もしも月が近づいたら、地球はどうなるの?

月の最接近と満月が重なるスーパームーン。日本では2013年6月23日に観測され、大きさは14%、明るさが30%もアップした。
月が近づくと何が起きるのか? 月の重力は潮の満ち引きを起こす潮汐(ちょうせき)力の源で、地球の自転にブレーキをかける役割も果たしている。距離が縮まれば潮汐力が増し、地震を引き起こすという説もあるが、幸いにも災害を起こすほどのパワーはなさそうだ。
月は微力?
地球をはじめ、惑星の軌道は楕円を描いている。これはドイツの天文学者ケプラーが唱えた第1法則としても知られ、地球は太陽に近づいたり遠のいたりしながら、1年かけて公転している。公転半径は平均1億5千万kmに対しプラスマイナス1.67%の差が生じ、今年もっとも近づく近日(きんじつ)点通過は1月2日、もっとも遠い遠日(えんじつ)点は7月5日に通過する予定だ。
月は地球の衛星で惑星ではないが、やはり軌道は楕円のため地球との距離に差が生じる。軌道の楕円がどれくらい歪んでいるかを表す離心率は0.0548で、平均距離に対して5.48%の差があり、地球の公転軌道と比べると3倍もいびつな軌道を周回しているのだ。
地球と月の平均距離はおよそ384,400km、これにプラスマイナス5.48%を加えると、最遠で405,465km、最近は363,334kmとなる。ただし離心率も変化するため今年6月23日のスーパームーンでは地球からおよそ35万7千km、平均よりも6%近くも接近したのだ。
重力は物体の質量に比例、距離の2乗に反比例するので、重くて近い物体からは強い重力を受けることになる。月の重力も地球に及び、潮の満ち引きを起こしているぐらいだから、近づけば大きな影響を与えることになる。平均軌道時を1として、最遠、最近、スーパームーンが、地球に与える重力を計算すると、
・最遠 … 0.898倍
・最近 … 1.119倍
・スーパームーン … 1.133倍
となり、最遠~スーパームーンでは、1.26倍もの差が生じる。およそ4分の1もの差が生まれるのだから、地震を引き起こす原因と考えるのも、さほど不自然ではない。
だが、地球が受ける重力は月に限らず、太陽を筆頭に、周囲の天体すべてから影響を受けている。太陽との平均距離は1億5千kmと、月の約400倍も遠いながらも、質量が大きいため強い重力を受けている。太陽と月の重力を、平均、遠日点、近日点でおよそ何倍かを比較すると、
・(太陽)平均vs(月)平均 … 178倍
・(太陽)遠日点vs(月)最遠 … 192倍
・(太陽)近日点vs(月)最近 … 160倍
となるので、月とは比較にならないほど大きな力を受けていることが分かる。
もし月に地震を起こす力があるなら、遠/近日点を通過する際は地球が壊れるほどの天変地異が起きているはずだ。つまり、スーパームーンが災害を引き起こす可能性は、限りなく低い。この説は、前回のスーパームーンが2011年3月だったのが理由だろうが、原因と位置付けるには少々無理があるようだ。
月にかわってお仕置きよ!
月のおせっかい
ただし、天体の重力が無関係とも言い難い。(独)防災科学技術研究所の資料によると、他の天体の重力が地震の引き金となる可能性が示唆されている。2004年のスマトラ島沖地震のデータをもとに、潮汐力が最大になる時刻は地震の発生率がアップするのが確認されたのだ。
天体の重力が地震を起こすと聞くと、地殻が引きはがされるようなイメージだが、これは間違いで、潮汐力が断層の滑りを促進するのが原因だ。1980年ごろから記録されたデータをもとに、1995年から潮汐力と地震の相関関係が強まったことが確認されたという。
2004年を基準にすればおよそ30年分のデータに10年ほどの相関関係が見られているのだから、確実な根拠と言える。
潮汐力はあくまで引き金に過ぎず、どんな場所にも地震を引き起こすほどのパワーはない。つまり、もともと地震が起きそうな場所にきっかけを与えるだけで、いつかは起きる地震が、潮汐力によって早められたと考えるべきだ。
お願いだ月。余計なことはしないでくれ。
移動する地殻にひずみが生じ、地震が発生する。ひずみの力は潮汐力の1,000倍もあるというから、潮汐力ががんばっても地震を起こすほどの力はない。
まとめ
月はおよそ3cmずつ、毎年遠ざかっている。平均距離を38万kmで計算すると、月から受ける重力が半分になるのはおよそ52億年後だ。
もっとも、2億5千万年後にはすべての大陸が合体し、人間が住める環境ではないとの説もあるから、心配しても仕方ないのだが。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年02月12日に公開されたものです