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「下記の通り」の正しい使い方は? 「以下の通り」との違いと例文も紹介

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

ビジネス文書やメールでよく目にする「下記の通り」というフレーズ。この言葉の正しい意味や「以下の通り」との違いについてご存知でしょうか? 今回は、「下記の通り」の使い方を、ライティングコーチの前田めぐるさんに詳しく教えてもらいました。

「下記の通り」は、ビジネス文書やメールでよく使う言葉です。

しかし、使い慣れた言葉でもその正しい使い方があやふやなままというのは案外よくあるもの。

この機会に「下記の通り」の意味や表記の仕方、ビジネスシーンで使う場合に気を付けたいポイントを把握しておきましょう。

「下記の通り」の意味

「下記の通り」は「かきのとおり」と読み、「『記』の見出しより下に書いたとおり」という意味です。

文書やメールなど改まった文章で、本文とは別に必要事項を分けて書く時に使われます。

簡潔に情報をまとめることができるため、特にビジネスシーンで重宝されるフレーズといえるでしょう。

「下記の通り」と「下記のとおり」はどちらが正しい?

「下記の通り」と「下記のとおり」は、両方とも正しい書き方です。

ただし、令和4年に更新された『公用文作成の考え方』では、「〜のとおり」と書く場合、次のようにかな書きが推奨されています。

通り→とおり(「通知のとおり…」「思ったとおり」等。「大通り」などは漢字で書く。

(引用:文化庁文化審議会『公用文作成の考え方』)

これはあくまで官公庁などで使われる公用文についてのルールです。一般的なビジネス文書では「下記の通り」を使用しても問題ありません。

しかし、社内ルールが公用文に準じている場合は、「下記のとおり」を使う方が好ましいでしょう。

また、同一文書の中で「下記の通り」と「下記のとおり」が混在しないよう、いずれかに統一するのがおすすめです。※以下、本記事では「下記のとおり」を使用。

「下記のとおり」の正しい使い方

「下記のとおり」を使う場合、他にどのようなルールがあるのでしょうか?

(1)「記」と「以上」で挟む「記書き(きがき)」が一般的

「下記のとおり」は、「記」とセットで使うのがルールです。

順序としては、「下記のとおり」を含む文章の下に「記」を書き、箇条書きで必要事項を記します。これを「記書き」といいます。

一般的に、記書きは「記」で始め、「以上」で締めくくるのが原則です。

最後の「以上」がない文書も時々見かけますが、「以上」を使えば「これより後には何もありません」と明示することができます。

(2)ビジネス文書や改まった案内文で使う

「下記のとおり」を使うのは、次のような場合です。

・案内や通知、依頼などを行うビジネス文書やビジネスメール

・式典、会合など改まった案内状

いずれも横書きの場合に使います。縦書きでは「左記のとおり」を使いましょう。

(3)1枚で終わる文書の中で使う

要点を簡潔にまとめる目的で使われるため、1枚の文書で終わらせるのが原則です。2枚以上にわたる場合は、「別記のとおり」「別紙のとおり」を使いましょう。

「下記のとおり」を使った例文

「下記のとおり」は、次のような場面で使えます。例文を見ていきましょう。

(1)下記のとおりご請求申し上げます

ビジネス文書やメールの文章で請求額を伝える時に使います。

例文

〇〇の件、下記のとおりご請求申し上げます。

(2)下記のとおりご連絡いたします

何らかの連絡を行う時に使えるフレーズです。

例文

先般お問合せいただきました〇〇の在庫数について、下記のとおりご連絡いたします。

(3)下記のとおりご案内申し上げます

商品、催事、道順などの情報を案内する場合に使います。

例文

先日お電話でお話しした新製品について、下記のとおりご案内申し上げます。

(4)下記のとおり開催いたします

発表会や説明会、展示会など催事を案内する場合に使えるフレーズです。

例文

開店記念キャンペーンを下記のとおり開催いたします。

(5)下記のとおり回答いたします

先方からの問合せに答える時はこのような言い回しもできます。

例文

ご質問いただきました部品の詳細について、下記のとおり回答いたします。

(6)下記のとおりお知らせいたします

何らかの情報を知らせる場合に使えるフレーズです。

例文

改装のため、臨時休業することとなりました。下記のとおりお知らせいたします。

(7)「下記のとおり承りました」

注文や依頼を受けた場合に使います。

例文

ご注文を下記のとおり承りました。

「下記のとおり」を使う時の注意点と具体例

ビジネス文書とビジネスメールで使う場合に気を付けたいポイントをまとめます。

ビジネス文書で使う場合の注意点

ビジネス文書では、次の順序で記載します。( )内は記載する位置です。

①年月日(右寄せ)

②宛名(左寄せ)

③発信者(右寄せ)

④タイトル(中央)

⑤主文・記(中央)

⑥要点を箇条書き

⑦以上(右寄せ)

文章の中身をもう少し詳しく説明すると、下記のようになります。

主文:「拝啓」「謹啓」などの頭語で始め、時候のあいさつや感謝の言葉を記載。

本文:用件を書き、「下記のとおり〜」と案内。

末文:「敬具」「謹白」などの結語で文書を終える。

記書き:結語から1行空けて、「記」を大きめに中央に配置。要点を箇条書きにし、改行して右寄せで「以上」と締めくくる。

例えば、社外向け文書であれば、次のような構成でまとめます。

ビジネス文書の具体例

メールで使う場合の注意点

ビジネスメールでは、文書のような改まったあいさつは不要です。社外向けメールであれば、「お世話になっております」などで始めると良いでしょう。

記書きも使うことができますが、メールの場合はパソコンやスマートフォンなど、相手の読む環境に左右されるため、印刷された文書のように「記」を中央寄せにするのが難しくなります。

そこで、左寄せで「記」を1文字書き、その下に改行して要点を箇条書きにすると良いでしょう。次に例文を示します。

社内向けメール具体例

お疲れ様です。
今月も下記のとおり広報ミーティングを行います。
ぜひご参加くださいますようお願いいたします。

広報ミーティング
日時:〇〇年◯月◯日(◯曜日)午後◯時〜◯時
場所:オンラインで行います(URL: https://〜)

以上よろしくお願いいたします。

ビジネスメールでも「記+以上」を使えますが、例文のように「以上よろしくお願いいたします」などで終わらせると、さらに丁寧です。

また、「記」の1文字だけ左に寄せて改行するのがアンバランスで読みにくいと感じる場合には、無理に文中で「下記のとおり」を使う必要はありません。

「下記のとおり」と似た表現で「以下のとおり」というフレーズがありますので、次段で説明します。

「下記のとおり」と「以下のとおり」の違い

「以下のとおり」とは、「これより下に書くとおり」という意味です。

「下記のとおり」と同じように「本文+要点」を示したい時に使えますが、微妙な違いがあります。

「以下のとおり」では「記」が不要

「以下のとおり」を使う場合には、「記」を使った記書きを必要としません。

代わりに、見出しや仕切り線で本文と箇条書き部分をはっきり分けると良いでしょう。

「以下のとおり」は複数枚でも使える

「下記のとおり」では、記書きを使った文書をなるべく1枚以内にまとめるようにしますが、「以下のとおり」では、それ以下に示す内容が複数枚にわたっても構いません。

ただし、枚数が多くなる場合には、別の書類として「別紙のとおり」と書く方がすっきりするでしょう。

「下記のとおり」を正しく使おう

ビジネス文書やビジネスメールと聞くだけで苦手意識を持つ人は多いかもしれません。

しかし、今回の「下記のとおり」のような文書形式をマスターすれば、意外とスムーズに書けるものです。

ポイントは、事前に要点を書き出して整理しておくこと。「下記のとおり」を使いこなしてまとめ力を高めましょう。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

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