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【心理学】ステレオタイプはなぜ起こる? 意味や具体例を紹介

大塚統子(心理カウンセラー)

ステレオタイプな考えで勝手に決めつけられて不愉快な思いをした、という経験はないでしょうか? 今回は心理カウンセラーの大塚統子さんに、ステレオタイプが起こる理由や具体例、上手な付き合い方について解説してもらいます。

「東北出身の人はがまん強い」「関西出身の人はおもしろい」「九州出身の人はお酒に強い」といったように、ある特定の属性で類型化された固定的なイメージのことを「ステレオタイプ」といいます。

今回は、ステレオタイプが起こる理由、ステレオタイプのメリット・デメリットと具体例、うまく付き合うためのポイントなどを紹介します。

ステレオタイプとは?

まずは、ステレオタイプの意味を見ていきましょう。

ステレオタイプとは「特定の属性で類型化された固定観念」

ステレオタイプとは、特定の属性で類型化され、社会に共有される固定観念や思い込みのイメージを意味します。

語源は、印刷で用いる同じ鋳型から打ち出した鉛版(ステロ版)。ウォルター・リップマンが著書『世論』(1922)でこの用語を用いて、ステレオタイプの概念を提唱しました。

なお、「ステレオタイプな人」とは、行動や考え方が固定的・画一的・型どおりな人という意味で、場合によっては「新鮮味がない」「保守的な」というニュアンスを含むことがあります。

「ステレオタイプ」と「偏見」「差別」の違い

社会心理学では、ステレオタイプと偏見・差別とを次のように区別しています。

・ステレオタイプ……特定の資質をみんなが持っているように思う認知傾向のこと

・偏見……ステレオタイプに対して好感や嫌悪などの感情を伴うもの

・差別……ステレオタイプや偏見を理由にして回避などの行動になったもの

それぞれ意味の違いはありますが、一般的には、ステレオタイプが偏見や差別とつながっていることも少なくありません。

ステレオタイプはなぜ起こるのか?

特定の属性に対して固定的なイメージを持ち、そのカテゴリーに当てはめて他者を認識しようとすることは、情報処理を単純化して認知の負担を軽くする機能と考えられています。

もし、日常生活のあらゆるものを、全く新しくそして詳細に認識しようとしたら、膨大な労力と時間がかかるでしょう。

人は知らないもの・分からないものに不安を抱き、その状態を回避しようとします。

そのため、「とりあえず理解するための材料」として、性別・国籍・年齢・体型・職業・家族構成・血液型などといった属性のイメージからステレオタイプ的認知をすることで、分からない不安を解消しようとするのです。

なお、ステレオタイプを「良くない」と抑制し続けると、逆にステレオタイプ的な反応が大きくなってしまうことがある「リバウンド効果」という現象が確認されています。

「差別や偏見は良くない」と抑制しても、一時的な効果しか期待できないようです。

ステレオタイプの具体例

私たちの日常には、ありとあらゆるステレオタイプが存在しています。ここでは、会話などでよく見られるステレオタイプを紹介します。

血液型のステレオタイプ

血液型は人を4つの型に分類するもの。

この4つの型と性格を関連付け、A型は几帳面、B型は自己中心的、O型は大らか、AB型は個性的などと結びつけるステレオタイプがあります。

ジェンダーのステレオタイプ

男性は地図を読むのが得意、女性は感情的になりやすい、男性は泣いてはいけない、女性はおしとやかであるべき、といったジェンダーでの社会的な先入観もステレオタイプです。

出生順のステレオタイプ

生まれた順番によって性格を分類し、一番上の子は真面目でしっかり者、末っ子は甘えん坊、一人っ子はわがまま、などと当てはめるのもステレオタイプです。

ステレオタイプのメリット

人とコミュニケーションをする際に、いきなり相手を深く理解することは困難でしょう。その点、ステレオタイプがあることは、相手を知る手掛かりにもなります。

好意的なステレオタイプは会話のきっかけになり、コミュニケーションを円滑にするというメリットもあります。

また、赤ちゃんは突然泣き出すもの、高齢者は判断や動作に時間がかかるもの、といったステレオタイプの認知があることは、瞬時に適切な判断をするのに役立つでしょう。

ステレオタイプのデメリット

ステレオタイプは属性によって画一化したイメージで理解するため、個人の特性を正しく理解しにくいというデメリットがあります。

例えば、血液型A型の人には几帳面というステレオタイプがありますが、もちろんA型の人が必ず几帳面というわけではありません。ステレオタイプに当てはめてばかりでは、対人認知の歪みが生じやすいといえます。

なお、仮に几帳面ではないA型の人に出会ったとしても、ステレオタイプの認識は更新されにくいという特徴があります。

また、否定的な感情とステレオタイプが結びつくと、偏見や差別をつくり出すことにもなりかねません。

ステレオタイプと上手に付き合うには?

すでに身につけているステレオタイプに縛られないためには、まず、誰もがステレオタイプ的な認知をしやすいという事実を理解しておきましょう。

そして、人と関わる時には、ただステレオタイプに当てはめて思考停止するのではなく、「この人はどんな人なのだろう?」と相手に興味を持ち理解しようとコミュニケーションを取りましょう。

個人としての交流を深めれば、ステレオタイプに当てはめることを減らせるでしょう。

それから、ステレオタイプについて話す場合、その属性の型に当てはめられることが相手にとって不愉快かどうかを想像する思いやりも大切です。自分が持つステレオタイプを相手に押し付けず、お互いの価値観を尊重するよう意識しましょう。

ステレオタイプを押し付けないことが大切

ステレオタイプは、迅速な情報処理に必要な認知の機能です。

しかし、特定の属性に対する固定的なイメージだけでは、対人認知に歪みが生じてしまうことがあります。

特に否定的な感情を伴うと、偏見や差別にもなりかねません。

誰もがステレオタイプな認知をしやすいものだと理解し、人と関わる時には既存のイメージに捉われないコミュニケーションを心掛けてみてくださいね。

(大塚統子)

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※画像はイメージです

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