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「拝啓」の意味と使い方は? ビジネス文書の書き方と例文を解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

かしこまった手紙やビジネス文書でよく目にする「拝啓」という言葉。この言葉の正しい意味や使い方をご存じでしょうか? 今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、「拝啓」の使い方や例文を教えてもらいました。

「拝啓 ○○の候……」という言葉は、ビジネス文書でよく見かける書き出しです。

頻繁に目にする言葉でありながら、いざ書くとなれば「拝啓の位置は?」「この後に続く言葉は?」など、迷うことも多いのではないでしょうか?

この機会に、「拝啓」の意味や基本構成をマスターし、案内状や礼状などビジネス文書をスムーズに書けるようになりましょう。

今回は「拝啓」の正しい意味や使い方を、例文とともに紹介します。

「拝啓」とは?

まず、「拝啓」を辞書で引くと、次のように書かれています。

はい-けい【拝啓】

「つつしんで申し上げる」の意。

手紙の冒頭に用いる挨拶の語。謹啓。粛啓。

(『広辞苑 第七版』岩波書店)

辞書によれば、「拝啓」という言葉は、「謹んで申し上げます」という意味で、礼儀正しい手紙を書く時に使われる挨拶語の1つです。

なお、一般的な手紙文では「拝啓」がよく使われますが、冠婚葬祭など正式な手紙では、より丁寧な表現である「謹啓(きんけい)」を使います。

「拝啓」の使い方

話し言葉では、人と会った時にまず「こんにちは」と挨拶をしますよね。

手紙においては「拝啓」がその役割を果たし、手紙の書き出しに使われる「頭語(とうご)」の1つです。

ここでは、頭語に始まる手紙の書き方を紹介します。

「頭語」の後に続くのは? 手紙文の構成

手紙の構成を大きく分けると、以下のような順になります。

(1)前文:頭語、時候の挨拶、安否や近況、感謝、おわびなどを述べる文章

(2)本文(主文):起辞(「さて」「このたび」「早速ですが」など)、用件

(3)末文:結びの挨拶、結語

(4)後付け:日付、差出人名(行末に書く)、宛名(行初めに書く)

(5)副文:追伸など(本文から書き漏れた内容や付け加えたいことなどがある場合。目上の相手には加えない)

「拝啓」などの頭語は、文章の初めに書きましょう。その際、1文字分を空ける必要はありません。

頭語の後には、「○○の候」など時候の挨拶が続き、その後に安否伺いや感謝を述べる文章が続きます。これらを合わせて「前文」と呼びます。

「頭語」と「結語」は決まったセットで使う

前文で「頭語」を使う場合は、末文で「結語(けつご)」を使うという決まりがあります。

例えば、「拝啓+敬具」「謹啓+謹白(きんぱく)」などのように、必ずセットで使いましょう。

ただし、頭語と結語の組み合わせは決まっているので、「拝啓」で書き始めて「謹白」で終わるというような使い方はできません。

「拝啓」を使った例文

それでは、実際に「拝啓」を使ってビジネスレターの例文を紹介します。

以下は、取引先へ送る「新規取引先ご紹介のお礼状」です。

 

「頭語」の位置は文頭です。1字分空けずに書き始めましょう。

「拝啓」の後に続く時候の挨拶は、時期によって変化します。

例文中の「残暑」が使えるのは、8月8日頃から8月末までですので、この後紹介する時節の挨拶例を参考に、適宜変更してください。

そして「結語」の位置は最終行の行末です。改行しても構いません。「敬□具□」とスペースを空けて置くと、見た目のおさまりが良くなるのでおすすめです。

「追伸」などの副文は目上の相手には使わないため、今回の例文では省いていますが、必要があれば「後付け」の次に書きましょう。

「拝啓」など頭語を使う時の注意点

ここでは、「拝啓」などの頭語を使う際の注意点について紹介します。

「拝啓」を使うのは特にかしこまった時のみ

「拝啓」を使うのは、仕事上で取引先に出すビジネスレターなどにしましょう。

プライベートでは、親しい仲の相手に対して普段の手紙で「拝啓」を使うと、微妙な距離を感じさせてしまうことがあります。

日頃から敬語を使う相手に送る時や親しい間でも冠婚葬祭などあらたまった場面で送る時に使うのが良いでしょう。

事務的な連絡やお見舞いには「拝啓」を使わない

事務的な連絡や入院・災害お見舞いなどでは、頭語の「拝啓」や時候の挨拶を使いません。

この場合には、「前略失礼いたします」「急啓 ご入院されたと伺い、驚いております」などと書き始めましょう。

返信の場合は「拝復(はいふく)」を使う

相手からの手紙を受け取り、その返事を書く場合には「拝啓」を使いません。

相手の手紙が「拝啓」で始まっている場合は「拝復」、「謹啓」で始めている場合は「謹復(きんぷく)」を使いましょう。

ビジネス文書で「かしこ」は使わない

時々、手紙の最後に「かしこ」と書かれているのを見かけませんか? これは、主に女性が使う「結語」の1つです。

「一筆申し上げます」「前略ごめんください」など、話し言葉調の書き出しで始めた場合や、頭語を省いた場合には、「かしこ」で結びます。

そのため、改まったビジネス文書で「かしこ」は適切でなく、「拝啓」に対応して使うこともありません。

「拝啓」の後に続く挨拶例文

「拝啓」の後には、「春暖の候」「秋冷の候」など時候と、相手への挨拶(安否、お祝い、感謝、ご無沙汰のお詫びなど)が続きます。

慣用的によく使われる言葉があるので、いくつか知っておくと便利でしょう。

なお、時候の挨拶では「季語」(俳句などで使われる季節の言葉)を意識すると、季節感豊かな印象になります。

春:時候の挨拶+お祝いの挨拶

春の挨拶には、以下のようなものがあります。

例文

・春暖の候、貴社ますますご隆昌(りゅうしょう)のこととお慶び申し上げます。

夏:時候の挨拶+安否の挨拶

夏の挨拶には、以下のようなものがあります。

例文

梅雨明けとともに本格的な夏を迎えました。部署の皆さまはお元気でお過ごしでしょうか。

秋:時候の挨拶+感謝の挨拶

秋の挨拶には、以下のようなものがあります。

例文

秋冷の頃、平素は格別のご厚情にあずかり誠にありがとうございます。

冬:時候の挨拶+お祝いの挨拶+お詫びの挨拶

冬の挨拶には、以下のようなものがあります。

例文

向寒のみぎり、ご清祥(せいしょう)のことと存じます。大変ご無沙汰いたしまして、恐縮しております。

「拝啓」「敬具」の言い替え表現

「拝啓」「敬具」は、ビジネス文書で最も一般的な「頭語」と「結語」の組み合わせです。

使う場面に応じて、他にも「頭語+結語」の組み合わせがあります。

ここでは、「拝啓」「敬具」以外の表現を紹介します。

冠婚葬祭など儀礼的な挨拶状の場合

社名変更など取引先向けの改まった挨拶状、結婚式の招待状、忌明けの挨拶状など、よりかしこまった場面では以下を使いましょう。

・頭語:謹啓

・結語:謹言、謹白、敬白

前文を略す場合

事務的な連絡、取り急ぎの見舞状などの場合には以下を使います。

・頭語:前略、冠省(かんしょう)

・結語:早々、不一(ふいつ)、不備

急用の場合

取り急ぎの連絡、入院や事故の見舞状、お詫び状などでは以下を使います。

・頭語:急啓、急呈

・結語:早々、不一、不備

相手から来た手紙へ返信する場合

相手から受け取った手紙へ返信する場合には、以下を使いましょう。

・頭語:拝復、復啓(ふくけい)、謹復

・結語:敬具、拝答、敬答

面識のない相手へ手紙を出す場合

依頼状などで面識のない相手に送る時には、一般的な手紙と同様に「拝啓」などを使いましょう。

・頭語:拝啓、拝呈、啓上

・結語:敬具、敬白、拝具

場面に応じた手紙のマナーを知っておこう

「拝啓」をはじめとした頭語と結語の使い方や例文、言い換え表現について紹介しました。

「拝啓+敬具」などの表現は、ビジネス書やプライベートでも目上の人に対してかしこまった手紙を出したい時に、男女兼用で使えます。

一方、プライベートで親しみやすくやわらかい印象の手紙を出したい時は、「すっかり涼しくなりましたね。お元気ですか?」など、話し言葉が良いでしょう。

場面や季節、相手に応じて上手に使い分けてくださいね。

(前田めぐる)

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※画像はイメージです

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