北海道札幌市で30年に渡り挑戦を受け続ける、伝説の「3kgカレー」
札幌のカレーと聞いて、スープカレーを思い浮かべる人も多いだろう。しかしそのスープカレーが認知される、はるか以前から知られている伝説のルーカレーがある。「自由人舎 時館(じかん)」自慢の「3kgカレー」だ。
【北海道札幌市のカリスマ焼きそば店が放つ3kgメニュー その名も「信じられねぇ」】
創業およそ30年の同店が開業間もなくスタートしたチャレンジメニューで、今なお挑戦者は後を絶たない。北国の伝説に出会うべく、取材班は極寒の札幌に向かった。
学生に愛され続ける、優しい味のルーカレー
「自由人舎 時館」は北海道大学のほど近く、そして酪農学園大学や札幌学院大学など、いくつかの大学が集まる江別市大麻に、それぞれ一店舗ずつ店を構えている。
定食やハンバーガー、丼ものなどのメニューも豊富だが、メインはカレーだ。ルーとスープ、その両方を用意している。客層の主流は学生で8割方を占めており、それだけにどのメニューも低価格でボリュームがある。
特に人気があるのはルーカレーだ。多彩なスパイスで程よい辛さと深いコクに仕上げられており、学生時代に親しんだこの味が忘れられず、長年通い続けている常連客も多い。好みに応じて辛さをアップすることもできる。
サイズもいろいろと用意されており、大食いの人はもちろん、小食の人でも無理なく食べられるようになっている。しかし、いつの時代にも必ず存在するのである。規定のサイズでは満足できない人種が……。
成功率10%の伝説にいよいよ挑む
「3kgカレー」は、オープンして2年後にはすでに存在していたメニューらしい。学生客にインパクトを与えるチャレンジメニューとして、当時のアルバイトスタッフが発案したらしい。
制限時間は30分。チャレンジ料金は前払いだが、完食すれば代金は無料に。さらに5,000円の賞金が出る。受け付けは1日につき1食限定。3日間煮込んで旨味を出すルーなので、次々挑戦されるとすぐ品切れとなるためだ。
店長の庄司さんによれば、近年だと年間でおよそ100人が挑戦し、成功者は10人前後。成功率は10%程度ということだ。
説明を受けているうち、まずライスだけが運ばれてきた。その重量は2kg。見た目といい、持ち上げた重みといい、挑戦者の心を折るには十分なインパクトがある。続けざまに運ばれてきたルーは、さりげなく丼に満々と湛えられている。
重量は1kg。ライスと合わせた総重量が3kgというわけだ。
カレーはアツアツでなければ、飲み込むように食べられるという利点がある。これだけの量を完食するためには、満腹中枢が刺激される前にまず全速力で食い進む。そして、苦しみのたうち回る胃袋が発する危険信号が脳に届いた後は、気力と根性でじわりじわりと残りを片付けていくしかあるまい。
素早くスプーンで3杯ほどルーをライスにかけ、第一段階の「全力疾走食い」をスタートした。
緊張の中でのスタートだったが、最初に頭を過ったのは「ああ、おいしい」という思いだった。食べれば食べるほど食欲が湧く感じだ。意外にも、あっという間に3分の1程を難なく食べることができた。これはいけるかもしれない……。
歴史の中で確認された2kgの壁
半分ほど食べてもダメージを感じず、心なしか余裕を感じ始めた。この健闘ぶりに庄司店長も驚いているだろうと、食い進めながらチラリと表情を盗み見た。しかし冷酷なほど無表情である。ほかのスタッフも同様だった。
こんなに快調なペースなのに、何故みんな無表情なんだ? 新たな緊張を覚えはじめた次の瞬間、突然リズミカルにカレーを運んでいた自らの腕が動かなくなった。そして自分の意志とは関係なく、深いため息が体の底から発せられた。
ここにきて、ついに満腹中枢が作動してしまったようだ。残りはおよそ半分。根性をフルに発揮しようが、とうていクリアできる量ではない。なにせ体がもう動かなくなっている。もう一度庄司店長を見た。表情にあまり変化はなかったが、メガネの奥の優しい瞳に若干悲しげな光が宿っていた。
食べかけの姿勢から動けぬままギブアップを宣言した。
「大食いの人の多くは、2kgぐらいまで順調に進みます。しかし、そこを過ぎた途端に手が止まります。2kg以上が、限られた人しか到達できない聖域なのかもしれません」
苦しくて動けないままでいる目の前から残ったカレーを片付けながら、そう静かに語った庄司店長。長年あらゆる挑戦者を見てきたその言葉には重みがあった。
この「3kgカレー」に敗れた者は数知れずいるが、また勝者もいる。最高記録は約9分の完食。挑戦する人は、同店のホームページでルールをしっかり確認してから問い合わせていただきたい。
≪自由人舎 時館≫
住所 北海道札幌市北区北18条西7丁目20-214
交通 市営地下鉄南北線北18丁目駅より徒歩4分
営業時間 11:00-0:00(LO23:30)
駐車場 4台
創業 1980年
http://www.jikan.co.jp/
(OFFICE-SANGA)
2014年1月18日、本文を一部訂正いたしました。
※この記事は2014年01月17日に公開されたものです