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雑学 生活

天文学の歴史(後編) ~最近まで天動説を支持していたキリスト教~

地球が宇宙の中心に存在し、その周りを太陽や月、星たちが回っていると考えた「天動説」。

【惑星になりきれない天体 ~準惑星とは~】

紀元前から長きにわたり信じられてきたこの考え方ですが、15世紀の大航海時代になると観測技術の進歩によって、それまでの天動説では説明がつかない事象が次々と発見されました。

これをきっかけに、天動説(地球中心説)に代わって地動説(太陽中心説)が再びスポットを浴びる時代がやってくることになります。


■地動説の復権

15世紀頃の中世ヨーロッパでは、人間が住んでいる地球こそが宇宙の中心であるというキリスト教の考え方が、プトレマイオスの天動説とも合致したため、当時の常識となっていました。

しかし、そのような時代に登場してきたのが、ポーランド出身の天文学者「ニコラウス・コペルニクス」でした。コペルニクスは、水星や金星が太陽の近くを離れることがないことなど、天動説では説明がつかない点に疑問を持ち始めます。

そして、過去のさまざまな文献を調べていくうち、古代ギリシアの天文学者「アリスタルコス」が唱えていた地動説にたどり着き、これなら複雑な惑星の動きをもっと自然に説明できると知りました。

ただし、彼はこの地動説を中心とした考えを著書「天球の回転について」にまとめたものの、このような学説が当時の人々にとってはあまりにも衝撃的なものであったため、生前この著書を発表することはなく、自分の死後に発表してもらうことにしました。つまり、当時のキリスト教はそれほど力を持っていたということです。

とはいえ、残念ながらこのコペルニクスの地動説は、重要な点が現実と異なる不完全なものでした。そのため、惑星の位置を正確につかむには至らなかったのです。(何が異なっていたのかは後ほどご紹介しましょう。)


■地動説と天動説との攻防

コペルニクスの著書「天球の回転について」が公表されて以来、地動説が正しいのか、それとも天動説が正しいのかと、天文学者たちの間でさまざまな論争が起こりました。

そんな中、デンマークの天文学者「ティコ・ブラーエ」は、膨大かつ精度の高い観測によって真実にたどり着こうとします。そして、彼は完全な地動説ではなく、「太陽と月は地球の周りを回り、それ以外の惑星は太陽の周りを回る」という天動説と地動説を複合的に組み合わせた説を唱えました。

結局、観測記録を最後までまとめることができずに亡くなったブラーエでしたが、彼の死後、一緒に研究を進めていたドイツの天文学者「ヨハネス・ケプラー」がその整理に挑みます。


■ケプラーによる地動説の確立

ブラーエと一緒に研究をしていたケプラーですが、実をいうと彼は天動説と地動説を組み合わせた説ではなく、完全な地動説を信じていました。

ブラーエが蓄積した膨大な観測結果をもとに宇宙の真実を突き止めようとしたケプラーは、火星の観測データに基づく軌道計算をきっかけに、ついに1つの結論にたどり着きます。
その結論というのが、ケプラーの第1法則としても知られている「惑星は太陽を1つの焦点とする楕円軌道上を動く」というものでした。

古代ギリシアの頃からそれまで、天体の軌道は完全な円であると考えられており、この事実こそ、コペルニクスの地動説に欠けていた重要な要素だったのです。この事実の発見によって、コペルニクスの地動説では不可能であった惑星の位置を非常に高い精度で求めることができるようになりました。

その結果、多くの学者たちの考えが天動説から地動説へとシフトしていくこととなったのです。


■キリスト教と天動説のその後

ところで、中世ヨーロッパで天動説を強く支持していたキリスト教でしたが、その後、地動説が世の中の主流になってからも決して地動説を認めることはありませんでした。

そして何と、キリスト教(ローマ法王庁)が地動説を正式に認めたのは20世紀の終わりのことです。

17世紀、「ガリレオ・ガリレイ」の地動説を認めず宗教裁判で有罪としていたローマ法王庁ですが、1992年に当時のローマ法王「ヨハネ・パウロ2世」は当時の裁判の非を認めて、初めて公に謝罪をしました。

裏を返せば、それまでずっと天動説を支持していたということになります。

キリスト教にとっての神はそれほどまでに絶対的な存在であるというわけですね。


■まとめ

中世ヨーロッパで、コペルニクスなど多くの科学者たちの努力によって確立された地動説。
今では当たり前の考え方ですが、コペルニクスの死後に活躍したドイツの哲学者「カント」は、自らの哲学(認識論)における考え方を「コペルニクス的転回」と評しました。

この言葉は、現在でも「物事の見方が180度変わってしまう」という意味で使われることがありますが、天動説から地動説に切り替わったことは、きっとそれほどまでに衝撃的だったのでしょう。


(文/TERA)

TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

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