「各位」の意味と正しい使い方を解説! 「各位様」は間違い?
「各位」の意味と正しい使い方を徹底解説。目上の人に使ってOK? 「各位様」という表現はある? など細かな疑問に答えながらビジネスシーンにおける正しいマナーをお伝えします。
「各位」は、メールや社内に向けた通達など、ビジネスシーンで頻繁に使われる言葉。
よく目にする割には、「正しく使えている」と自信を持って言える人は、意外と少ないかもしれません。
そこで今回は、「各位」の正しい使い方を解説します。
間違って使ってしまうと、大事な場面で恥をかく可能性もあるので、ぜひ正しい使い方を身につけておきましょう。
「各位」の意味とは?
「各位」とは、「皆様」「皆様方」という意味で、大勢に対して敬意を示す語です。複数人に向けて使われる言葉ですが、相手側一人ひとりへの敬意を表すニュアンスが含まれています。
本来、複数人に敬称をつけるのであれば、「○○様、○○様、○○様……」と連盟で記載するでしょう。しかし、相手が大勢の場合、全員の名前を記入すると長くなってしまいます。
「様」の代わりに「関係者各位」などとつければ、一人ひとりへの敬意を表現しつつ、大勢をまとめて記入することができるのです。
「各位」の正しい使い方と例文
「各位」はメールや手紙、案内状など、書面で使われる言葉です。ビジネスシーンに限らずお店や駅など、公共の場に貼られている案内でも多く見かけます。
「○○各位」と、呼び名の後につけるのが正しい使い方です。相手が組織であれば、「○○部 各位」というように組織の呼び名の後につけて使います。
ここで一般例として、お客様に向けて書く場合と目上の相手または上司に向けて書く場合、社内に向けて書く場合の使い方をそれぞれ紹介します。
お客様に向けて
企業から顧客に向けたメールや案内状を送る際は、「お客様各位」と表記します。
本来、「様」と「各位」を一緒に使用するのは、間違った文法です。しかし「お客様各位」は使われる機会が次第に増えていき、今では定型句として認められています。こうした敬語の重複については、後に説明します。
それでは、例文をいくつか紹介します。
例文
・お客様各位 平素は格別のご愛顧を賜り厚く御礼を申し上げます。
・大変恐縮ではございますが、お客様各位のご理解、ご協力のほど宜しくお願い致します。
・お客様各位のご来店を心よりお待ちしております。
目上の相手や上司に向けて
上司や取引先の人へ送るメールや書類など、ビジネスでは丁寧な文章が求められる機会が多々ありますよね。
「各位」は、目上の人に向けて書く際の敬称としてふさわしい単語です。そのため役職に関係なく、かしこまった文章を書く場合に使って問題ありません。
ただし「各位」は大勢に向けた敬称なので、「その他大勢」という印象を与えてしまう可能性があります。
中には雑な扱いを受けていると感じてしまう人もいるので、「○○部長 ○○係長 各位」というように、目上の人の名前は分けて書くというのも安心です。
それでは、例文をご紹介します。
例文
・部長各位
・ご担当者各位
・役員各位
・〇〇部長 〇〇係長 各位
社内に向けて
「各位」は、上司や取引先など、目上の人のみを対象とする敬称ではありません。社内に向けたメールや案内書など目下の人も含むシーンでも、頻繁に使われています。
送る相手が目下の人のみであれば、「皆さん」と使うこともあるでしょう。しかし、多くの人に見られる可能性がある場合は、上司の目にも入ることがあるので「各位」を使う方が無難です。
そのため、社内の複数人に向けた連絡や案内をする時は、基本的に「各位」で統一すると良いでしょう。
それでは例文を紹介していきます。
例文
・社員各位
・従業員各位
・経理部各位
間違った「各位」の使い方とは?
「各位」を使う際、注意しておくべきことが2点あります。恥ずかしい思いをしないよう、間違った使い方もチェックしておきましょう。
(1)相手が1人の場合には使えない
「各位」は複数人に向けて使う敬称、というのが大前提。
そのため、相手が1人の場合は使いません。相手が個人の場合は、「各位」ではなく「様」を用いるのが正しい使い方です。
それでは、例文を紹介します。間違った書き方と正しい書き方の両方を紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
例文
・部長1人に対して使う場合
(誤)部長各位/(正)部長
・お客様1人に対して使う場合
(誤)〇〇様各位/(正)〇〇様
・取引先の担当者1人に対して使う場合
(誤)ご担当者様各位/(正)ご担当者様
(2)敬語の重複に注意
「各位」は敬称にあたるので、「様」や「殿」などの敬称と一緒に使うと重複になってしまいます。この場合、「様」や「殿」は省いて書きましょう。
また、「○○様各位」と敬称を前につけるのも、「各位殿」と後につけるのも、両方誤用です。
ただし「お客様各位」は先述した通り、現在ではそれが一般的となり、表現として認められている使い方です。例外として「様」と「各位」を組み合わせて使っても問題ありません。
例文
・(誤)関係者様各位/(正)関係者各位
・(誤)取引先各位様/(正)取引先各位
・(誤)会員様各位/(正)会員各位
「各位」と混同しやすい言葉
「各位」と同じように、ビジネスで使う敬称は他にもたくさんあります。
そのため、どれをどのような時に使えば良いのか分からず、困惑してしまうこともあるでしょう。
そこで、「各位」と間違えて使ってしまいやすい言葉を、3つ紹介します。併せて使い方や意味を覚えておきましょう。
御中
「御中」は、企業や施設など、個人ではなく団体の宛名に添える敬称。「御中」の「中」は集団の中の人という意味があり、それに「御」をつけて丁寧に表現した言葉です。
「○○御中」というように会社名、団体名の後につけて使います。「各位」も同じように「○○各位」と後につけて使用するため、混同してしまいがち。
どちらも宛名が複数人の時に使う敬称ですが、団体全体を宛名とする場合は、「御中」を、組織内の一部の人を指定する場合は「各位」を用いましょう。
ちなみに「御中」を使う際も、「○○様御中」と「様」をつけるのは間違った使い方です。注意しましょう。
それでは、「御中」を使った例文を紹介していきます。
例文
・株式会社 〇〇 御中
・株式会社 〇〇 営業部 御中
・株式会社 〇〇 企画部 広報課 御中
皆様
「各位」とは「皆様」を意味する単語。そのため、「各位」は「皆様」への置き換えが可能です。
「皆様」の方が柔らかく、ややくだけた表現になります。
かしこまった場面で使っても問題ありませんが、よりきちんとした印象を与えたいビジネスでのメールや文書は「各位」が適しているでしょう。
それでは、「皆様」を使った例文を紹介します。
例文
・経理部の皆様へ
・皆様のご理解とご協力賜りますようお願い申し上げます。
・〇〇課の皆様にもどうぞよろしくお伝えくださいませ。
様
「様」も「各位」と同様、相手への敬意を示す敬称。ビジネスに限らず、さまざまなシーンで使われるかしこまった表現です。
相手が複数人の場合は「各位」を使いますが、1人の場合は「様」を使用します。
ただし役職の後につけるのは間違った使い方です。「社長様」「部長様」とは書かず、宛名は役職のみ名前のみを書くか、「部長○○様」と書きましょう。
例文
・株式会社○○ 鈴木様
・株式会社○○ 営業部 佐藤様
・株式会社○○ 営業部長 田中様
「各位」を正しく使いこなせるようになろう
日本語にはたくさんの丁寧語があり、ふとした時に使い方を忘れてしまうことがありますよね。学校では習わず、自分で調べなくてはならない表現も中にはあるので、知らない言葉遣いもまだまだ多いでしょう。
「各位」は、社内メールや取引先への書類を送る時など、ビジネスシーンで頻繁に登場する敬称なので、覚えておいて損はありません。
大勢に向けて使うため、間違った使い方をしてしまうとたくさんの人にミスを見られてしまいます。
ぜひ正しい使い方をマスターし、ビジネスパーソンとして恥ずかしくない言葉遣いを身につけましょう。
(上色ゆるり)
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