私、このまま一生独身かも。そんなふうに思ったことはありますか? 編集部にも「おそらく自分は一生独身になると思っているけれど、そうなったときにどれくらいのお金が必要なのかわからない。今はただがむしゃらにお金を貯めているけど、具体的な金額がわからないから気分的に落ち着かない」(27歳/正社員/手取り月収14万円)という悩みが届きました。
ほかにも、「結婚するつもりがなく、今の給与が上がらないと思うと老後の生活資金が不安」(30歳/正社員/手取り月収15万円)、「いい人がいたらすぐに結婚したいけど、もし一生結婚しない場合、今のお金で足りるのか心配」(28歳/正社員/手取り月収22万円)といった声が集まり、“おひとりさま”を続ける場合の生活を不安視している女子は多いよう。。
編集部 先生、今回は、「おひとりさまが考えておくべきマネーリスク」を教えてください。いちばんの不安は「老後資金」だという読者が多いのですが、いくらぐらい貯蓄が必要なのでしょうか。相談者の中には、「65歳までに1,500万円貯めたい」と具体的な金額を出している人もいます。
大竹のり子(以下、大竹) 結論から言うと、1,500万円は鋭い金額です。これはシングル女性が65歳まで働き、90歳まで生きると仮定したときに“最低限”の衣食住を確保するために必要な額。逆に言えば、この額を貯めておかないとピンチだと思ったほうがいいです。
編集部 この1,500万円という金額は、どのように算出されたものですか?
大竹 総務省の「家計調査報告(家計収支編)」(平成25年平均速報結果の概況)によると、シングルの高齢無職世帯の1カ月の平均収入が約12万3,000円、支出は約15万7,000円。つまり、毎月約3万4,000円の赤字になるわけです。それを65~90歳の老後26年で換算すると、3万4,000円×12カ月×26年=1,061万円の赤字に。ただ、人は生活していれば、病気や介護、家のリフォームや賃貸の更新料、冠婚葬祭費などイレギュラーな出費が必ず出てくるもの。そこで、万が一に備えて赤字分の1,061万円より300~400万円はプラスで貯めておきたい。そう考えると、やはり1,500万円は必要最低限の金額になります。
編集部 あくまでギリギリの老後資金だということですね。
大竹 はい。それに先ほどの平均支出は、住居費1万5,000円とした場合の計算ですので、持ち家であればローンは退職するまでに払い終えている前提になりますし、賃貸であれば毎月7万円ほどの追加支出を想定しておかなければいけません。もし、趣味や旅行などゆとりのある暮らしをしたいのであれば、ひとりでも月28万円ほどの生活費は確保したいところ。また、60歳で退職するなら、さらに500万円余分に貯めておきたいですね。
編集部 なるほど……。それぞれの収入や持ち家の有無、老後にどんな暮らしを送りたいのかなどによって、備えておくべき金額が変わってくるのですね。老後までに貯めておきたい金額の目安がわかる計算方法などはありますか?
大竹 あります。「(老後の生活費+病気や介護などイレギュラーな出費に備えるお金)-退職金」で計算すれば、自分で用意しておきたい金額がおのずとわかります。老後の生活費は、先ほどの「年金だけでは足りない金額×12カ月×老後の年数」で計算、もしもの病気や介護に備えるお金は300~400万円を目安にするといいですよ。
編集部 ちなみに、「生涯の平均手取り月収が20万円で厚生年金に入っている女性」であれば、現状の年金制度だと、いくらくらい支給されますか?
大竹 22歳で就職して65歳まで働く場合は、年間の厚生年金支給額が71万9,100円。ここに国民年金の約80万円がプラスされますので、トータルで150万円ほどです。
編集部 そう考えると、月々の収入は約12、3万円。先ほど教えていただいた「シングルの高齢無職世帯の1カ月の平均収入」と同じくらいということですね。
大竹 はい。そういう意味では、今は正社員でも派遣社員でもあまり手取りのお給料が変わらなかったりするかと思いますが、「50歳になっても安定的に派遣の仕事があるのか」「退職金はあるのか」などを考えたとき、やはり正社員と派遣社員の差は大きい。今、派遣社員などの雇用形態で「このまま、おひとりさまかも」と思う方は、正社員の仕事に転職をしておいたほうが、将来のリスクヘッジになるかと思います。
編集部 「最低貯蓄1,500万円」も、しっかり働き続けることが前提なんですね。とはいえ、年を重ねるごとに病気のリスクも高まりますし、定年まで順調に働き続けられるとは限りません。おひとりさま女子だからこそ抱えるマネーリスクにはどんなものがありますか?
大竹 病気・ケガと介護ですね。まず病気・ケガで困るお金には二種類あります。ひとつは治療費そのもので、もうひとつは働けなくなることによる収入減。治療費は千差万別ですが、これは医療保険に入っていれば備えられます。収入減については、会社員が入る健康保険には傷病手当金という制度があり、支給開始をした日から最長で1年半までは被保険者の標準報酬日額の3分の2ほど保険金が出ますので、残りの3分の1は、医療保険の入院給付金を1万円に設定するなどしてカバーするのも一案です。
編集部 介護リスクについてはどうですか? 大竹 医療技術が発達すればするほど、長生きができ、その分介護で長患いする人が増えてきます。老人ホームに入れず、身内が介護している人が多い中で、身内のいないおひとりさまはなおさら介護リスクが高まりますので、その分のお金は貯めておきたいですね。最近は民間の介護保険が増えてきていますし、若いうちに入れば途中で解約しても損をしないものも多いので、貯蓄代わりに入っておくと老後が楽だと思います。
FP大竹のり子さんに教わる「おひとりさまの老後に備えたいあなた」へのおすすめツール・3選
自分でお金が管理できなくなる事態に備える◆高齢シングルを援助してくれる「成年後見制度」
アルツハイマーや認知症など判断能力が落ちて、資産を自分で管理できなくなる可能性も。そんな場合に頼りになるのが「成年後見制度」。不利益をかぶらないように家庭裁判所に申し立て、支援してくれる人を選ぶ制度です。
「お手頃な保険料で、女性にやさしい保険に入りたい」人に……
更新がないため保険料が加入時のまま上がることなく、病気・ケガによる入院を一生涯保障。入院の有無にかかわらず、約1,000種類の手術や先進医療もしっかり保障。特に、女性特有の病気とすべてのがんに対する保障が手厚いのが特長。
「介護リスクに備えてしっかり準備しておきたい」人に……
死亡・高度障害の保障はもちろん、介護保障も一生涯続く。介護保障は公的介護保険で要介護2以上と認定、または所定の要介護状態になったときに受け取れる。保険金を受け取らず、所定の年齢の年単位の契約応当日を迎えたときには、健康祝金も。