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【第8話】父の趣味に隠されていた愛。クズ父だからこそ引き出せた夏の本音

#海のはじまり考察

やまとなでし子

恋愛・婚活コラムニストのやまとなでし子さんが、『海のはじまり』(フジテレビ系)を毎週考察&展開予想するコラムです。自分の子どもが7年間生きていることも、これまでをどう生きてきたかも知らなかった夏と、突然自分の人生に現れた海。2人の関係や、亡くなった彼女と娘との“母と子”の関係――。本作はさまざまな形の“親と子”のつながりを通して描かれる愛の物語。

※このコラムは『海のはじまり』8話までのネタバレを含んでいます。

©フジテレビ

◼️実の父との想像と違った再会

幼い頃に母が離婚して以来、実の父に会っていなかった夏(目黒蓮)。自分も実の子ども・海(泉谷星奈)と向き合ったことで、自分の父を知りたいと思い、父・溝江(田中哲司)に連絡を取ります。

久しぶりの再会は3歳の時以来なだけあって、お互い顔も覚えていないほど。夏は隣にいる海との関係を説明しようとするものの「複雑なの嫌いなんだよ」と溝江はまともに聞こうともしません。「で? 何?」と、夏にとっては大切な話が軽々しくあしらわれてしまい拍子抜けしてしまいます。

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「娘がいるって知ったのが2ヶ月くらい前で、それで自分も父親に会っておきたいと思うようになりました」と、伝えると「へー。それだけ? じゃあもう終わり? 会えたけど」と、逆に溝江はなにをここに思ってやってきたのか、疑問に思うほどの失礼かつ傍若無人な態度です。

◼️会ったことを後悔するレベルで酷い言葉のオンパレード

©フジテレビ

それでも夏は、溢れる気持ちをぐっと飲んで、聞きたかったことを質問します。

「写真、趣味だったんですか?」

いつも夏が使っているフイルムカメラはもともと父のもの。

この質問で、「写真という趣味」が父から夏に受け継がれたものであることを確認して、自分と父との血のつながりや見えない絆を確かめたかったのでしょうか。

しかし父の口から出てきたのは「え? (趣味は)釣り、麻雀、競馬」と期待外れの返事。

それどころか、「あとは何聞きたいの? 愛してたかどうかとかそういう話はなしね。産んでもないし、自分の子って保証も無いだろ男親なんて。(海も)お前の子かどうかなんて分かんないよ」「海? 変な名前。母親変わってんだな」と、頭に浮かんだ言葉や感情をフィルターにかけることなく、全てをそのまま吐き出す最低な父。人がどう感じるかなんて二の次で、自分の思うがままに生きている感。

あのすてきな夏の母は溝江の何が良くて結婚したのでしょう? 疑問しか抱かないほど、酷い人間性に、いつもは温厚な夏も海がいなくなった場で椅子を蹴るなど怒りを露わにします。

その後も「育ててなくても血がつながっていれば愛し続けているに違いないって期待しちゃったの? 育ててない親なんてしょうもないって分かっちゃったね。かわいそうに」となぜここまで人を傷つける必要があるのか疑うレベルで酷い言葉のオンパレード。

会ったことを後悔するレベルの再会となってしまいました。

◼️父の趣味の真実

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夏が通う写真屋さんに行くと、あれから溝江が夏を気にして通っていたことを知ります。一部始終を話すと「二人とも説明が下手なんだよなぁ」と溝江の居場所を教えてくれ、夏は再度父に会いに行くことに。

そこで知ったのは父の愛でした。

父にとっては「カメラが趣味」だったのではなく、「夏が趣味」だったこと。毎日違う表情をしている夏を残しておきたいから、カメラを買ったこと。離婚して夏に会わないならもうカメラはいらないから、夏に「欲しいか?」と聞いたら笑ったからあげたこと。

愛情や絆のかけらもないと思っていた父の愛の全てが、夏の愛用するカメラに詰まっており、まさにカメラは親子の絆だったのです。

◼️クズ父だからこそ引き出された夏の本音

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誰もが海と水季(古河琴音)の一件で辛い思いをしていて、でもみんな優しくて……。心優しい夏は、そのせいで誰にも本音が言えなくなっていました。

一方で清々しいほどに本音しか言わない父。クズだからこそ、夏も抱え込んで気持ちをぶちまけることができました。海の存在を知った時、本当はめんどくさいことになったと思っていたこと。生きていたから罪悪感から解放されたけど、弥生との結婚も考えていた中で、全てのタイミングが最悪だったこと。嫌いになって別れたわけじゃないのに水季の何も知らずに会えないまま亡くなってしまったこと。自分だって辛いけど、周りの人に気を遣ってわがままを言ったり、その人たちよりつらそうにしたりはできないこと。

夏が心に秘めてきた、生々しく、時に自分本位な本音が、クズ親父によって全て引き出され、夏は少し心が軽くなった様子。それに気づいている溝江も「みんな優しくて辛い悲しいってやつばっかりなのはしんどいな。その優しい皆さんに支えられてしんどくなったら連絡しろよ」と夏の性格と状況を一瞬で見抜き、自分の求められる役割を提示するなど、結局クズだけど優しい。

最初はどうなることかと思いましたが、夏が知りたかったことと、それ以上のものを得ることができた再会となりました。

◼️夏の目に海しか映らなくなってしまったさびしさ

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弥生(有村架純)は夏の全ての目線が海に向いていることを日常の端々から感じとり、寂しさを募らせているよう。スーパーで「今日ご飯作るよ」という夏の言葉に喜んだのも束の間、「栄養とかちゃんとしてるものが良くて……」とその献立の先には海が浮かんでいるのです。

海が現れてから、巻き込まれるように一気に毎日が変わってしまった弥生。

一方で夏は海を実子として認知することを決意し、自分の家族にそれを伝えます。「はいりょうかーい」「おめでと」と、それをえらいこととも、褒められることでもなく、自然に受け止める姿が月岡家らしさを感じます。

そして、その決意は水季の母・朱音(大竹しのぶ)にも。すると朱音は一通の手紙を夏に渡します。それは「夏くんが親になるって決めたら渡して」と水季から託されていた手紙。

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そしてその中にはもう一つ「夏くんの恋人へ」と書かれた、小さな手紙が……。

迷わず弥生に渡す夏ですが、弥生の心境は複雑なよう。そして、弥生がこの件で辛そうにしているせいで、夏が本音を言えず苦しんでいる状況も理解しており、その負のループにも悩んでいるようです。

次回は怒涛の勢いで夏の人生に巻き込まれ始めた弥生。彼女の心の内はこれからどうなっていくのでしょうか。また次回。

(やまとなでし子)

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