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3週連続1位獲得! 勢いが止まらない『風立ちぬ』のトリビア・7選

皆さんは、宮崎駿監督の最新作『風立ちぬ』はもう観られましたか? 公開前は、初の大人向け映画とあってそれほど観客動員は伸びないのではとの声もありましたが、ふたを開けてみれば3週連続で1位を獲得。

7月20日の公開以来、16日間の累計動員数は350万人、累計興行収入は43億円を突破する大ヒット作となっています。

今回は、そんな『風立ちぬ』をさらに楽しむためのちょっとしたトリビアを紹介しましょう。

漫画版のペンネームは宮﨑ノロオ!?

映画『風立ちぬ』は、零戦の設計者・堀越二郎の半生に、堀辰雄の名作『風立ちぬ』を重ね合わせたストーリーで、宮崎駿の同名漫画が原作。

模型雑誌『モデルグラフィックス』(大日本絵画)に連載されていましたが、漫画版の作者名には、本名「宮﨑駿」のほか、「宮﨑グズオ」「宮﨑ノロオ」「宮﨑ノビオ」「宮﨑オソオ」「宮﨑YASUMIGACHI駿」などなど、遅筆を自虐的に表したペンネームが。

かつて『アニメージュ』で連載していた『風の谷のナウシカ』を楽しみにしていた記者も、「今月はたったの2ページ…」「また休載…」などと思った記憶が甦ります。

あのベストセラー小説との共通性

『風立ちぬ』のヒロイン・菜穂子(なおこ)は、肺結核を患いサナトリウムでの療養を余儀なくされますが、村上春樹のベストセラー小説『ノルウェイの森』のヒロイン・直子(なおこ)も、精神疾患で山の上の療養所に入ります。

そして両作とも、その情景の比喩として登場するのがトーマス・マンの『魔の山』。『魔の山』といえば、サナトリウムでの生活を描いたドイツ文学の傑作。ちなみに、『風立ちぬ』にカストルプという名のドイツ人が出てきますが、これは『魔の山』の主人公、ハンス・カストルプからとっています。

不治の病といえば…

菜穂子が患った結核といえば、かつては不治の病の象徴。1930年代から戦後しばらくの間、日本人の死因第1位を占めていました。そのため、日本の近代文学には結核や長期療養所のサナトリウムを題材にした作品が数多く存在します。

前出の『魔の山』と合わせて日本の“結核文学”も読んでおくと、『風立ちぬ』の時代背景がよくわかります。なお、結核は決して過去の病ではなく、今も世界中で年間約880万人が罹患し、110万人が亡くなっています。

喫煙率8割以上!

劇中、ジブリ映画とは思えないほど登場するのが喫煙シーン。昨今の煙草事情を考えると違和感を感じる人もいるかもしれませんが、これは当時の世相を反映したもの。

JTが公表している「全国たばこ喫煙者率調査」によると、もっとも古い昭和40年の成人男性の喫煙率はなんと82.3%。平成24年の同32.7%より50ポイント以上も高かったことがわかります。煙草は今よりずっと身近な嗜好品だったようです。

絶滅の危機にあったシベリアが復活!?

『風立ちぬ』に出てくる印象的な食べ物といえば、シベリア。ようかんをカステラでサンドしたお菓子で、映画を観た人からは「懐かしい」「おいしそう」という声が聞かれます。

シベリアは、大正から昭和初期はもちろん、記者の幼少時代にもごく一般的なお菓子でしたが、確かに最近はあまり見かけなくなりました。ネットでは、「絶滅の危機」とするまとめサイトもありますが( http://matome.naver.jp/odai/2137155960745414501 )、『風立ちぬ』を機に人気が再燃するかもしれませんね。

ところでこのシベリアというお菓子、ロシア発祥ではなく、いつ誰が発案したのかもはっきりしていないそう。名前の由来も、断面をシベリアの永久凍土に見立てたという説や、大雪原を走るシベリア鉄道のようだからという説など、諸説あるようです。

カプロニが作っていた役に立たない? 飛行機

堀越二郎が尊敬と友情を抱いていたジャンニ・カプローニ。彼が創業した航空会社「カプロニ」では、大戦時にあまり役に立たない飛行機を造っていたとか。

その一つが、カプロニ Ca.60 トランスアエロ (Caproni Ca.60 Transaereo) 。なんと100名の乗客を乗せて大西洋を横断する無謀な計画の下に造られました。主翼が9枚もあり、8基のエンジンを積んだ巨大船。

しかし、1921年3月4日、イタリアのマッジョーレ湖で乗客60人分に相当する重量を積載して試験飛行を行いましたが、約18メートルの高さまで上昇しただけで、その後すぐに墜落。湖の底に沈んでしまったそうです。

セリフが棒読みの理由は?

今回、主演声優に『新世紀絵エヴァンゲリヲン』の監督として有名な庵野秀明が起用されたことも話題となりました。

「朴訥なキャラクターに声・話し方が合っている」という肯定的な意見と、「セリフが棒読みすぎる」という否定的な意見で完全に賛否両論となりましたが、「セリフが棒読み」という批判は主演に声優を外した過去の宮崎作品でも言われていたところ。これには、集客目的でアフレコに慣れない俳優を使うからという説や、宮崎監督が声にはこだわっていないとする説、宮崎監督が声優の演技が嫌いだからとする説など、諸説あるようです。

ただ、ワンピースのルフィー役で知られ、天空のラピュタでパズー役を務めた田中真弓さんが宮崎駿監督から「私は声優の演技は嫌いです」と面と向かっていわれたエピソードは有名です。

なお、今回は戦闘機などの音を人間の声で作ったり、音声をあえてモノラルで録音するなど、音にはこだわっているのだとか。声で効果音を作ろうと発案したのは宮崎監督。しかも、鈴木プロデューサーと2人でやろうとして、音の専門家たちから却下されたそう。好き嫌いは分かれるかもしれませんが、宮崎監督の独特の音の世界も堪能してみましょう。

 

いかがでしたか? これまでとはひと味違った宮崎映画ですが、一方で風の描写や飛行シーン、少女を見上げる構図など、宮崎監督が得意とする映像表現も存分に活かされている本作。

日本の私小説を宮崎アニメで読むような美しい情景もポイントで、過去のジブリ映画は苦手だったという人にも一見の価値ありです。まだ観ていないという人はもちろん、すでに観てしまったという人も、また別の角度から楽しんでみてはいかがでしょう。

(羊おとめ/サイドランチ)

※この記事は2013年08月06日に公開されたものです

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