法廷画家・榎本よしたかのコミックエッセイ『トコノクボ』に学ぶ、仕事の人間関係にくじけない方法
長い人生の中で、絶望の淵に立たされたことがある人は、そう少なくないと思います。特に働く女性の場合はプレシャーや人間関係など、生活の多くを占める「仕事」だからこそ、その悩みは深刻。マイナビウーマンの以前の調査で、一度でも「死にたい」と思ったことがある働く女性が32.6%もいるという衝撃的なものがありました。
☆『例え一度でも「死にたい」と思ったことがある社会人女性は32.6%! 衝撃の理由とは?』☆
今回、いくつもの不幸や逆境を乗り越え、イラストレーター・法廷画家として成功し、その半生をコミックエッセイとしてまとめた『トコノクボ くじけない心の描き方』を出版された榎本よしたか氏に、仕事の人間関係で悩んだときなどにどうするべきか、ご自身も仕事や家族関係で苦しみ続けた20代を過ごしながら、今はそういった悩みから解放されたという秘訣をうかがいました。
――仕事の人間関係で悩んでいる女性も多いのですが、コミックエッセイ『トコノクボ』の中で、20代に仕事や家族との人間関係に悩まされた体験を赤裸々に描かれた榎本さんは、どう思われますか。
そうですね。人の悩みのほとんどは人間関係だと言われていますね。同僚と反りが合わない、上司の自分への評価が不当に低い、誰かに陰口を言われている・・・など色々と悩みの種はあると思います。
たとえば僕は自分のことを嫌いな人に対しては、それは僕が解決すべき課題ではない、と思うようにしています。これをアドラー心理学では「課題の分離」と呼んでいます。人生は、一般的に嫌いな人が多いと辛いものになると思うんですけど、その人は「榎本が嫌いだ」という問題を抱えていると言えるのであって、そのことを僕の問題として考えるのは辞めました。理由なく他人を嫌ってくる人もいますし、そのためにこちらの心を痛めたり悩ませたりするのは無駄に思えるんですね。
――ですが、そういう人がクライアントだったり、会社の上司や同僚だったりする場合もありますよね?
僕も、会社に勤めている当時はそういうことがあり、最初は耐えるしかないのだろうかと考えていました。しかし、その人と付き合わないですむ方法はないか、距離をとれる方法はないかを考えて行動していきましたね。
自分の職場環境を改善できるのは自分しかいないと思っていて、最初から自分に都合のいい職場環境が人から与えられることってまずないんですよね。
仕事の人間関係に悩んで我慢し続けることには限界がありますし、「耐えている=努力している」ではなく、「より良い環境になるよう前進していくこと」こそが努力だと思うので、自分で動くしかないと思います。
――ただ、具体的な改善策が見つからず、悩んでいる人も多いのでは?
僕自身の経験から思うのは「我慢し続けしない」ことです。耐えていればいつか幸せになれるかというと、そういうことはほとんどなくて、むしろ心の病に侵されるリスクが高くなるだけだと思うんですよ。
絶望的なまでに落ち込んでいるときは、とにかく自分とは違う考えに触れてみることが大切で、今までとは違う人との出会いを求めるのも一つの手だと思います。
――自分の置かれている環境への見方を変えよう、というお考えはわかりましたが、なかなかそういう出会いがない方も多いですよね?
僕の場合、よくビジネス書や自己啓発書を読みました。
自己啓発というと、最近はネガティブな印象を持つ方もいますが、僕は読むとやる気を貰えるんですよね。心の栄養ドリンクとでもいいますか。
もちろん、一冊読んだだけで人生が劇的に変わったりはしませんが、一つ二つは、「おっ、なるほど!」という気づきを与えてくれることもあります。
中には極端な意見が書かれていたり、高額なセミナーなど著者のビジネスへの勧誘がなされていたりする場合もあるようですが、「人の話を鵜呑みにしない」というのは全てにおける大前提であって、その上で読書を通じて、自分と違う考えと出会うこと自体は悪いことではないと思います。
――なるほど!そういう発想はなかったですね。
それと、もう一つは異業種交流会、特に朝食会、朝活ですね。
夜の交流会だと、勉強がテーマでもお酒が入って乱れたり、異性目当ての人などもいたりしますが、朝活に参加するような人は、勉強や交流のために早起きを辞さない人たちですから、まじめな方が多いですね。
最近は忙しくて参加できていませんが、以前はよく参加していました。異業種の方の考えに触れるのはとても良い刺激になりますよ。人の悩みを聞いて自分だけじゃないんだと思えたりもしますし、経営者の方が参加されていて、そこで仕事の悩みを抱えていた若い子に「じゃウチにきなよ」の一言で転職話が一気に決まった瞬間に立ち会ったこともあります。参加料金も自分の朝食代だけで済むところも多く、朝活はさわやかにコミュニケーションが取れて、お勧めですよ。
――まさに見方が変わりました(笑)。そんな榎本さんでも、最近、落ち込むことはありますか?
仕事が忙しく、自分のスキルアップのための時間が十分に作れていないのが悩みといえば悩みです。
今は二人の娘(3歳と0歳)がかわいくてしかたないので、計画的に子供たちとの時間だけは作って大切にしていますが、それ以外は仕事ばかりになってしまっていて……。
「仕事をしている=努力している」ではない、と僕は思うんですね。
今持っているスキルだけで今後も仕事を続けていけるほど甘くはないと思っているので、作品の価値を上げるスキルアップの為の努力は絶対に必要なのですが、なかなか時間が作れていない現状があります。
イラストだけでなく、たとえば世界史や美術史など勉強したいことがたくさんあります。向上心は持ち続けていたいですね。
――最後に、仕事に悩む方になにかアドバイスがあれば。
人間関係で深刻な悩みに直面している人に言いたいのは、「限界を超えて我慢しないでください」ということです。
心の病を患ってもいいことなんてひとつもありません。本人は苦しいし、その苦しさを他人にはまったくわかってもらえないという二重の苦しみに苛まれます。
そのボーダーラインの一つは「普段楽しいことが全く楽しいと思わなくなる」です。そう感じたら危険信号です。
その先にあるのは冒頭の記事にもあるように「死にたい」という感情です。せっかく生まれてきたのだから、そんな風に思うのはもったいない話です。心の病が視野狭窄にさせてそう思わせているのであって、死にたいわけではないはずなんです。
その前にできることはたくさんあります。まだ出会っていないものに出会いましょう。人からでも本からでも良いので、自分の中に新しい風を取り入れましょう。必要以上に他人の課題を背負い込まないようにしましょう。身の回りの嫌な人は反面教師にして、自分を向上させること利用してしまいましょう。絶望から脱出することは不可能ではないはずです。
社会通念や常識だと思い込んでいるものを、一度は疑ってみると良いと思います。そうすると、自分は自由であり、選択肢は思った以上にたくさんあることに気付けると思うんですよ。
後書き
榎本さん、ありがとうございました。人生に悩んでいるときのサプリとして「自己啓発書」をお勧めしてくれましたが、榎本さんの新刊『トコノクボ くじけない心の描き方』も、サプリになる一冊だと思います(笑)。
『トコノクボ くじけない心の描き方』
https://book.mynavi.jp/ec/products/detail/id=43581※この記事は2015年11月16日に公開されたものです