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【時候の挨拶】1月に使える挨拶言葉は? 書き方や文例を紹介

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

仕事で案内状などの文面を作成する時、プライベートでかしこまった手紙を書く時など、どう書き始めたらいいか悩みませんか? そこで便利なのが「時候の挨拶」。今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、1月の時候の挨拶を教えてもらいました。

淑気(しゅくき)あふれる年の初め。新年の空気はどこか清々しく、おめでたい気配が漂うかのようです。

「今年もまたどうぞよろしく」空も光も木々までも、そう語りかけているような新たな気になります。

もちろん、人と人の間でもまた温かなメッセージでこの1年を始められるとうれしいですね。

時候の挨拶とは?

時候の挨拶とは、季節や月の気候・行事を踏まえた挨拶で、手紙やメールの初めの部分に書く言葉や文章を指します。

「大寒の候」のように、「熟語などの一語」+「候」という形もあれば、「寒の入り、寒さも一段と厳しくなってまいりました」のように、文として書く形もあります。

ビジネスシーンやプライベートでは、書面や手紙での連絡、改まったメールの冒頭部分において使われます。

1月の「時候の挨拶」

1月の手紙に使える時候の挨拶を紹介します。

公文書やビジネスレターなどでは「〜の候」で始めることが多いですね。「候」の代わりに使える言葉として、「頃・節・季節・みぎり」などがあり、「寒中の候」は「寒中の折」「寒中のみぎり」などにも言い換えられます。

なお、「みぎり」とは、「時、折、時節」という意味です。漢字では「砌」ですが、あまりなじみがないため、ひらがなで表記する方が良いでしょう。

「新春(しんしゅん)の候」1月1日から松の内(1月7日)、または長くても小正月(1月15日)まで使う年賀の挨拶

「初春(はつはる)の候」1月1日から松の内(1月7日)、または長くても小正月(1月15日)まで使う年賀の挨拶

「迎春(げいしゅん)の候」1月1日から松の内(1月7日)、または長くても小正月(1月15日)まで使う年賀の挨拶

「大寒(だいかん)の候」大寒(2022年の大寒は1月20日)から立春(2022年の立春は2月4日)の前日まで

「寒中(かんちゅう)の候」小寒(2022年の小寒は1月5日)から節分(2022年の節分は2月3日)まで

「寒風(かんぷう)の候」1月中旬・下旬

「降雪(こうせつ)の候」(相手の地域に)雪が降った頃

「甚寒(じんかん)の候」1月中旬・下旬

「厳冬(げんとう)の候」1月中旬・下旬

上記の時期は、あくまで目安です。

1月の時候の挨拶は、厳しい寒さを感じさせる言葉がどうしても多くなってしまいます。

それでも心を弾ませてくれるのは「春」の文字。「新春」「迎春」「初春」……と、真冬にも関わらず「春」の字が使われているのは、旧暦の1月からが春とされていた旧暦の名残です。

季節を先取りする日本人の美意識は、こうしたことからも育まれてきたのでしょうね。

もちろん、冷たさや寒さをネガティブに感じる必要もありません。凛とした空気によって気持ちが引き締まることもあるでしょう。

寒気の中に立ち昇る煮炊き物の湯気や、手を温める白い息……白を温かいと感じさせてくれるのも、1月がもたらす季節の贈り物なのかもしれません。

例文

大寒を過ぎ、心なしか春の兆しを感じる頃、お元気でお過ごしのことと存じます。

淑気満ちる初春の頃を迎えました。

凛とした空気に風花が舞う頃、いかがお過ごしでしょうか。

寒中お見舞い申し上げます。○○さまにはますますご活躍のこととお慶び申し上げます。

寒に入り、冷気もひとしお。おでんや鍋料理の出番ですね。

1月の「結びの挨拶」(例文付き)

続いては、1月にふさわしい結びの挨拶を紹介します。

「結びの挨拶」とは、本文で用件などを述べた後、結語(「敬白」「敬具」「かしこ」など)の前に添えるものです。

「末筆ながら、○○さまのご健康とご活躍を願っております」のように、相手の健康や繁栄を願ったり、「○○さまによろしくお伝えください」などのように、伝言を依頼したりする役割があります。

また、よく使われる「ご自愛ください」は、「お体を大切にしてください」という意味で、男女・立場の上下に関係なく使える表現です。

「ご自愛専一に」とは「ご自愛最優先で」という意味で、さらに丁寧なフレーズです。

例文

新たな気持ちで、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

寒さ厳しき折、ご無理のないようお過ごしください。

新年にあたり、スタッフ皆さまのご健康とご多幸を願っております。

立春間近とはいえ、まだまだ寒さが続きます。何卒ご自愛専一にお過ごしください。

寒中お伺い申し上げます

余寒お見舞い申し上げます

1月の時候の挨拶「シーン別の例文」

1月の時候の挨拶を組み入れた例文を、以下に紹介します。

今回は、目上の相手に年賀状を出しそびれた時に送る「遅めの年賀状」、喪中の相手に送る「寒中見舞い」です。

遅めの年賀状(目上の相手に年賀状を出しそびれた場合)

早めに年賀状を出したかったのに、出しそびれてしまった……。そんな時は、松の内までに年賀状を出すといいでしょう。

関東の松の内は1月7日まで、関西は1月15日まで、東海中部は混在しているようです。

ちなみに1月7日までに差し出せば、消印なしの年賀状を届けられます。8日を過ぎ、消印が押されても年賀状として出したい場合は、相手方の松の内に合わせると良いでしょう。

以下の例文は、仕事でお世話になっている目上の相手に出す遅めの年賀状です。新年のフレーズは「。(句点)」を打ちません。

目上の相手に対する書き出しとしては、「ご丁寧な」「温かい」などが良いでしょう。

例文

謹んで新年のご挨拶を申し上げます(大きな字で)

ご丁寧に年頭のご挨拶を頂戴し、誠にありがとうございました。
年末から出張続きで、お年賀状が遅れましたことお詫び申し上げます。
旧年中はひとかたならぬご厚情を賜り、心より感謝しております。本年もご教示の程よろしくお願い申し上げます。

寒中見舞い(喪中の相手に送る場合)

寒中見舞いは、寒い季節に相手のことを思いやる気持ちを込めて送る挨拶状です。

季節の挨拶という意味だけでなく、昨今ではさまざまな理由で寒中見舞いを送ります。

・何らかの理由で年賀状を出しそびれた

・前年末、身内に急な不幸があり通常の喪中はがきが間に合わなかった

・喪中の自分に、相手から寒中見舞いが届いたため返信したい

・喪中の相手に年賀状の代わりとして送る

ここでは、最後に挙げた喪中の相手に年賀状の代わりとして送る寒中見舞いを紹介します。

なお、寒中見舞いは松の内(1月7日、もしくは1月15日)が過ぎてから立春前日(2022年は2月3日)までの間に送ります。

「年賀」の文字は使わず、「年始」と書きます。また、相手が目上の場合は「お見舞い」ではなく「お伺い」とする方が丁寧です。

例文

寒中お伺い申し上げます(大きい文字で)

いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
ご服喪中と伺い、年始のご挨拶を控えさせていただきました。
寂しくなられたことと存じます。どうぞお力落としのないようにと願っております。
時節柄、お風邪を召しませぬようお過ごしください。

時候の挨拶をビジネスレターで使う場合の書き方と注意点

最後に、基本的な手紙の形式と注意点を紹介します。

手紙の形式

手紙の形式に必ずしも決まりはありません。個性的な手紙が喜ばれることも多いものです。

ただし、面と向かって会う時とは違い、特にビジネスシーンでは失礼にならないようにと考えることが多いため、慣習的な順序に沿った手紙の形式があります。

大きく分けると「前文・本文・末文・後付け・副文」の順です。

「前文」:頭語

「頭語」とは手紙の冒頭に用いる言葉で、後述する「結語」と対応するものを用います。

頭語には、次のようなものがあります。

【一般的な頭語】
拝啓・拝呈・啓上・啓白・呈上・拝進

【特に丁重な頭語】
謹啓・粛啓・恭啓・謹呈・敬呈

【返信する場合の頭語】
拝復・復啓・敬復・拝披

【返信が来ないうち再送する場合の頭語】
再啓・再呈・追啓・再白・再陳

【急ぎの場合の頭語】
急啓・急呈・急白・急陳・火急

【時候の挨拶を省略する場合の頭語】
前略・略啓・略陳・草啓・冠省・前省・略省・寸啓

「前文」:時候や安否の挨拶

頭語の後に1文字分空けて、前段で紹介したような「時候の挨拶」を書きます。

事務的な文章では時候の挨拶を省き、「時下ますますご清栄のこことお慶び申し上げます」などと書くこともできます。

安否の挨拶は必須ではありませんが、書く場合には、時候の挨拶の後に続けます。

まず相手の安否に触れてから、次に自分の安否や近況について「私どもは元気に過ごしております」などと述べます。

また病気見舞いや相手側に不幸があった時には、自分側の安否や近況は述べないようにします。

「本文」:起辞

「前文」である時候の挨拶の後に、改行をし、1文字下げて書きます。

起辞とは、書き出しから用件に移る際の接続詞で、「さて・ところで・早速ながら・このたびは・今般」などがあります。

返信の際には「ついては・つきましては」などを使います。

「本文」:用件

起辞に続いて、用件を書きます。

移転・転任・結婚・転職・退任・お礼など、さまざまな用件があります。気配りをしつつも、誤解や不明のことが生じないよう、具体的に書きましょう。

「末文」:結びの挨拶

「本文」の用件の後に、改行をし、1文字下げて書きます。

基本的には相手の健康や繁栄を願う言葉を書きます。さらに、伝言を添える場合もあります。

「末文」:結語

結びの挨拶と同じ行の最下部か、改行した次行の下方へ配置します。

「頭語」と対応させる言葉を用います。具体的には、次のようなものがあります。

【一般的な結語・返信や再送する場合の結語】
敬具・拝具・拝白・敬白・拝答

【特に丁重な結語】
敬白・謹白・謹具・再拝・謹言・頓首

【急ぎの場合・時候の挨拶を省略した場合の結語】
早々・怱々・不一・不二・不備・不尽

「後付け」:日付

「末文」の後に改行し、2~3字下げて年月日を書きます。

「後付け」:署名

日付の次行の下方に、差出人名を(自筆で)書きます。

「後付け」:宛名・敬称

署名の次行の上方に、相手の氏名を書き、「様」「先生」などの敬称を添えます。

宛名が連名の際は、敬称はそれぞれに付けます。なお、「御中」は会社や団体に用います。

「副文」

副文とは、書き漏れたことや付け加えたいことを短く添える文章のこと。「追伸・追白・尚々」などと書き出します。

ただし、副文には「重ねて申し上げる」というニュアンスがあるため、お悔やみ状や目上の人への手紙では使用しないのがマナーです。

時候の挨拶についての注意点

お詫び状や見舞状など、急な手紙では頭語や時候の挨拶を省き、以下のようにすぐ本文に入ります。

お詫び状(例文)

・先般はご迷惑をお掛けし、大変申し訳なく思っております。

災害の見舞い状(例文)

・このたびの台風○○号による浸水、被害が大きく心配しております。状況はいかがでしょうか。

病気の見舞状(例文)

*・このたびはご入院されたとのこと、驚いております*。

病気見舞いでは「たびたび」「四」などの忌み言葉に気を付けましょう。

また、長期の入院で文通のようにやりとりしている手紙では、季節の言葉も入れて良いでしょう。

年に一度の年賀状が教えてくれること

年末から年賀状を準備し、新年に届く。そして、出していなかった相手からの賀状に年賀状や寒中見舞いで返信する──家庭ではよくある年末年始の風景ですね。

日頃手紙を書く習慣がなくても、年に一度、この時期ばかりは手紙の効用を見直す人が多いのではないでしょうか。

写真がプリントされたもの、墨を使って書かれたもの、マスキングテープで彩られたもの……思い思いに工夫された年賀状からは、創る楽しさや相手への気持ちが伝わってくるようです。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

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