食品の原産地は、どうやって決まる?―養殖の場合、1日でも長くいた場所が「原産地」

多数のメディアでTPP交渉が大詰めを迎えたと報じている。オージービーフに続き、輸入食品が今よりも多く流通するようになるのかもしれない。
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食品の原産地は、どうやって決まるのか? 肉牛や海産物は、肥育期間がもっとも長い場所と決められているので、外国産・和牛や国産・海外アサリも許される。加工食品になるとあいないな要素が増え、どこの食材か分からないまま口に入れているのだ。
1日違いで国産に変わる?
食品の原産地に関するルールは「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」、通称JAS法によって定められている。
天然の魚介類は極めてシンプルで、どこの海(=水域名)で摂れたかが原産地となる。例えばタラバガニならロシア(オホーツク海)、するめいかなら日本海(新潟県)のように、国名と水域名、または水域名と県名(港名も可)の組み合わせで表示される。
養殖の場合はどうなるのか? これは魚介類だけでなく食肉も同じで、育った期間がもっとも長い場所が原産地と定められている。例えば生後4か月のアサリを輸入し、それから8か月間を日本で養殖すれば「国産アサリ」として表示できる。
食肉も同様で、1日でも長くいた場所が原産地となるルールなのだ。
誤解されがちだが、国産牛と和牛は別物で、前者は原産地=日本の意味で、対して和牛は品種なので国産か輸入かは関係がない。つまり、外来品種を日本で育てると「国産・海外牛」、逆に黒毛和牛などの日本在来の牛を海外で育てると「輸入・和牛」となる。
つまり「国産牛肉」と表示されていても、和牛とは限らないのだ。
産地不明な「刺身盛り合わせ」
加工食品も同様に「過半数」が基本だが、さらにゆるいルールになる。5%未満の材料は「その他」と省略でき、原産地どころか成分も表示されない場合もあるのだ。
例えば缶詰やレトルトの煮物の場合、ゆで汁に含まれるかつおぶしや昆布エキスのように、5%未満の成分は「その他」と表示しても構わない。5%を超える原材料も、複数の産地のものがブレンドされている場合は、50%以上の原産地名だけを表示すれば良い過半数ルールなので、残り半分ぐらいは、どこ産だか分からないまま食べていることになる。
海外で加工された食品を、国内で「小分け」「包装」した場合もかなりあいまいで、
・原産国名 … ○○国
・製造者 … (日本・□□社)
となり、これをみて「○○国から輸入した材料を、□□社が調理した」と思うだろうが、じつは味付けも調理も海外なのだ。
端的なのは「刺身の盛り合わせ」で、生鮮食品でありながらも加工食品に分類されるため、原産地などの表示は、義務はなく、自主規制になっているのだ。
家庭で「おろす」テマを省くため、あらかじめ切り身になった刺身が販売されているのはご存じの通りだが、マグロの切り身のように1種類なら原産地がはっきりしているので表示しなければならないが、2種類以上の盛り合わせになると「自主指針」となり、原産地を表示しなくても違反ではない。
焼肉になるとさらにややこしく、鳥/豚/牛など異なる肉の盛り合わせは加工食品、牛つながりでカルビとロースなど部位が違うだけなら生鮮食品に変わる。原産地にこだわるひとは、セットメニューではなく、単品で注文すると良いだろう。
まとめ
・養殖の場合、1日でも長くいた場所が「原産地」
・国産は産地、和牛は品種なので、「輸入・和牛」も変ではない
・加工食品の5%未満の原材料は「その他」と省略しても良い
・刺身盛り合わせ/焼肉セットメニューは、すでに「加工食品」
ただでさえ食料自給率の低い日本に、安価な輸入品が多く出回っても、おいしい国産品が絶えないことを祈る。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年05月03日に公開されたものです