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もしも雨を降らせるなら「ドライアイスを散布」

人工的にアメを降らすことは可能なのだろうか?雨は空気中の水蒸気が水滴になったものなのは誰もが知っている通りだが、まずは雲の仕組みを知る必要がある。雲は雲粒(うんりゅう)と呼ばれる水や氷の集合体で、直径およそ0.01mm以下のごく小さい雲粒が集まって雲となる。

重力によって地表に引き寄せられるものの、体積に対して軽い雲粒は空気抵抗を受けて毎秒1cmほどしか落下しない。落下よりも上昇気流の方が速いため、雲は空中を漂っていられるのだが、雲粒が集まって直径0.1~5mm程度になると上昇気流でも押し戻せず、雨となって落ちてくるのだ。

雲粒が雨になるプロセスには2通りあり、雲の状態から「暖かい雨」「冷たい雨」に分類される。暖かい雨はその名の通り0℃よりも高く氷を含まない雲から生まれる。暖かい雲のなかでは雲粒が活発に動き回り、衝突して他の雲粒と合体を繰り返す。

大きくなるにつれ、上昇気流では支えきれない重さとなり雨へと変わる。

対して冷たい雨は、0℃以下の冷たい雲が原料となる。凍った雲粒が小さな氷となり、周囲の雲粒を凍らせ大きな氷へと成長し落ちていく。落下中に融ければ雨、凍ったままなら雪となる。温度の違いだけでも、雨は全く異なるプロセスで作り出されているのだ。

放っておいても雲が雨に変わるなら、雨乞いはムダなのか? 古代にはさまざまな儀式がおこなわれたようだが、唯一効果がありそうなのはたき火だ。雨とは真逆の存在に思える火は、発する煙が雨のきっかけになり得るからだ。

雨の原料である雲粒は、水蒸気だけでは作ることができず、水分を集めるための核が必要だ。これは雲核(うんかく)と呼ばれ、大気に浮遊する微粒子が担っている。煙も雲核として使えるので、たき火で大量の煙を放出し雲が生まれれば、雨が降る可能性は高まる。

すごいぞ雨乞い!どうせ降るならキャンプファイヤーのあとにしてくれ。

しょっぱい雨

科学の力を使えば、もっと確率を高めることができる。定番はドライアイスかヨウ化銀を使った人工降雨だ。

ケーキやアイスクリームの保冷剤として知られるドライアイスは冷えて固まった二酸化炭素で、-79℃で昇華(しょうか)し固体から気体へと変わる。これを細かく砕いて雲の中に散布すると雲粒の温度が下がり、雨のもととなる氷粒を作り出す。

冷たい雨を強引に再現する方法だ。

ヨウ化銀は光が当たると黒く変色するため、フィルムの感光材などに使われる物質だ。水にほとんど溶けず、ドライアイスのように冷えることもなく、雨とは無関係に思える物質だが、人工降雨に使われる理由は形で、形状が氷の結晶と似ているため、雲粒を集める「なんちゃって氷」として使われる。

どちらも雨の種に見立て、シーディングとも呼ばれる方法だ。

空気中に存在する二酸化炭素を凍らせてまくなら環境にやさしそうだが、ほとんど天然物がないヨウ化銀は要注意だ。化学品を危険有害性の種類と程度で分類したGHSでは、データ不足のため「区分外」と分類されているものの、目に入ると刺激や炎症、飲み込むと腹痛や下痢を引き起こすため有害と記されている。

さらには熱分解すると蒸気が凝縮したヒュームや、フッ化水素ガスを発生させるので危険だ。

変わりだねとしては塩をまく方法もある。煙と同じ発想で、吸湿性の高い塩の微粒子をまいて水蒸気を集めて雨に変えるのだ。ヨウ化銀よりは安全そうだが、微量ながらも塩分が森林や畑に影響しないか気になるところだ。飛行機からドライアイス散布がベストに思えるが、個人には大がかり過ぎる。

自治体に許可された場所を探し、地道にたき火を続けるのが良さそうだ。

まとめ

日本ではまだ実験段階の人工降雨は、海外では実用的におこなわれている国も多い。

人類が天気をコントロールする日が来るのだろうか。急な雨に降られる心配はなくなるだろうが、予定された天気では味気ない気がしてならない。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年02月03日に公開されたものです

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