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【時候の挨拶】3月に使える挨拶言葉は? 書き方や文例を紹介

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

仕事で案内状などの文面を作成する時、プライベートでかしこまった手紙を書く時など、どう書き始めたらいいか悩みませんか? そこで便利なのが「時候の挨拶」。今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、3月の時候の挨拶を教えてもらいました。

暦の上での春から、気温や光の変化を体感する春へ。

まだ浅い春ながらも、少しずつ寒さがゆるみ、樹々や草花もつぼみを開きます。

進級、卒業、入学、就職、異動、引越し……出会いと別れが交錯するこの時期は、寂しさと楽しさ、そして明るさや希望を感じさせます。

始まりの春。リアルな質感のある手紙で、ご縁を深めてはいかがでしょう。

時候の挨拶とは?

時候の挨拶とは、季節や月の気候・行事を踏まえた挨拶で、手紙やメールの初めの部分に書く言葉や文章を指します。

「早春の候」のように、「熟語などの一語」+「候」という形もあれば、「春とはいえ肌寒い日が続きますが」のように、文として書く形もあります。

ビジネスシーンやプライベートでは、書面や手紙での連絡、改まったメールの冒頭部分において使われます。

3月上旬・中旬・下旬の「時候の挨拶」

公文書やビジネスレターなどでは「〜の候」で始めることが多いですね。「候」の代わりに使える言葉として、「頃・節・折・季節・みぎり」などがあります。

なお、「みぎり」とは、「時、折、時節」という意味です。漢字では「砌」ですが、あまりなじみがないため、ひらがなで表記する方が良いでしょう。

「時候の挨拶」一覧

3月上旬、中旬、下旬に使える時候の挨拶は以下の通りです。

なお、記載されている時期は、あくまで目安です。

「春寒(しゅんかん)の候」3月上旬

「早春(そうしゅん)の候」3月上旬

「浅春(せんしゅん)の候」3月上旬

「仲春(ちゅうしゅん)の候」3月中旬

「春色(しゅんしょく)の候」3月中旬

「桃花(とうか)の候」3月中旬

「春和(しゅんわ)の候」3月中旬〜4月上旬

「春光(しゅんこう)の候」3月下旬〜4月上旬

「春分(しゅんぶん)の候」春分(2022年の春分は3月21日)から清明(2022年の晴明は4月5日)の前日まで

「春暖(しゅんだん)の候」3月下旬〜4月全般

2022年の春分の日は、3月21日。昼と夜の長さが、ほぼ同じになるこの日を過ぎると、昼が少しずつ長くなり、春爛漫の季節へと向かいます。

親しい方へは、「お子さまも新1年生ですね」「○○さんが転勤でこちらへ来られて出会ってから、もう3年も経つのですね」など、相手のご家族やご縁の始まりなど具体的な内容を書くのも良いでしょう。

そうすることで、いっそう心のこもったお便りになります。

例文

春寒ゆるむ候、そちらは○○の桜が咲き始める頃でしょうか。

春光うららかな季節、お変わりなくお過ごしのことと存じます。

桜便りが待ち遠しい頃です。新1年生のお嬢さまもワクワクしていらっしゃることでしょうね。

日一日と春めくこの頃、ご清祥にてご活躍のことと存じます。

暑さ寒さも彼岸までとはよく申しますが、日ごとに過ごしやすくなってまいりました。

3月の「結びの挨拶」(例文付き)

続いては、3月にふさわしい結びの挨拶を紹介します。

「結びの挨拶」とは、本文で用件などを述べた後、結語(「敬白」「敬具」「かしこ」など)の前に添えるものです。

「末筆ながら、○○さまのご健康とご活躍を願っております」のように、相手の健康や繁栄を願ったり、「○○さまによろしくお伝えください」などのように、伝言を依頼したりする役割があります。

ビジネスや卒業・入学シーンで使える例文

就職や異動、卒業や入学など、人の動きが活発となる3月。そんなシーンにふさわしい結びの挨拶を用いた例文を、いくつか紹介します。

例文

季節の変わり目ですので、何卒ご無理のないようお過ごしください。

・昨日は、優しい春雨に木々が喜んでいるようでした。お互い穏やかに、健やかに過ごしましょう。

・今年は、営業部恒例の花見をご一緒できず淋しいですが、○○部長の新天地でのご活躍を願っております。

巣立ちの春です。卒業生の皆さんの新たな場所での活躍を祈っています。

・ご子息のサクラサク、うれしい吉報ですね! おめでとうございます。

3月の時候の挨拶「シーン別の例文」

時候の挨拶を組み入れた例文を、ポイントともに紹介します。

今回は「壮行会のお知らせ」「転任挨拶状」です。

出会いと別れの春。これまでのご縁に感謝するとともに、その苦労を労い、新たな出発を見届けましょう。

親しい方へは、「お子さまも新1年生ですね」「○○さんが転勤でこちらへ来られて出会ってから、もう3年も経つんですね」など、相手のご家族やご縁の始まりなど具体的な内容を書くのも良いでしょう。

壮行会のお知らせ

これまで一緒に頑張ってきた仲間が転任する……淋しくはありますが、盛大に送り出してあげたいですね。

例文では、初めの時候の挨拶をあえて省きました。型式重視の文体よりも、例文のようにフランクな書き方の方がしっくりくる場合もあるためです。

どれほどフランクにするかという加減は、部署の雰囲気に合わせて工夫しましょう。

例文

本年度も残すところわずかとなりました。

さて、早速ですが、すでに皆さんもご存じのように、当営業部の○○さんが4月から○○支店へ異動する運びとなりました。

ついては、以下の通り壮行会を行います。

入社11年目にして新店のマネージャーとなられる○○さんの抜擢は、私たちにとってもうれしく光栄なことです。みんなで盛大に送り出しましょう!

万障お繰り合わせの上、ご参加をお待ちしています。

<記>
~以下、日時・会場・会費・幹事連絡先など必要事項を明記~

転任挨拶状

続いては、壮行会で送り出してくれた部署へのお礼を兼ねた転任挨拶状です。

これまでの感謝を述べるだけなら一般的ですが、「これからも力を貸してください」とご縁を育むようなメッセージがあると、今後の交流にもつながるでしょう。

例文

拝啓 春光穏やかな頃、皆さんお元気で活躍されていることと思います。

先般は、私の転任に際し、賑やかに暖かく送り出してくださり、感謝に堪えません。久しぶりに飲み明かし、新人だった頃のことも懐かしく思い出しました。上司のご指導、同僚・部下とのご縁に恵まれ、幸せな11年間でした。

こちらは春まだ浅く、桜の見頃もこれからです。支店のV字回復に少しでも貢献できるよう頑張り、いつか満開の花を咲かせられたらと思います。離れてはしまいましたが、みなさんこれからも、お知恵やお力を貸してくださいね。

そして、ご出張などでこちらへ来られる際は、ぜひともご連絡ください。楽しみにお待ちしています。まずは、お礼まで申し上げます。

敬具

時候の挨拶をビジネスレターで使う場合の書き方と注意点

最後に、基本的な手紙の形式と注意点を紹介します。

手紙の形式

手紙の形式に必ずしも決まりはありません。個性的な手紙が喜ばれることも多いものです。

ただし、面と向かって会う時とは違い、特にビジネスシーンでは失礼にならないようにと考えることが多いため、慣習的な順序に沿った手紙の形式があります。

大きく分けると「前文・本文・末文・後付け・副文」の順です。

「前文」:頭語

「頭語」とは手紙の冒頭に用いる言葉で、後述する「結語」と対応するものを用います。

頭語には、次のようなものがあります。

【一般的な頭語】
拝啓・拝呈・啓上・啓白・呈上・拝進

【特に丁重な頭語】
謹啓・粛啓・恭啓・謹呈・敬呈

【返信する場合の頭語】
拝復・復啓・敬復・拝披

【返信が来ないうち再送する場合の頭語】
再啓・再呈・追啓・再白・再陳

急ぎの場合の頭語】
急啓・急呈・急白・急陳・火急

【時候の挨拶を省略する場合の頭語】
前略・略啓・略陳・草啓・冠省・前省・略省・寸啓

「前文」:時候や安否の挨拶

頭語の後に1文字分空けて、前段で紹介したような「時候の挨拶」を書きます。

事務的な文章では時候の挨拶を省き、「時下ますますご清栄のこことお慶び申し上げます」などと書くこともできます。

安否の挨拶は必須ではありませんが、書く場合には、時候の挨拶の後に続けます。

まず相手の安否に触れてから、次に自分の安否や近況について「私どもは元気に過ごしております」などと述べます。

また病気見舞いや相手側に不幸があった時には、自分側の安否や近況は述べないようにします。

「本文」:起辞

「前文」である時候の挨拶の後に、改行をし、1文字下げて書きます。

起辞とは、書き出しから用件に移る際の接続詞で、「さて・ところで・早速ながら・このたびは・今般」などがあります。

返信の際には「ついては・つきましては」などを使います。

「本文」:用件

起辞に続いて、用件を書きます。

移転・転任・結婚・転職・退任・お礼など、さまざまな用件があります。気配りをしつつも、誤解や不明のことが生じないよう、具体的に書きましょう。

「末文」:結びの挨拶

「本文」の用件の後に、改行をし、1文字下げて書きます。

基本的には相手の健康や繁栄を願う言葉を書きます。さらに、伝言を添える場合もあります。

「末文」:結語

結びの挨拶と同じ行の最下部か、改行した次行の下方へ配置します。

「頭語」と対応させる言葉を用います。具体的には、次のようなものがあります。

【一般的な結語・返信や再送する場合の結語】
敬具・拝具・拝白・敬白・拝答

【特に丁重な結語】
敬白・謹白・謹具・再拝・謹言・頓首

【急ぎの場合・時候の挨拶を省略した場合の結語】
早々・怱々・不一・不二・不備・不尽

「後付け」:日付

「末文」の後に改行し、2~3字下げて年月日を書きます。

「後付け」:署名

日付の次行の下方に、差出人名を(自筆で)書きます。

「後付け」:宛名・敬称

署名の次行の上方に、相手の氏名を書き、「様」「先生」などの敬称を添えます。

宛名が連名の際は、敬称はそれぞれに付けます。なお、「御中」は会社や団体に用います。

「副文」

副文とは、書き漏れたことや付け加えたいことを短く添える文章のこと。「追伸・追白・尚々」などと書き出します。

ただし、副文には「重ねて申し上げる」というニュアンスがあるため、お悔やみ状や目上の人への手紙では使用しないのがマナーです。

時候の挨拶についての注意点

お詫び状や見舞状など、急な手紙では頭語や時候の挨拶を省き、以下のようにすぐ本文に入ります。

お詫び状(例文)

・先般はご迷惑をお掛けし、大変申し訳なく思っております。

災害の見舞い状(例文)

・このたびの台風○○号による浸水、被害が大きく心配しております。状況はいかがでしょうか。

病気の見舞状(例文)

*・このたびはご入院されたとのこと、驚いております*。

病気見舞いでは「たびたび」「四」などの忌み言葉に気を付けましょう。

また、長期の入院で文通のようにやりとりしている手紙では、季節の言葉も入れて良いでしょう。

手紙で縁を育むきっかけに

春は、出会いと別れの季節とはよく言われます。

しかし、その形は人の数ほどあり、どれも同じではありません。縁が切れてそれっきりになることもあれば、距離が離れただけでつながり続けることもあります。

離れてしまった時こそ、あらためて縁を結び直す良い機会と考えたいですね。むしろ、互いの可能性を広げる未来への糸口かもしれません。

今回の例文はそんな思いを込めて書いてみました。せっかく手紙を書くのであれば、縁を育てるきっかけとしたいですね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

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