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意外と知らない「御中」の正しい使い方

武田 麻希

「御中」はビジネスで手紙やメールを送る際に、相手の会社名の後ろに付ける言葉の1つです。「様」や「宛」など同じようなシーンで使われる言葉は多く、戸惑うこともあるでしょう。そこで、「御中」の使い方や似た表現と使い分ける方法をビジネス用法に詳しいライター、武田 麻希さんに伺いました。

ビジネスレターやメールを送る時に、会社名の後ろに「御中」を付けるのは覚えておきたいビジネスマナーの1つです。しかし、同じようなシーンで使われる言葉として「様」や「行」「宛」などがあり、使い分けに戸惑った経験を持つ人は多いでしょう。

間違った使い方をしてしまうと、相手に常識のない人という印象を与えたり、失礼にあたることもあります。そのようなことを避けるためにも、「御中」の正しい使い方はぜひ押さえておきたいですよね。

この記事では、「御中」の正しい使い方や使用例、類義語との使い方の違いなどを紹介します。一度覚えるとずっと役立つ知識ですので、「御中」の正しい使い分けに自信がない人はこの際にぜひ覚えておきましょう。

「御中」の意味と使い方をおさらい

「御中」とは、団体に郵便物や電子メールなどを送る際に、名称の後ろに添える言葉。読み方は「おんちゅう」です。

ここでいう団体とは、会社や官公庁、各種団体などの個人以外を指します。

明治時代以前には、手紙の宛名の左下に「人々御中」と書き添えて敬意を表す言葉として用いられていました。明治後期から大正にかけて、「人々」が省略されるようになり、現在の形「御中」になったという説もあります。

「御中」はどんなシーンで使う?

前述した通り、「御中」は、主に会社などの団体に向けた手紙や電子メールで使われる言葉。日常生活よりは、ビジネスシーンで使われることが多いです。

転職活動や就職活動などでも会社宛に書類を送る場合にはよく使われます。ただし会社に送る書類でも、担当者名が分かっている場合には「御中」は書かずに、担当者名に「様」を書いて送るのが一般的なマナーです。

「御中」の正しい使用例

「御中」は団体に向けて使う言葉ということを分かっているつもりでも、誤った使い方をしてしまうことがあります。そこで、A社総務部の田中花子さん宛てに手紙やメールを送る場合を例に、「御中」の正しい使い方を見ていきましょう。

「御中」使用のOK例

A社総務部に郵便物や電子メールを送る場合、「御中」の正しい使い方は下記のとおりです。

正:株式会社A社総務部 御中
正:株式会社A社 御中

団体を表す言葉のすぐ後ろに「御中」を用います。会社名はもちろん、部署名の後に使うのも問題ありません。宛名が部署の担当者など特定の個人ではなく集団を指す場合に、上記のように「御中」を付けてください。

「御中」使用のNG例

会社宛に出す郵便物や電子メールでも、部署の担当者など特定の個人に向けて送る場合には「御中」を使うのは誤りです。具体例を紹介します。

誤:株式会社A社総務部 田中花子御中
誤:株式会社A社総務部御中 田中花子様
正:株式会社A社総務部 田中花子様

名前のあとに「御中」を使ったり、「御中」と「様」を併用するのは間違った使い方です。郵便物や電子メールを受け取るのは誰なのかをよく考えて、「御中」を使うかどうかを考えましょう。

「御中」と似た意味で使われる言葉とは?

手紙や電子メールを送る場合、宛名の後に用いる言葉には「御中」以外に「様」「行」などいくつかあります。それぞれの使い方や使用シーン、「御中」との違いなどを見ていきましょう。

「様」の使い方

「様」は、特定の個人に郵便物や電子メールを送る場合によく使われます。会社宛に出す郵便物であっても、担当者名が分かっている場合には「様」を使います。また、個人間の手紙でも、封筒やはがきの表には相手の名前の後に「様」をつけて投函します。

「様」の使用例

正:株式会社A社総務部 田中花子 様
正:田中花子 様
誤:株式会社A社総務部 様

宛名では、集団に対して「様」を用いるのは誤り。この点をよく覚えておきましょう。

「行」の使い方

「行」を使うのは、主に自分宛の郵送物です。往復はがきの復信の宛名や、返信用封筒を同封する際、自分の名前や会社名を書いた後に「行」を書きます。これは個人でも団体でも使えます。

「行」使用例

正:株式会社A社総務部 田中花子 行
正:田中花子 行

「様」や「御中」を使うと、自分に敬称を付けることになるため自分や自社の宛名を書いて相手に渡す場合には、「行」を用いてください。

自分が「行」と書かれた返信用封筒や往復はがきを使って相手に送る場合は、「行」を二重線で消して印鑑を押し、「様」「御中」に書き換えるのがマナーです。

また、結婚披露宴の出欠をとるための返信はがきには、「行」を「寿」で消すことがありますが、ビジネスでは使われません。

「宛」の使い方

「宛」も「行」と同じように、返信用の宛先として使われます。宛先が個人の場合に使われることが多いですが、団体に対して使っても間違いではありません。

「宛」使用例

正:株式会社A社総務部 田中花子 宛
正:田中花子 宛

「宛」と書かれた郵便物を返送する場合は、「行」と同様二重線で消して、「様」や「御中」に書き換えましょう。

「各位」の使い方

メールの一斉送信などで、宛先が複数ある場合には「各位」を使います。「各位」は「皆様」や「皆様方」という意味の言葉。複数人いる送信相手の一人一人を敬いたい場合に用いられ、ビジネスシーンでの使用頻度は高いです。

「各位」使用例

正:関係者各位
誤:関係者各位御中
正:取引先各位
誤:取引先各位様
正:株式会社A社ご担当者各位
誤:株式会社A社ご担当者様各位
正:会員各位
誤:会員様各位

「様」や「御中」を併用するのは間違いです。注意して使いましょう。

「殿」の使い方

「殿」は目上の人から目下の人に対してよく用いられる言葉。公用文書や手紙、表彰状などでよく用いられています。通常は個人に対して使われます。

「殿」使用例

正:株式会社A社総務部 田中花子殿
誤:株式会社A社総務部殿

敬称ではあるものの、上司やお客様など目上の人に対して使うと失礼にあたりますので、使う際には注意してください。

「御中」を使う時の注意点と間違えた時の対処法

「御中」はビジネスシーンで使用頻度が高い言葉の1つ。使う上で気をつけるべきポイントがいくつかあります。

敬称を併用しない

手紙や電子メールの宛名の後に用いられる「御中」や「様」などは、敬意を表す言葉です。「株式会社A社総務部御中 田中花子様」「関係者各位御中」などのように、敬称を二重に使うと、敬称が重複するので、かえって失礼にあたります。

「御中」以外の敬称と併用しないよう、注意して使いましょう。

「御中」の使い方を間違ってしまった場合は?

宛名書きで「御中」の漢字や使い方を間違えた場合は、書き直すのが鉄則です。どうしても新しい封筒やはがきをすぐに準備できない場合は、間違った箇所を二重線で消し印鑑を押してから修正してください。修正テープや修正液は使わないのが望ましいです。

メールの宛先で「御中」の使い方を間違った場合や敬称を付け忘れた場合は、気づいた時点で早めにお詫びのメールを送信して謝罪しましょう。

郵便物や電子メールを送る場合には、使い方を間違えていないか、しっかりと見直してから送るように心掛けましょう。

「御中」の正しい使い方をマスターして

「御中」の使い方は、ビジネスに携わる機会がある人なら、ぜひ押さえておきたい言葉の1つ。「様」も「御中」も敬称ですが、「様」は個人に対して、「御中」は団体に対して使う点が大きな違いです。

社会人として使う頻度が高い言葉ですが、間違えてしまうと相手に悪い印象を与えかねません。今回紹介した内容を参考にして、正しい使い方をマスターしましょう。

(武田麻希)

※画像はイメージです

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