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料理用ラップは軍用だったって本当?「本当:もともと軍用の防水シート」

どの家庭にも必ずある料理用ラップ。食材の保存や温めなどに欠かせない存在だが、もともと軍用品だったのはご存じだろうか。

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武器や火薬を湿気から守り、靴の防水にも使われていたラップは、終戦を機に台所で使われるようになった。中身を密閉できるジッパー付き袋も、元来は調理用具として開発されたのだが、あまりに売れ行きが悪く、保存用に名を変えて世に広まっていったのだ。

軍用の防水シートで、お弁当を包む?

料理用ラップフィルムの先駆けは、1940年代にアメリカのダウ・ケミカル社によって開発された。

当時は太平洋戦争のただ中で、マレー半島やフィリピンのルソン島などで戦闘が繰り広げられていた。戦地に送られた兵士たちは高温/多湿の気候に悩まされ、それを救ったのがラップフィルムだ。おもな使い道は、

・銃や火薬を包み、湿気から守る
・靴の中敷きにして、水虫を防ぐ
・蚊から身を守る蚊帳(かや)

蚊帳と聞くと網(あみ)をイメージするが、ラップフィルムをからだに巻き付けるなどしてマラリアから身を守っていたのだろう。

1945年に終戦を迎えると、ラップフィルムの需要は減り、ほとんど使い道がない無用の長物となった。ところが、ダウ・ケミカル社の社員たちがピクニックに出かけたときに、台所用品に生まれ変わる事件が起きた。一緒に来た奥方が、お弁当をラップフィルムに包んで持ってきたのだ。

これを見た社員たちはさっそく商品化に取り組み、料理用として販売したのだ。

ラップフィルムが優秀なのは、素材であるポリ塩化ビニリデン(PVDC)が、開発から50年以上も経った現在も使い続けられているところだ。通称・ポリ袋で知られるポリエチレン(PE)と比較すると、

・破けにくさ … (PVDC)470MPa / (PE)220MPa
・酸素透過度 … (PVDC)60 / (PE)13,000 ※単位はcc/m2・day・atm
・透湿度 … (PVDC)12 / (PE)30 ※単位はg/m2・day

と、難しい単位を抜きに説明すると「引っ張っても破けにくく、酸素も水分もほとんど通さない」の意味で、武器よりも食材にこそ最適な素材なのだ。

その後、ヒット商品になったのは説明するまでもないだろう。ちなみに、お弁当をフィルムに包んだ主婦「サラ」と「アン」が製品名の由来となっているのは、フィルムの性能とはまったく関係ない。

ジッパー付き袋は、なべ代わりだった!

ジッパー付き袋も数奇な運命をたどっている。保存用ではなく、なべに代わる調理器具として開発されたのだ。
これも同じくダウ・ケミカル社の製品で、食材を「湯せん」するのが目的だ。カレーや牛丼などのレトルト食品は、容器に空けてレンジでチンが定番となっているが、電子レンジが普及していない時代は、なべのお湯で温めるのが定番だった。

ジッパー付き袋が登場した1960年代はレトルト・パックもなかったので、これに食材を入れて調理すればラクじゃん!と考え、発売されたのだ。

しかしながら、湯せんで作れる料理は限られているので、市場には受け入れられず、ヒット商品には遠く及ばなかった。そこでジッパーの利点を活かし、保存用として「再デビュー」させたところ、爆発的なヒット商品となり現在も定番グッズとして知られるようになったのだ。

保存と調理では真逆の役割にも思えるが、便利グッズ誕生のきっかけとなったリサーチの甘さに、感謝すべきかもしれない。

まとめ

・料理用ラップは、もともと軍用の防水シートだった
・ある主婦がお弁当を包んだのが、「料理用」に転身するきっかけ
・ジッパー付き袋は調理器具として誕生したが、市場に受け入れられなかった
・保存用として販売したところ、大ヒット商品になった…

違う使い方をしたところ、大ヒット商品になるとは実に痛快な話だ。クールビズで登場回数の少なくなったネクタイの、頭にまく以外の活用方法を探してみることにしよう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年06月06日に公開されたものです

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