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「うろ覚え」と「うる覚え」はどちらが正しい? 意味や使い方・類語を例文付きで解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「うろ覚え」と「うる覚え」、どちらが正しい表記だと思いますか? 言葉の意味は「不確かでぼんやりした記憶」のこと。今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、「うろ覚え」「うる覚え」の正誤や使い方、類語を解説してもらいました。

人間は忘れる生き物だといわれます。人の名前や顔、方程式……記憶があいまいだと、思い出すのにも一苦労しますね。

さて、そんな時に使える言葉、「うろ覚え」「うる覚え」。これらはどちらが正しいでしょうか?

人の耳は聞きたいように聞くので、「うろ覚え」と思っている人は「“うる覚え”は聞いたことがない」と言うでしょうし、その逆もしかりです。早速、調べてみましょう。

「うろ覚え」と「うる覚え」はどちらが正しい?

結論から言うと、正しいのは「うる覚え」ではなく「うろ覚え」です。

なぜ「うる覚え」と混同する人がいるのでしょうか?

正しくは「うろ覚え」

「うろ覚え」を「うる覚え」と言い間違える人がいるのは、よく使う言葉の割には、筆記された形で見る機会が少ないからでしょう。

ラ行の音は聞き取りにくく、「うろ覚え」と発音しても、「うる覚え」と聞き間違いが起きてしまうことは十分にあり得ます。

なお、「うろ覚え」と同様、「おろ覚え」も正しい言い方です。

「うる覚え」や「おろ覚え」は方言?

「“うる覚え”と聞いたことがある」と言う人は、もしかしたら方言ではないかと考えるかもしれません。

しかし、身近な方言辞典などで調べる限り「うる覚え」という言葉は見つかりません。

ただし、「うろ覚え」の「うろ」については、「ぼんやり」という意味を示す大阪の方言でもあります。「ぼんやりする」という意味で、「うろがくる」というように使われていました。

また、「おろ覚え」の「おろ」はもともと「大して〜でない、不十分な」という意味を添える接頭辞です。「おろ良い」「おろ見える」などの方言で使われていました。「おろ覚え」もそうした九州北部の方言の一つでした。

現在では、「おろ覚え」は、標準語として辞書に載っています。

「うろ覚え」の意味

辞書で「うろ覚え」を引くと次のように載っています。

うろおぼえ【疎覚え】
確実でない記憶。

おろおぼえ【疎覚え】
ぼんやりした記憶。うろ覚え。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

以上のことから、「うろ覚え」は「おろ覚え」とも言い、不確かでぼんやりした記憶のことを意味する言葉だということが分かります。

「うろ覚え」はどんな時に使えるのか?(例文付き)

では実際に「うろ覚え」はどんな時に使える言葉なのか、解説していきます。

自分の記憶があいまいな内容について、人に尋ねたい時

記憶があいまいで申し訳ないと感じながらも、会話を切り出す時に使います。

例文

うろ覚えで申し訳ありませんが、○○小学校に通っておられませんでしたか?

自分の記憶が不確かな内容について、よく知っていそうな人を紹介したい時

自分の記憶は不確かでよく分からないけれど、「あの人なら知っているかも」と思う時がありますよね。

もっとよく知っている人を紹介する時に、次のように使います。

例文

・そのあたりの社史でしたら、私は営業所勤務だったため、うろ覚えで自信がありません。田中さんならずっと本社にお勤めなので、よくご存知かもしれません。

正確には知らないものの、あることについて確かにそうだと主張したい時

全部をよく知っているわけではないけれど、あることについては確かにそうだと言いたい時があります。

「全体については不確かだが」という意味で、前置きのように使います。

例文

・私もうろ覚えで、課長の行動を全て把握しているわけではありません。ただ昨日の午後については「営業・直帰」と書かれていたことだけは確かです。

あることについて尋ねられたものの、記憶が不確かで申し訳なく感じる時

他人から「きっと知っているはず」と確信を持って尋ねられたのに、あまりよく知らないと申し訳なく思ってしまいますね。そんな時に使います。

例文

・木村さんというご家族は、確かにこの町内にいらっしゃいましたが、私はあまり交流がなくうろ覚えで、申し訳ありません。

「うろ覚え」の類語

「うろ覚え」とほぼ似たような意味合いを持つ言葉を以下に掲げます。

「空覚え」

「そらおぼえ」と読みます。

「確かでない記憶。うろ覚え」を意味し、「うろ覚え」と全く同じように使えます。

ただし、「空覚え」には、「暗記していて何も見ずに読み語ること」という真逆の意味もあるので、使う場合は前後の文脈で意味が分かるようにする配慮が必要です。

例文

・そのことについては、私も空覚えなのではっきり申し上げられないのです。

「生覚え」

「なまおぼえ」と読みます。

「確かでない記憶。うろ覚え」を意味し、「うろ覚え」と全く同じように使えます。

例文

・彼女はいつもその話になると生覚えなのか、言いたくないのか、あいまいに言葉を濁すのです。

「おぼろげな記憶」

おぼろげとは、「輪郭がぼんやりしていること」を意味し、くっきりと覚えているわけではないという時に使います。

例文

・海外勤務だったのはかれこれ30年ほど前のことで、もうおぼろげな記憶になってしまった。

「漠とした記憶」

「漠(ばく)とした」とは「実態がはっきりしないさま」を意味します。「漠然とした記憶」も同様です。

例文

漠とした記憶を頼りに当時あったその店を訪ねようとしたが、どうしても探せなかった。

「不明瞭な記憶」

不明瞭とは、物事がはっきりしないことを意味します。

例文

・そのことについては、彼女も不明瞭な記憶しかなく、申し訳ないと言っていました。

「うろ覚えの領域」が増えないように意識をすることも大事

いかがでしたか?

「うろ覚え」と「うる覚え」は、「うろ覚え」が正しく、不確かでぼんやりした記憶のことを意味する言葉であると解説しました。

「空覚え」「おぼろげな記憶」など、うろ覚えと似た意味の言葉も紹介したので、“不確かでぼんやりとした記憶”を表現する言い回しは複数あることを理解してもらえたと思います。

冒頭でも述べた通り、人は忘れる生き物です。

現に、読むことはできるけれど書くことのできない漢字は多々あるものですよね。

IT社会はとても便利ですが、全てに頼り切ってしまうと、「うろ覚えの領域」が増えていくように感じます。

例えば、うろ覚えの漢字に出会ったら紙に書いて、目で見て覚え、口で発音して、耳で聞くというように、「うろ覚えの領域」が広がらないよう意識したいですね。

(前田めぐる)

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※画像はイメージです

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