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「本末転倒」の意味と語源とは? 使い方や例文・類語を解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

日頃よく耳にする「本末転倒」という言葉について、その意味や使い方を正しく理解できていますか? 今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、「本末転倒」の意味や使い方、類語を教えてもらいました。

数ある四字熟語の中でも、「本末転倒」はよく使われる言葉です。

しかし、本来の意味とずれた場面で使われることも多く、使用頻度が高い割には正確な意味が意外と知られていない言葉の1つでもあります。

この機会に「本末転倒」の意味や使い方を調べてみましょう。

「本末転倒」の意味とは?

ほんまつ【本末】
(1)もととすえ。物事の根本と末梢。基本的な大切なものと、どうでもよいもの。
(2)初めと終わり。
(3)本山(本寺)と末山(末寺)。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

ほんまつてんとう【本末転倒】
根本的な事柄とささいな事柄とを取り違えること。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

辞書によれば、「本末転倒」は、“ほんまつてんとう”と読み、「本末顛倒」とも書きます。「本末」の本(根本)と末(末梢)がひっくり返ってしまうことだと理解できます。

つまり、「本末転倒」とは、「本と末・先と後・重要なこととつまらないこと・目的と手段などを取り違えてしまうこと」を意味しています。

・大事なことがあるのに、どうでもいいことに熱中する
・先にすべきことが後回しになり、後でいいことが先になっている
・物事の本質を置き去りにして、つまらないことにこだわる
・目的があって手段があるのに、いつの間にか手段の方が大事になってしまっている

そうした状態の時に「本末転倒だね」などと使います。

「本末転倒」はどんな時に使えるのか?(例文付き)

さて、実際に「本末転倒」という言葉をどのように使えるのか、いくつかの場面を示し、例文を紹介します。

本来の目的を取り違えている時

本来の目的を取り違え、望まない結果になってしまった時などに使います。

例文

・楽しい旅行だったよ、とお裾分けするのがお土産なのに、お土産選びで旅行を楽しめなかったら、本末転倒ですよ。

大切な事柄とささいな事柄を取り違えている時

大切なテーマや意図に沿って行うべき重要なことがあるのに、いつの間にか取るに足らないつまらないことに必死になっている時に使います。

例文

・子どもに正確な漢字を覚えてもらいたい意図は分かるが、組み立てや意味をしっかり教えずに、「トメ・ハネ・ハライ」を何度も練習させるのは、本末転倒した教え方だ。

いつの間にか手段が目的化してしまっている時

何か成し遂げたいことや理想があり、その手段として始めたことなのに、いつの間にか手段が目的化して肝心の理想にそぐわなくなってしまった時に使います。

例文

・学ぶために大学に入ったはずなのに、アルバイトにばかり精を出して、教科書も買わずに貯金にいそしむとは、本末転倒も甚だしい。

「本末転倒」の類語

ここまでで、「本末転倒」の意味をしっかり把握できたでしょうか?

「本末転倒」は比較的広い意味で使われるために、時に使い方について迷うことがあるかもしれません。

以下に挙げることわざや四字熟語など、「本末転倒」と似た意味を持つ言葉の中には、もう少し狭い意味のものあります。

それぞれの意味をよく把握して、使ってみてください。

「木を見て森を見ず」

木の1本1本に注意を奪われるあまり、森全体を見ることをおろそかにしているということから、細かい点に気を取られて全体を見失うことをいいます。

例文

・プロジェクトでは、木を見て森を見ずとならないよう、個々の役割だけでなくチームとして機能しているかにも常に目配りする必要がある。

「靴を度りて足を削る」

「度り」は「はかり」と読みます。

足に合わせるべき靴を、先に靴の大きさを測って、それに合わせるために自分の足を削るということから、物事の本末が逆であることをいいます。

「本末転倒」との共通点は、「順序を誤る」というところ。

四字熟語で「削足適履(さくそくてきり)」いう言葉もあります。

例文

・社会に出た時にルールを守れる大人を育てたいという趣旨は分かるが、厳しい罰則におびえて生徒の個性や自由が侵害されるようなら、靴を度りて足を削るがごとくだ。

「角を矯めて牛を殺す」

「矯めて」は「ためて」と読みます。

牛の曲がった角を真っ直ぐに矯正しようとしたために、牛が弱って死んでしまうことから、小さな欠点を力ずくで直そうとして、かえって全体を台無しにしてしまうことをいいます。

例文

・枠にとらわれない斬新な発想が彼の持ち味だったのに、全てに予算ありきで企画を練らせるものだから、角を矯めて牛を殺すことにならないかと心配だ。

「葉を欠いて根を断つ」

枝葉を切って大事な根まで駄目にしてしまうことから、小さな欠点を取り除こうとして根本を駄目にしてしまうことをいいます。

同じような四字熟語に「釈根灌枝(しゃくこんかんし)」があります。

例文

・テレワークが始まってからというもの、本部が策定した細かいルールによって社員間のコミュニケーションがうまく取れなくなっているのは、葉を欠いて根を断つようなものだ。

「舎本逐末」

「しゃほんちくまつ」と読み、「本(もと)を舎(す=捨)てて末(すえ)を逐(お)う」という意味です。

ささいなことだけに関心を向けて、本題の重要な部分をおろそかにすることをいいます。

例文

・彼は仕事の合間にスマホで株価のチェックばかりしている。副業が気になるのは分からないでもないが、本業に身が入らなければ、舎本逐末も甚だしい。

本質を見極めることの大切さ

今回は、「本末転倒」について解説しました。

この言葉を日頃からよく見聞きするということは、普段の生活やビジネスの両面において私たちがいかに本質を大切にしようとしているかを物語っています。

「本末転倒」という言葉の用法はもちろんですが、慣れ親しんだ言葉の奥深さを知ることは、本質を見極める力を磨く小さなきっかけともなりそうですね。

(前田めぐる)

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