病気で休職することになった。頼れる制度を教えて!
働き方も、恋愛も、生活様式も、全てのあり方が少し前とは違う令和の今。数えきれない変化の裏にある「新マネーハック」を、さまざまな分野の専門家たちが回答します。今回の回答者は、丸山晴美さん。
今回のお悩み「病気で休職することになった。頼れる制度を教えて!」
実家から遠く離れて一人暮らしをしながら働いているのですが、病気で休職することになりました。貯金は人並みにあるものの、会社に伝えた時期にちゃんと復帰できるか自信も無く、とても不安です。傷病手当金など、こんな時に頼れる制度があれば教えてください。(30代半ば/専門職)
傷病手当を受けられる条件は?
休職中は、原則として給与やボーナスを受け取ることはできず、税金や社会保険料は変わらず払い続ける必要があります。その期間中に、被保険者の生活を保障するために設けられたのが「傷病手当」の制度です。
傷病手当とは、病気や怪我などによる会社を休んだ日が3日間続き(待期期間)、4日目以降、休んだ日に対して支給される制度のこと。傷病手当金は、1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給され、支給期間は最長1年6カ月です。ただし、会社から傷病手当金の額よりも多い報酬額の支給を受けた場合や、欠勤日を有給休暇にしたときは、傷病手当金は支給されません。
具体的な計算方法は、
1日あたりの支給額 = [支給開始日以前の継続した12カ月の各月の標準報酬月額の平均した額]÷30×2÷3
例として
標準報酬月額 280,000円 休業日数180日、休業中の給料が0の場合
支給額は1,119,600円になります。
ただし、国民健康保険に加入されている方、任意継続被保険者の方には支給されないので、ご注意ください。
ただし一部例外があり、新型コロナウイルス感染症に感染した場合に、一定の要件を満たすと、国民年金保険の加入者でも、傷病手当金を受けることができます。また、通勤中や仕事上で起きた病気や怪我の場合は「労災保険」が適用されますので、傷病手当は支給されません。
傷病手当はどのように申請するの?
傷病手当の申請手続きの方法は、会社によって異なりますので、事前に確認しておくと安心です。まずは病院を受診した上で、直属の上司に相談したのち、総務課やしかるべき部署や担当者へ報告、申請をしましょう。申請書は、申請者、会社、医師が記入する欄がありますので、それぞれに記入してもらう必要があります。
自分で申請手続きを行う場合、基本的には休職から復帰した後に、速やかに健康保険組合に申請する流れになります。長期の入院などで、自分ひとりで手続きするのが困難な場合は、担当部署や健康保険組合に相談してみてください。
また、復帰がかなわず退職することになった場合は、一定の条件を満たす場合は、退職後も継続して傷病手当金をもらうことができます。
退職後、再就職の意欲があり、就職活動を行えば失業保険金の給付や、収入が減少して保険料を納めることが経済的に困難な場合は、国民年金保険料の免除などが受けられますよ。
傷病手当を知らない会社員も少なくない!
基本的にはどの会社でも制度として設けられている傷病手当ですが、この制度を知らない社員は少なくありません。
あとから損をしてしまったと気づくことのないよう、基礎知識として頭の片隅に入れておき、もしもの事態に陥ったときは忘れずに活用しましょう。
ちなみに傷病手当には時効があり、受けることができるようになった日の翌日(起算日)から2年で給付金を受ける権利が消滅しますので、申請は忘れず速やかに行いましょう。また、時効は起算日の2年後から1日ずつ消滅していきます。
令和のマネーハック99
意外と知らない人も多い「傷病手当」。病気や怪我で3日以上休むときは活用しよう。
(監修:丸山晴美、取材・文:高橋千里、イラスト:itabamoe)