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【心理学】コンコルド効果とは? 意味や日常例を紹介

大塚統子(心理カウンセラー)

「コンコルド効果」を知っていますか? 投資してきた費用や時間、労力が無駄になるのを「もったいない」と思い、損失になると分かっていながら投資を継続してしまう心理現象のことです。心理カウンセラーの大塚統子さんに、コンコルド効果という用語の意味や日常の例、対策方法を解説してもらいます。

「ここでやめるのはもったいない」「元を取るまでは続けよう」と思ったことはありませんか?

損と知りつつやめられないのだとしたら、そこには「コンコルド効果」といわれる心理現象が働いているのかもしれません。

今回は、「コンコルド効果」の意味や概念、対策方法を紹介します。

コンコルド効果の意味は?

まずは、コンコルド効果の意味や概念を紹介します。

コンコルド効果は「元を取りたくて投資を継続してしまうこと」

コンコルド効果とは、これまで投資してきた費用や時間、労力が無駄になるのを惜しみ、損失になると分かっていながら投資を継続してしまう状態のことです。

先入観や他人の影響で非合理的な意思決定をすることを、心理学では「認知バイアス」といいます。コンコルド効果も、この認知バイアスの一種です。

参考記事はこちら▼

認知バイアスの一覧とそれぞれの意味、具体的な事例について紹介します。

名前の由来は?

この名前は、英仏共同事業で運航された超音速旅客機コンコルドに由来しています。

採算が合わないことが明白だったのにもかかわらず、投資が無駄になるのを惜しみ、撤退を決断できずに商業的な失敗をしたことから、「コンコルド」の名前が使われるようになりました。

コンコルド効果とサンクコスト

また、同じ意味の別表現として、「コンコルド錯誤(さくご)」「コンコルドの誤謬(ごびゅう)」あるいは「サンクコスト(埋没費用)効果」も用いられます。

サンクコストとは、費用や時間、労力など、すでに支払っていて取り返し不可能なコストのことです。

コンコルド効果が引き起こされる原因

コンコルド効果は、サンクコストを「取り戻さなければいけない」「無駄にはできない」「もったいない」などと考えるために、合理的な判断がしにくくなることにより起こります。

例えば、継続すれば赤字になるのが明らかなのに、サンクコストを回収するために追加投資をするといったことが起こるのも、コンコルド効果が働いているといえるでしょう。

コンコルド効果の日常例

コンコルド効果は、企業のプロジェクトや金融投資の世界だけの話ではありません。

ここでは、個人の日常の場面で見られるコンコルド効果の例を紹介します。

ソシャゲ(ソーシャルゲーム)の課金に見られる例

ソシャゲは、主にSNS上で提供されるオンラインゲームです。追加機能の購入、より強くてレアなキャラやアイテムを手に入れる「ガチャ」を回すなど、課金の仕組みがあります。

ゲームに時間を費やしたり、課金してゲームを進めたりしていると、「ここまでやったのに、やめるのはもったいない」と、ゲームに飽きてもやめ時を逃して続けてしまうことがあります。これもコンコルド効果の一例です。

ギャンブルに見られる例

パチンコや競馬などのギャンブルは、「使った分を取り戻したい」と思ってさらに資金を投入し、損失を拡大することも少なくありません。これもコンコルド効果によるものです。

また、投入金額が大きいからといって勝敗の確率が変わるわけではないのに、「これだけ注ぎ込んだのだから、次は当たるはず」と思い込んだり、一発逆転なんてそう簡単にないと分かっているはずなのに、「負けて損した分を取り戻そう」と勝負をやめられなかったりもします。

ビジネスや事業の場面で見られる例

充分な収益が見込めなくなった事業やプロジェクトなのに、これまでかけたサンクコストを考えて撤退の決断ができないのがコンコルド効果です。

他にも、「今まで○年も勤めてきたのだから、この会社を辞めない方がいい」とか、「せっかく取得した資格があるのに、関係ない仕事に転職すると無駄になる」など、コンコルド効果が判断を鈍らせる場合もあります。

恋愛の場面で見られる例

気になった人にアプローチをしてきて、脈がないことは薄々気付いているのに、これまで時間や労力を投資した分、「もう少し頑張ればうまくいくかも」と片思いを続けるのもコンコルド効果の一例です。

また、「別れた方がいいのかも」と思っていながら、「でもこれだけ長く付き合ってきたのだから」とか「あんなに好きで頑張ってきたのだから」と関係を断てないのも、コンコルド効果です。

冷静に判断するために。コンコルド効果の対策方法

課金型ゲームやダイエット食品など、コンコルド効果はマーケティングにも活用されるもの。

では、コンコルド効果によって冷静な判断力を失わないためには、どのような考え方をしたらいいのでしょうか?

ここでは3つの対策方法を紹介します。

(1)損切りする

「損切り」は金融用語で、値下がりした株式・証券や外貨などを売って損失を確定する意味。ロスカット・ストップロスとも言われ、これ以上悪い結果になる前に見切りをつけ、損を覚悟で手放すことです。

損切りはタイミングが難しいもの。そのため、あらかじめ「課金するのは月に○○円まで」とか「○月○日まで頑張ってみてダメなら諦める」とか、損切りをする限界点を決めておくのもいいでしょう。

また、もし損切りをすることになったとしても、「損をしてしまった」と自分を責めたり後悔したりするのではなく、その間に経験・成長できたことや楽しい気持ちを感じられたことに意味を見出していきましょう。

(2)ゼロベース思考で考える

「ゼロベース思考」とは、何もない白紙の状態(ゼロベース)から物事を考える思考法です。

今を出発点にするので、過去の経験・考え方・サンクコストを抜きに意思決定がしやすくなります。

例えば、不採算の事業をどうするか検討しているとします。「この事業をどうするか?」で考えるとコンコルド効果が起こりがちです。

しかし、ゼロベース思考で「これから会社に必要なのはどんな事業なのか?」とか「同じ事業を今から始めたいと思うか?」を検討すると、冷静な判断がしやすくなります。

今とこれからを中心に考えると、「今、何をするのか?」が重要になり、先入観や過去の延長線で「もったいない」と考えることから抜け出しやすいでしょう。

(3)本当に望むビジョンに焦点を当てる

自分が本当に望むものをはっきりさせると、「それに向かって大切なのは?」と進む方向が決まってきます。

未来の理想像であるビジョンを思い描くと、目指すゴールも定まるでしょう。ゴールに辿り着く手段は、決して1つではありません。

ビジョンを実現する手段が「これしかない!」と思い込むと、警告サインが出ても突き進むしかありません。しかし、うまくいかない時に「他にも手段があるはず」と選択肢を持てると、柔軟な対応も可能になります。

例えば、「絶対に結婚がしたい」なら、どんなに魅力的でも結婚を望まない恋人とはお別れする道もあるでしょう。また、「人を笑顔にする仕事がしたい」なら、業界は問わず、さまざまな職種が選択肢に含まれるはずです。

心から望む未来の幸せのために自分の時間と労力とお金を投資しようとすると、目の前の損得を基準にした判断から解放されやすいでしょう。

手放すことで手に入るものがある

今はもう必要がなくなった何かを「もったいないから」という理由で持ち続けていないでしょうか?

今までこだわってきたものを手放すのには勇気が要りますし、「損をした」と悔やむこともあるかもしれません。

しかし、手放すことで悪循環を断ち切り、時間や労力に余裕ができるとしたら……。手放すことで、きっと新しい何かを手に入れられるのではないでしょうか。

(大塚統子)

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