卵からの生存率は1%以下!近畿大学のクロマグロ養殖がマジにすごい件

全世界的に天然マグロ資源が枯渇に向かっているということで、マグロが食べられなくなるかも……という話があります。そこで注目されているのが「養殖」です。マグロのような大きな魚を養殖できるの!?と思うかもしれません。
【世界中で大人気。マグロの魅力10個「カロリーが低い」「集中力を高める」】
それができるのです!
日本の近畿大学はクロマグロの養殖に関して、研究の先駆であり、また世界でもトップクラスの技術を持っています。
養殖に関する研究を60年以上続けている、近畿大学水産研究所にお話を伺いました。
研究開始から32年かかった!
――近畿大学ではいつからクロマグロの養殖の研究を始められたのでしょうか。
昭和40年代から研究を始め、昭和45年(1970年)に大島実験場を設置して本格的に取り組みました。
――もう40年以上も前なのですね。研究の成果が実り、クロマグロの完全養殖に成功されたのはいつでしょうか?
平成14年(2002年)です。本格的に研究を開始してから32年かかったことになります。
世界初の完全養殖に成功!
養殖と一口にいっても、「完全養殖」と、そうでないものがあります。
完全養殖でないものは、自然に生息する稚魚を捕ってきて、これを成魚になるまで大きくして出荷するため天然資源に負担をかけることになって、資源回復には寄与しません。
これに対して「完全養殖」は、育てた成魚から卵を採取し、これを稚魚から成魚に育て、また卵を採取、というサイクルを確立した養殖で、天然のマグロを必要としないために資源に負担をかけません。
この完全養殖を達成するには、その魚の生態、卵が生まれる環境、稚魚が何を食べて育つのかなどについて熟知していなければなりません。これは大変に難しいことなのです。
ですから、近畿大学がクロマグロの完全養殖に世界で初めて成功したということは、研究者の間でも大きな驚きをもって迎えられたのです。
卵から出荷サイズまでの生存率は1%以下!
――近畿大学の成果は世界的にも注目されていると伺っています。どのような点で優れた技術なのでしょうか?
卵→稚魚→成魚→親魚→卵という、マグロの一生を人間が飼育管理する完全養殖技術を世界で初めて達成しました。これによって天然資源を使わずに養殖が継続できるところが注目されています。
――クロマグロの養殖で難しい点とはどのようなものでしょうか。
マダイなど、他の養殖魚に比べて、成長過程でさまざまな難しさがあります。卵から出荷サイズまでの生残率が1%以下ととても低いことが大きな課題です。特に卵から1、2カ月の、初期の飼育技術の向上はこれからも不可欠であると考えております。
――年間どのくらいの数のクロマグロを養殖で生産していらっしゃいますか?稚魚としては約4万尾、食用とする成魚としては年間で1,500尾前後です。

――近畿大学産のクロマグロに対するマーケットの評価をお聞かせください。
養殖魚全般としては天然魚のキロ単価の5割前後が市場相場となっていますが、以前に比べて品質は格段に良くなっており、消費者の認識を新たにしていただきたいと思います。
このたび大阪と東京に出店した養殖魚専門料理店で直接評価を頂くことで、さらに消費者に好まれる高品質な魚を育てることを目指していきたいと考えています。
――近畿大学産のクロマグロをアピールしていただけますでしょうか。
天然資源に負荷をかけない完全養殖技術によるクロマグロを数多く供給できるように努め、養殖業界に貢献したいと思っています。
いかがだったでしょうか。
最近では「近大マグロ」がブランドになりつつあり、またその近大マグロを味わえる『近畿大学水産研究所』というお店もあります。2013年12月4日には、東京に「銀座店」がオープンしました。
日本の食卓からマグロが消えないように、さらに養殖技術の開発が進むといいですね。
⇒『近畿大学水産研究所』の公式サイト
http://kindaifish.com/
(高橋モータース@dcp)
※この記事は2014年01月15日に公開されたものです