「さしあたって」の意味や使い方とは? 例文や類語・言い換え表現を解説
ビジネスシーンでも見聞きすることの多い「さしあたって」というフレーズ、上手に使いこなせる自信はありますか? 今回は「さしあたって」の意味や使い方、例文、類語・言い換え表現を紹介します。
「さしあたって」は、「先のことはともかく、今のところは」という意味で使われる言葉です。
日常会話からビジネスまで広く使われる表現ですが、意味や使い方が分からない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、「さしあたって」の使い方について、例文を交えながら解説していきます。
また、記事の最後では、言い換え時に便利な「さしあたって」の類語についても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
「さしあたって」の意味とは
「さしあたって」は、「先のことはともかく、今のところは」という意味を表す言葉です。
日常会話からビジネスまで、幅広い文脈で使われますが、特にビジネスシーンでの使用が多いといえます。
ただし、「さしあたって」には「未来がどうなるかはわからないが、とりあえず」という間に合わせのニュアンスがあるため、使用シーンを誤ると失礼になる可能性があります。
そのため、目上の人や取引先などを相手にする会話の場合は、使用時によく注意しなければなりません。
「さしあたって」と「さしあたり」の違い
「さしあたって」は「さしあたり」を連用形にした言葉です。「さしあたり」の意味を辞書で引くと、以下のように掲載されています。
さしあたり【差し当り】
(1)この場合。今のところ。当面。さしあたって。
(2)さしせまって。突然。
(岩波書店『広辞苑 第七版』)
「さしあたって」と「さしあたり」は、どちらも同じ意味を表します。違いとしては、「さしあたって」が連用形である点が挙げられます。
どちらの場合も、当面のことを曖昧に表現する言葉であり、使用シーンによっては失礼にあたる可能性があるので注意が必要です。
「さしあたって」の敬語は?
「さしあたって」と「さしあたり」は、いずれも文頭に沿える副詞、あるいは接続詞のようにして使えます。そのため、「ただし」や「しかし」などと同じく、目上の人を相手にする場合でも、わざわざ敬語表現にする必要はありません。
それでも丁寧さを高めたい場合は、「さしあたりましては」を使うとよいでしょう。響きが丁寧になるため、ビジネスシーンでの会話ではしばしば使われる表現です。
ただし、「さしあたりまして」にしたところで曖昧な表現であることは変わりません。そのため、あまり多用はせず、ここぞというタイミングでのみ使うようにしましょう。
「さしあたって」の漢字表記は?
「さしあたって」を漢字で表記すると「差し当たって」あるいは「差当たって」となります。
しかし先述の通り、「さしあたって」は副詞や接続詞のように使われるため、ひらがなで表記される方が一般的だといえます。
あえて「差し当たって」と漢字表記にすると、「ただし」を「但し」、「しかし」を「然し」と表記するのと同様、少し堅苦しいイメージになる可能性があるので注意しましょう。
▶次のページでは、具体的な使い方を例文とともに解説します。
「さしあたって」の使い方【例文付き】
「さしあたって」は、「さしあたって、○○する」という形で、文頭に付けて使うのが正しい使い方です。
また、「○○して、さしあたって○○する」と、文中に入れ込むこともできます。なお、「さしあたり」の場合も同様です。
例文
・さしあたって、必要な数量だけを発注しておきましょう。
・ご希望のスケジュールでさしあたって問題ありませんが、変更があれば随時ご連絡いたします。
・まだ人数などは決めていませんが、さしあたり予約だけしておきました。
・来月のイベントに必要な人員が足りていないので、さしあたり求人を出しましょう。
▶次のページでは、「さしあたって」の類語や言い換え表現を紹介します。
「さしあたって」の類語・言い換え表現
「さしあたって」は未来のことをぼかし、明言を避ける言葉なので、使用シーンによっては失礼になる可能性があります。
以下で紹介する類語・言い換え表現と組み合わせて、失礼なくスマートにやりとりができるようにしていきましょう。
「取り急ぎ」
「取り急ぎ」は、「今のところ必要なこと」を連絡したり作業したりする意味で使われます。
「さしあたって」と同様に文中で副詞のように使え、「取り急ぎご連絡までに」と、メールの文末などで使用される機会も多いです。
「取り急ぎ」には「さしあたって」と異なり、未来のことをぼかすニュアンスはありません。そのため、ビジネスシーンでも失礼なく多用できる表現だといえます。
「現時点では」
「現時点では」は、文字通り「現在分かっていること」を表す際に、副詞のように使われる言葉です。
未来のことをぼかすニュアンスは「さしあたって」と同様ですが、「現時点では」は主に「分からない・分かっている」や「不明・判明」など、理解や認識の有無を指して使われます。
それ以外の意味で使うと違和感が生じる可能性があるので、使用シーンに気を付けて活用しましょう。
「ひとまず」
「ひとまず」は、「先のことは一旦置き、今の時点で物事に区切りをつけること」を表す言葉。
漢字だと「一先ず」と表記しますが、副詞として使う場合は「ひとまず」と平仮名表記するのが一般的です。
先のことをぼかす点で、「ひとまず」は「さしあたって」と非常によく似たニュアンスを持っています。ただ、「さしあたり」よりも現状に区切りを付ける意味合いが強いため、ビジネスで使用しても曖昧とは受け取られにくい表現でしょう。
「さしあたって」ばかり使ってしまって印象が気になる場合は、適宜「ひとまず」を織り交ぜてみましょう。
「当面は」
「当面は」は、「しばらくの間」を意味するため、「さしあたって」の言い換え表現として利用できます。
「当面は」は現在以降も引き続くニュアンスで、「さしあたって」はあくまで現在のことのみというニュアンスを持っています。そのため、完全な同意表現として言い換えられるわけではなく、文脈によっては不自然になる場合があるので注意が必要です。
また、「当面は」と「当面の間は」と表現されることもありますが、「当面」と「間」が同じ意味で冗長に感じる人もいるため避けた方が無難でしょう。
「とりあえず」
「とりあえず」は、「何かを急いで間に合わせに行うこと」を表します。「さしあたって」、および前述の「取り急ぎ」と似た意味ですが、こちらはカジュアルなイメージなので、ビジネスシーンでの使用はおすすめできません。
日常会話では「とりあえず」、ビジネスシーンではその他の類語表現というように、場面に合わせて表現を切り替えていきましょう。
「さしあたって」は暫定的なことだけを表したい時に使える言葉
「さしあたって」は、「先のことはともかく、今のところは」という意味を表し、日常会話からビジネスまで幅広く使える言葉です。
とはいえ、詳細をぼかすために使われる表現でもあるので、ビジネスシーンでの多用は控えた方が無難でしょう。
今回紹介したことを参考に、「さしあたって」や類語表現を適宜使い分け、相手に失礼のないコミュニケーションを取るようにしましょう。
(にほんご倶楽部)
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