年金がもらえなくなるって本当?
円安のあおりで値上がりラッシュが始まった。思うように貯金もできず、将来に不安を感じる要素が多いなか、年金がもらえなくなる可能性が浮上してきた。今年4月に法律が改定され、解散する基金が続出しているからだ。
基金は、企業ごとに加入を決めるオプションのような存在で、解散すると給付される保証はまったくない。老後のためにと長年積み立てたお金が、1円も戻ってこないかも状態が始まっているのだ。
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解散を加速させた法改正
もらえなくなる可能性があるのは「年金基金」だ。
年金基金は国民/厚生年金とは別枠で、加入する/しないは企業が決められる。サラリーマンなら厚生年金、主婦や自営業は国民年金が一般的だが、厚生年金はある意味で任意のため、加入しているかどうかは勤め先によって決まる。
年金形式で支給される「企業独自の積み立て貯金」と考えればわかりやすいだろう。
基金に積み立てたお金は、一部が厚生年金あつかいの「代行部分」、残りは基金が運用して給付する「企業年金分」に分かれる。たとえば、厚生年金として10万円払い込んでいるひとが、5万円の年金基金に加入した場合、代行部分を3万円とすると、
・厚生年金 … 7万円(-3万円)
・代行部分 … 3万円
・企業年金分 … 5万円
と「見ため」は厚生年金が減ったようなかたちとなる。「代行」の名の通り、この部分は国に納めず基金が運用する。積み立てた5万円以上を給付するための「元手」なのだ。ところがうまく運用できず、赤字の基金が少なくない。
そこでこの4月に法律が改正され、要約すると、
・赤字の基金は、5年以内に解散しなさい(勧告)
・5年後以降も赤字の場合、解散命令を出すかも(強制)
と決まった。加入者から集めたおカネを上手に運用できずに赤字の時点で「赤っ恥」だが、そのうえ解散命令が下されたらたまったものではない。そこで「解散」を決意した基金が続々と登場しているのだ。
基金=預金ではない
「解散しても、いくらかは給付されるでしょ?」と思いたくなるのが人情だが、残念ながら保証はない。減額は当然で、1円も戻ってこない事態も起こりえるのだ。
加入していた基金が解散した場合、さきの例なら代行部分の3万円が厚生年金として計算されるため10万円あつかいとなるが、それ以外は消えてなくなる可能性もある。「5万-3万なら、差し引き2万円の損で済む!」と思うのは早計で、もともと厚生年金=10万円のシミュレーションであることをお忘れなく。
一部が代行部分と表現されていただけなので、「差し引き」すること事態が計算違いなのだ。
それ以外は基金ごとの規定によるが、もとより「支払う予定の金額>持っているおカネ」が理由で解散するのだから、回収できると考えるほうが不自然だ。つまり予定よりも減額ならラッキーで、利息はおろか、積み立てた5万円すらチャラになる可能性が高いのだ。
また、代行部分も同様で、本来ならば厚生年金として積み立てられた金額は、2014年3月31日までに解散した場合は企業年金連合会が責任を持つかたちで支払うが、4月1日以降は「将来、国が支払うはず」と定められ、連合会は「一部または全部」が支給停止となる場合があると記している。
もとより法改正から始まった話だけに、もっともな主張と言えるだろう。
まとめ
・対象は「厚生年金基金」
・基金が解散すると、もらえなくなる可能性・大
・本来は厚生年金あつかいの「代行部分」も、消滅するかもしれない
「年金」「基金」の名から確実性が連想されるが、実体は投資以外のなにものでもない。
まずは自分が「基金」に加入しているかを確認しておこう。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年10月05日に公開されたものです