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雑学 北欧スタイル

専業主婦が珍しくなったノルウェー―女性漁師も登場!水産業界で活躍する北欧のワーキングウーマンの実態

サーモン養殖場で働くノルウェー人女性・インゲボルグさん(Photo:Asaki Abumi)

「ほら、元気な魚でしょう?」

1匹の大きなノルウェーサーモンを両手で持ってにっこりと微笑むのは、ノルウェー人女性のインゲボルグ・アウカンさん(27歳)。ここは、ノルウェー西部のフィヨルド地帯、エンデレセ湾に位置するサーモンの養殖場。

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いけすの中では、餌を食べながら魚たちが大きくジャンプしています。

世界第2の規模を誇るノルウェーサーモンの養殖業者レロイ社が所有する養殖場の船上では、品質管理責任者であるインゲボルグさんが男性職員の中に違和感なく馴染んでいます。若い女性が船の上で働く姿を、皆さんは当たり前の光景と捉えますか? それとも珍しい光景?

「男女平等先進国」、「お母さんにやさしい国」など、数々の国際的な世界ランキングの常連国として知られるノルウェーは、実は世界第2位の「水産物輸出大国」でもあります。日本の食卓でも、おいしいノルウェーサーモンやサバが毎日消費されていますね。

男社会というイメージが強い漁業・水産業の世界で、ノルウェーの女性達はどのように働いているのか、お話をうかがいました。

■専業主婦が珍しくなったノルウェー

2004年以降、ノルウェーでは「クオーター制」と呼ばれる、国営企業、および大手上場企業の取締役の40%を女性とする割当制度が導入されています。世界最大の養殖業者、ノルウェーのベルゲン都市にあるマリンハーベスト社で管理職に就いているのは、マリット・ソルベルグさん(1956年生まれ)。

ノルウェーの世界最大の養殖業者で女性管理職として働くマリット・ソルベルグさん(Photo:Asaki Abumi)

彼女は1985年から水産業の仕事に携わりながら、女性の労働環境の変化を目の当たりにしてきました。専業主婦が当たり前の時代だった彼女の母親世代と今では、状況が激変したそうです。

「私が15歳になるまでは、母はずっと専業主婦で、父は家事を一切手伝いませんでした。時代は変わり、家事労働をする男性、出産後も離職をせずに働き続ける女性は今や当たり前。ノルウェーでは、自己紹介の際に専業主婦という肩書きが通用しなくなってきています」(ソルベルグさん)

■仕事ができる人は残業しないもの

「その人がどれだけ効率的・柔軟に働ける能力を備えているかにもよりますが、最近の女性は8時間労働が基本で、ランチタイムは20~30分と短く、夕方の3~5時には帰宅します」(ソルベルグさん)

だらだらと残業をしていると、ノルウェーでは「仕事ができない人」と評価されるとソルベルグさんは指摘。ここ5年ほどの間では、男性の意識も大きく変化していると肌で感じるそうです。

「男性は自分たちも家事労働をしなければならないのだと悟り、家事に協力的です」(ソルベルグさん)

ノルウェーは女性が働きやすい社会とうたわれていますが、男性色が強い水産業界でトップの役員職に上り詰めるまでには、新入社員時代に「同期の男性以上の努力をする必要があった」とソルベルグさんは話します。

「キャリアを極めたいのであれば、常に”イエス”と言って仕事を受けることが必要でした。”私は帰ります”という選択を当時していたら、今の椅子はなかったでしょう」(ソルベルグさん)

ソルベルグさんが勤務を始めた1985~95年は、女性は彼女を含め2名しかいませんでした。しかし今では、全社員の30~35%、養殖場など海上現場を除いた社内職員の50%、管理職トップ7人中3人は女性が占めているそうです。

養殖現場スタッフはまだまだ男性が多いという課題はありながらも、ソルベルグさんのように男社会の第一線で一心不乱に働く先人がいたからこそ、後の女性社員数の向上につながったのかもしれません。

マリンハーベスト社の競合であり、養殖場船に乗っていたインゲボルグさんが勤務するレロイ本社を訪問した際にも、会社説明のスピーチをしたのはマーケティング・ディレクターとして働く、女性のオースヒルド・ナッケンさん(41歳)でした。

後輩の男性社員は、彼女の傍らに座りスピーチを静かに聞いていたそうです。

ノルウェーのレロイ社の広報部長であるナッケンさん(Photo:Asaki Abumi)

ナッケンさんは、通常8時から16時まで働き、ランチ休憩は30分間。彼女が働く本社では、男性社員数71名(そのうち上役は16名)、女性社員77名(上役は10名)。なんと男性よりも女性が多く、管理職も男女の割合は大きく開きがありません。

「社員の多くは育児休暇を全部使い切ります。この業界で女性として働くことで不便を感じたことはありませんね」とナッケンさん。また、彼女は東京に単身赴任で1年間の滞在経験もあり、「日本では出産後に職場復帰をする女性が少なくて驚いた」とも語ります。

日本の水産業はまだまだ「男社会」の印象が強く、「女性が管理職として活躍すること自体がまれ」と語るのは、ノルウェー水産物審議会・日本担当ディレクターであるヘンリック・アンデルセンさん。

農水省の統計によると、平成24年の「男女別漁業就業者数」は、男性14万9,260人、女性2万4,400人と、男性が全体の86%、女性は14%ほどしか占めていません。女性の社会進出は、今のノルウェーの豊かな水産業・漁業になんらかの活気を与えているのではないか。

元気な笑顔で働く女性たちを見ていると、そんな思いがふと心をよぎります。

●文・写真 鐙 麻樹

■著者プロフィール

鐙麻樹(あぶみ あさき)。上智大学フランス語学科2008年卒業。オスロ大学メディア学学科2012年卒業。同大学大学院メディア学修士課程在学中。ジャーナリスト、フォトグラファーとして、雑誌、WEB、旅行ガイドブックを中心にノルウェー現地から数多くの原稿や写真を寄稿。6カ国語の海外ニュース翻訳家、メディア/企業コーディネーター兼アドバイザーとしても幅広く活動中。
ホームページ http://www.asakiabumi.com/
All Aboutノルウェーガイド http://allabout.co.jp/gm/gp/1080/
地球の歩き方オスロ特派員ブログ http://tokuhain.arukikata.co.jp/oslo/

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