考えを深めることができました。また、私自身もプロジェクトを通じ、いろいろな情報を得たことが、出産について考えるときに役に立ちました。Yahoo!ウーマンプロジェクト主催のイベントでは、子育てしつつも活躍している社外のさまざまな方に講師として登壇いただいています。ひとりの女性として、母として、一番自分に合った働き方を、このプロジェクトを通じてイメージしてもらえたらと思っています」
また、社内の先輩パパや先輩ママが相談に乗ってくれる「パパママサポーター」制度のおかげで、産休・育休の不安がずいぶんやわらいだという。
休職中はつながらないイントラ。不安になり上司に相談
社内の制度を利用しながら、産休・育休前の期間を順調に過ごした肥後さん。しかし、いざ産休・育休がスタートしてみると、予想していなかった不安に直面することに。
「休職期間中は社内イントラへの接続ができません。仕事のメールもいっさい見ることができないんです。セキュリティはもちろん、出産育児に集中して欲しいという配慮もあるとは思うのですが、社内で何が起きているのかまったくわからないことに不安を覚えました。例えば、人事発令もすべて社内イントラにアップされるので、お世話になった上司や同僚の退職を復職するまで知らなかった……ということもありました」
不安が解消できたきっかけは、上司とのランチだったという。
「保育園入園が決まったタイミングで、上司にメールを送り、会ってくださいっとお願いしたんです。一緒にランチをしながら、今の会社の状況についていろいろ聞かせていただいて、気持ちが落ち着きました。子どもも一緒に連れていったら、上司がとても喜んでくれたことにも励まされた気がします」
「Women Will」のオープニングイベントで、育休仲間と出会う
2015年3月には、Google「Women Will」のオープニングイベントに参加。育児休暇をとっている、同じ立場の人たちに出会えた。
「家族との生活がメインになる育休中は、社会人としての感覚が遠のいてしまう不安もありました。でも、イベントに参加したおかげで、久しぶりに社会との接点が持てた。いろんな会社のパパママが参加していて、ふだん出会わないような方々と育児の話ができたこともうれしかったです」
いよいよ職場復帰! 保育園の呼び出しは、夫婦で交互に対応
2015年春に職場復帰した肥後さん。朝、保育園に子どもを預けて、9時半に出社。時短勤務の制度を利用し、17時には退社し、保育園に向かう。子どもが小さいうちは、体調が悪くなったなどの理由で、保育園からしょっちゅう呼び出されるという悩みもよく聞く。肥後さんはどう対応しているのだろうか。
「夫と交代で、半休をとって対応しています。夫も私も、どうしても仕事を抜けられないというときは、近くに住む母に頼ることもあります」
申し訳ないと思う気持ちは「ありがとう」に
育休後の新たな生活を前向きに過ごしている肥後さんだが、同時に、心のどこかで申し訳なさも感じていた時期もあったという。
「会社の上司や同僚、保育園の先生、家族に支えもらえているからこそ、働き続けられているんだと思うんです。それが、申し訳なくもあって。でも、あるとき、『Women Will』のサイトに投稿されていた “『ごめんなさい』ではなく『ありがとう』” というフレーズを見て、意識が変わりました。未だに申し訳ないという気持ちはあるけれど、相手に伝えるときは、感謝の言葉にしよう。『ありがとう』と言えるように、心がけています」
社会や企業にどんどん変わっていってほしいです
育休中に経験したことが思わぬ形で、現在の業務に役立っているという肥後さん。そのひとつが、“ユーザー目線”を手に入れたことだという。
「例えば、病気のことや体のことは、男性より女性のほうがネット検索で調べる傾向にあります。そのこと自体は休職前からわかっていたんですが、今では『どういう気持ちでこの情報を調べるのか』『どういう情報が出てきたら便利なんだろう』といった、ユーザー目線で考えられるようになりました。育休期間にネットから少し離れ、“ヤフーの中の人”でなくなったからこそ、得られた視点だと思います」
また、結婚や出産を通じて、「女性がキャリアアップを目指すために何が必要か」を自分ごととして考えるようにもなった。
「女性の働き方に関する社会のとらえ方や、企業の考え方が、どんどん変わっていくといいなと思っています。例えば、フルタイムで働く人の8割の時間しか社内にいないからといって、仕事に対する熱意やエネルギーも8割というわけでは必ずしもないと思います。私自身も”一人前の仕事”ができる自分でありたいと思いつつ、時短勤務で働いています。育児や介護などで働ける時間やスタイルに何かしらの制約があっても、仕事の成果でちゃんと評価される。評価する側とされる側が互いに納得できるような社会になってくれればいいなと思います」
出産前後で会社の「どこでもオフィス」やフレックス制度にとても助けられていたという肥後さん、それよりもうしろめたさなく勤務することができている理由は、上司も同僚も「家族優先でね」と声をかけてくれる環境のおかげだという。
肥後さんの一日のスケジュール
6:30 起床、朝食の準備、自分の支度
7:00 子ども起床、朝食、保育園の支度
8:15 夫に家事をバトンタッチ、保育園に登園
9:30 出社
12:00 昼休み
13:00 ミーティングや企画書作成
17:00 退社
18:00 保育園お迎え
18:15 帰宅、夕食づくり
19:00 夕食、入浴
20:30 子ども就寝、家事を片付ける
0:00 就寝
(齋藤純子)
※この記事は2016年04月01日に公開されたものです