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男女がすれ違う『プロポーズ大作戦』。恋のタイミングをつかむには?

#恋愛ドラマ考察

菜本かな

あなたには、夢中になった恋愛ドラマがありますか? 泣いて、笑って、キュンキュンして、エネルギーチャージした、そんな思い出の作品が。この企画では、過去の名作を恋愛ドラマが大好きなライター陣が、当時の思い出たっぷりに考察していきます。

2007年放送のドラマ『プロポーズ大作戦』(フジテレビ系)は、タイミングを気にしすぎてしまったあまりに、すれ違ってしまった男女の物語だ。

放送当時、小学生だった私は、ただ無邪気にドラマを見ていた。健(山下智久)と礼(長澤まさみ)が過ごす輝かしい青春に、自らの未来を重ねながら。

だが、大人になった今見返してみると、このドラマはかなり切ない。苦しいほどに、切ない。

私たちは、年を重ねるごとに“たられば”に縛られるようになる。「もしも、振られてしまっ“たら”」「告白しなけ“れば”、ずっと近くにいられるのかもしれない……」と。

幼なじみの礼との関係を壊すことを恐れて、ずっと想いを伝えられなかった健のように。

「恋のタイミング」は気にしない方がいい?

本作のあらすじを大まかに説明すると、結婚してしまう初恋の女性(=礼)を取り戻すべく、主人公・健が過去に戻って奮闘する……というもの。健の前に、タイムスリップをさせる能力を持つ“妖精”(三上博史)が現れ、過去に戻してくれるのだ。

この作品に惹き込まれる理由のひとつは、健と礼がとにかくすれ違いまくることにある。つまり、「タイミング問題」だ。

礼とは小学校から大学までずっと一緒にいたからこそ、いつでも告白できると錯覚してしまった。加えて、幼なじみの関係を壊すのも怖かったのだ。

「今じゃない」「いつか」とタイミングを気にしているうちに、礼は多田さん(藤木直人)と交際をスタートさせてしまう。

正直なところ、当時の私は「なんで多田さん!?」と思った。健と礼が結ばれることを必死に祈っていた私にとって、多田さんは“ヒール”でしかなかったのだ。

だが、大人になった今よく考えると、多田さんは頼りなく見えて、実は誰よりも男らしい。

礼に告白をしたのも、みんなで王様ゲームをしている最中というよく分からないタイミング。プロポーズをしたのも、礼が大学を卒業したばかりの時。普通に考えたら、断られる可能性の方が高いだろう。

それでも、多田さんは気にしない。「もう自分の中で答えが出ているのに、礼に伝えるのを先延ばしにしたくなかった」と、まっすぐに想いを伝えたのだ。

「駆け引きとか計算とか関係なく、好きだって気持ちをストレートに伝えてくれたことが嬉しかった。あんな真正面からぶつかってきてくれる人、初めてだった」とほほ笑む礼は、本当に幸せそうだった。

100回に1回の奇跡的なホームランを打つために

思えば、健の親友・ツル(濱田岳)が、学園のマドンナ・エリ(榮倉奈々)と付き合えたのも、多田さんのようなまっすぐさがあったからだ。

「好き!」と果敢にアプローチを続けても、何度も振られまくる。お調子者のツルだが、断られるたび全く傷ついてなかったはずはない。それでも、誠意を伝え続けた。

だからこそ、幹雄(平岡祐太)が「あそこまで普通やらねえよな? だから、たまにホームラン打っちゃうんだよな。100本に1本くらい、人の心つかんじゃうようなでっかいの」と言った通り、ツルはエリの心を動かせたのだ。空振りを恐れて、バットを振らないままでは、恋をつかむことができなかったはず。

もちろん、まっすぐに「好き」という気持ちを伝えれば、相手が全てを受け止めてくれるわけじゃない。一生懸命バットを振っても、当たらない可能性だってある。恋の結果は、バットを振り続けた数と比例しないから、苦しい。

けれど、多田さんやツルのように想いを伝えていたら、健のように「もしもあの時……」と後悔することはないのではないだろうか。

恋をする上で、すれ違いは避けては通れない。だからこそ、「今じゃない」「いつか」と言い訳するのではなく、素直に想いを伝えよう。そうすれば、少しずつすれ違いは減ってくれるはず。

大人になるほど駆け引きはうまくなっていくけれど、『プロポーズ大作戦』の登場人物たちのように、まっすぐな気持ちを忘れずにいたい。

(文:菜本かな、イラスト:タテノカズヒロ、編集:高橋千里)

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