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惑星になりきれない天体 ~準惑星とは~

皆さんは「準惑星(じゅんわくせい)」という言葉を聞いたことがありますか?

【天の川銀河のうち6%が地球型惑星 もし引っ越すなら】

「水・金・地・火・木…」というのが、太陽系の惑星として分類されるもので、準惑星は文字通り、これらの惑星に準ずる天体なのですが、いったい何が「準じて」いるのでしょう。

そこで、今回はそんな準惑星についてご紹介したいと思います。

準惑星の定義とは…

準惑星とは、「太陽の周りを公転する天体のうち、惑星の定義を満たさず、なおかつ自己の重力によって球形になれるだけの質量を持つもの」と定義されています。この定義は2006年に開催された国際天文学連合(IAU)の総会で決まったもので、その歴史は大変浅いです。

そして、この定義ができた理由というのは、冥王星に深く関係しています。

冥王星発見と惑星の歴史

長い間、惑星の定義というのは、あいまいなものでした。

そうした中で、海王星の外側を回る冥王星は、1930年の発見直後から長らく「太陽系第9惑星」と位置づけられてきました。

けれども、他の8つの惑星と比べて、軌道が大きく傾いていることや大きさが小さいこと、彗星(すいせい)と同じ成分の氷で覆われていることなど、性質上の違いがいくつも見られたことから、本当に惑星として扱ってよいのかという声は少なからず出ていました。

やがて、観測技術の向上などにより、1992年に冥王星以外に同じような天体が初めて発見されると、その後も次々と発見されていきます。

このような状況の中、2003年に発見された太陽系外縁天体(=海王星軌道の外側を回っている天体)である「2003 UB313(後のエリス)」をいろいろと調べているうち、2005年に入ってから?2003 UB313はどうやら冥王星より大きい…?ということが確実視されたため、これがきっかけとなって、冥王星を惑星のまま扱ってよいのかという声が一気に高まりました。

惑星の定義の見直し

「2003 UB313」の最初の発見からおよそ3年後、2006年8月にチェコのプラハで開催された国際天文学連合(IAU)の総会で、新しく惑星の定義について議論がなされました。

当初そこでは、従来の9惑星に加えて、先ほどの「エリス」や冥王星の衛星「カロン」のほか、火星軌道と木星軌道との間を周回している小惑星「ケレス」が追加されて、計12個になるはずでした。しかし、この先も新たな発見によって次々に惑星が追加される可能性が高く、あまり増えすぎると一般の人々にとって馴染(なじ)みにくいものになってしまうという懸念もあり、天文学者の反対に合ってしまいました。

そのため、最終的には以下のように決定されています。

1.太陽の周りを回っている(公転している)。
2.自己の重力により、ほぼ球形を保(たも)てるだけの質量がある。
3.その軌道上から他の天体を排除している。

小惑星や彗星(すいせい)などの小さな天体は、球形を維持できるだけの重力を自己で持っていないため、2つ目の条件を満たすことができません。

また、3はやや分かりにくい表現ですが、簡単に言うと、その天体の周り(軌道付近)に他の天体が存在せず、それだけが際立って大きいということになります。

冥王星の場合は、その近辺に同程度の大きさの天体がいくつも発見されていることから、3つ目の条件を満たさないと判断され、ついに惑星から除外されることになってしまいました。

新設された「準惑星」カテゴリ

このような経緯から生まれたのが、冒頭で紹介した「準惑星」です。

2006年の国際天文学連合での決定を受けて、冥王星のほかエリスとケレスがこのカテゴリに分類されることになりました。その後、2008年には「マケマケ」と「ハウメア」という2つの太陽系外縁天体が追加され、今では5つの天体が準惑星として認定されています。

まとめ

冥王星に匹敵する新たな天体が発見されるという、思いがけない経緯から生まれた「準惑星」。

準惑星カテゴリの誕生によって、冥王星は太陽系惑星の座から陥落してしまいましたが、観測技術の向上によって今後も新たな準惑星が次々と発見されるかもしれませんね。

(文/TERA)

●著者情報
TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2013年08月26日に公開されたものです

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